今回は愛犬のしつけに直接関係はしませんがコミュニケーションを取るうえでとても大事な「カーミングシグナル」についてです。
聞き馴染みのある言葉で言えばボディーランゲージですね。どのような動き、仕草で何を伝えようとしているのかを知ることで、愛犬とコミュニケーションが取れもっと絆が強くなっていくのでぜひご覧ください。
シグナルを読み取る
愛犬のシグナルを見逃さないことと何回かお話しましたが、具体的にどこを見てどのように解釈するかは説明していませんでした。
これには理由があり、犬種や性格・これまでの学習によって個体差が出ることがあることと、状況等も関係し「このシグナルはこれだ!」と断定できないこともあるからなんです。
そしてワンちゃんの動きはとても速く、シグナルが一瞬しか出ないこともあるなど読み取るにも練習、慣れが必要です。中途半端にお伝えしてしまうと違う解釈をして対応を間違えてしまうこともあるのでこの回まで具体的な説明は避けていました。
なので一般的にカーミングシグナルがどこにどんな動きで出やすいかと読み取り方をお伝えするので参考にしてください。それを踏まえて観察していくとご自身の愛犬がシグナルをどのようにどんな意図で出しているかがわかってくるはずです。
シグナルの具体例
全部を紹介することはできませんが、よく出るシグナルと知っておいたほうがいいシグナルを紹介します。注意点として、ひとつのシグナル(情報)だけで判断しないようにしてください。全体を見て見極める必要があることを理解しましょう。
しっぽを振る
これは飼い主さんなら誰もが見たことがあり知っているシグナルだと思います。ただ、多くの方は「しっぽを振る=喜んでいる」と思いがちです。多くの場合はそうなのですが実際はそれだけではありません。興奮しているだけだったり、最悪しっぽを振りながら噛みついてくる子もいます。
一般的には
🔸 水平より上 ⏩ 強気・興奮・喜び
🔸 水平 ⏩ 警戒・様子を見ている
🔸 水平より下 ⏩ 弱気・怯え・不安
というように、しっぽの高さである程度読み取ることができます。




画像で見るとわかりやすいですよね。弱気なほど耳や顔を下げたり腰が引けていたりなど全体的に見ることでさらに確実性が増します。ちなみにしっぽが完全に股の間に入ってしまうくらいだと最大級の怯えなのですぐに対応してあげましょう。
回転させるなど特殊な動きを見せる子もいるので観察してみてください。
耳の状態
これもほとんどの飼い主さんが知っているシグナルですよね。


🔸 ピーンと立っている
何か興味を引くことがあるか不安がある時に周囲の音を聞いて情報収集しています。どちらにしろ状況がわかった時に怖がったり興奮して吠えるなどの行動が予想されるので飼い主さんは何かしら対応が必要になることが多いです。飼い主さんも周りを確認して対応できるように準備しましょう。
🔸 ペタンと寝ている(閉じている)
「甘えている」「落ち着いている」時や「不安・緊張を感じている」時に現れれるシグナルです。叱ったことがある人はよく見るんじゃないでしょうか。落ち着きを表しているので自分がその状態にある、または相手に落ち着いてと伝えるためのシグナルです。どちらなのかは全体を見るのですが、特にしっぽを見ると判断しやすいかもしれません。
叱っている時によく出るのですが、とってもかわいくて毒っ気を抜かれてしまいますよね。だからついつい笑顔になってちゃんと叱れずうまくいかない原因とも言えるこのシグナル。「このポーズをすると飼い主さんが笑顔になる」と学習すると、シグナルというより叱られるのを回避するために使うようになっているかも?
「ほめて伸ばす」と「叱って教える」どちらが良いの?も合わせてご覧ください
プレイバウ
頭を下げてお尻を上げるポーズで、遊びに誘っているということでプレイバウと言われています。

誘っているので敵意はないというポーズですし、乗ってこなければ通常は諦めてくれるはずです。興奮しやすい子はそれでもしつこく遊びに誘いケンカになることもあるので注意てください。
興奮しやすい子については愛犬に合わせた「しつけ方」もご覧いただき、感情をコントロールできるように教えてあげましょう。
このシグナルも全体的に見る必要があり、唸って歯を見せているような時は威嚇や攻撃態勢ということもあるので近づかないほうがいいことも。。。
歯を見せる
歯を見せるというのは口を開けているだけではなく、広角をあげて牙を見せている状態です。基本的には威嚇のシグナルで「今やっていることを続けたら、それ以上近づいたら攻撃するぞ!」と伝えているんです。

飼い主さんが面白がって繰り返しこのシグナルを出させている動画を見たことがありますが、しつけのプロとしてはあまり良いとは言えない行為です。ワンちゃんが遊びとして理解していて威嚇の気持ちがまったくないのならいいのですがそうとは思えないことが多いです。
自分は噛まれるはずないと思っていてもワンちゃんはやる時はやる子です。けっしておもしろがってやらないようにしましょう。
このシグナルが出るということは、その対象が嫌いということです。そんなときは社会化ですよね。オヤツを使って好きになってもらって攻撃的な面が出ないようにしましょう。
詳しくは社会化って大事!愛犬との暮らしをもっと楽しくをご覧ください。
匂い嗅ぎ
ワンちゃんは匂いから情報を読み取ることができるので、初対面や初めての場所などでは一生懸命匂いを嗅ぐことがあります。恐怖心が強ければ匂いを嗅ぐよりも逃げる行動を取るはずなので、少なからず不安や警戒があり情報を収集し安心できる材料を探しているといった感じです。

こういう時は納得するまで嗅がせてあげましょう。不安のままではストレスがかかるし、たとえば急に人や他犬が動いたり近づいてくるとびっくりして攻撃してしまう危険性もあります。安心できるまで匂いを嗅げばそれ以降は特に問題なく過ごせるでしょう。
ちなみにワンちゃん嫌いな人が吠えられたりするのは理由があって、緊張や不安の匂いがするので、それを感じ取っているとも言われています。相手が緊張しているということは攻撃される可能性もあるということ。人間目線ではそんなことなくてもワンちゃん目線ではそうなんです。相手が逃げない、自分が逃げられないなら威嚇や先制攻撃してしまえということですね。
目・顔・体の向きをそらす
そらすというのは不安や警戒の時もあるし、相手に「敵意はないよ」と伝えるためのシグナルで使われることもあります。どちらなのかは愛犬の性格や状況・他の部位を見て判断しましょう。

例えば上の画像の場合。視線は合っているようで合っていません。小さい子は対面しないように体を横にして様子を見ていて、しっぽが立っているので遊びたいんだろうなと予測ができます。たとえばこの状態プラス「歯を見せている」なら近づくなという意思表示になります。その場合しっぽが立っているのは興奮状態を示しているということですね。
ワンちゃん好きな方は正面から目を合わせて近づくことが多いですが、初対面の場合それは恐怖です。(人好きワンちゃんは除く)目を合わすことは人間で言えばガンをつける(にらむ)のと同じような行為なので注意しましょう。
人間に置き換えて考えれば一番わかりやすいです。初対面の人にそんな近づき方はしないですよね。「すいません」と声をかけたり警戒されないようにするはず。それが「目や体の向きをそらす」行動と同じと考えてください。ワンちゃん好きな人はワンちゃんも人が好きと思いがちなので注意しましょう。
初対面や慣れてないワンちゃんの時や、目や体をそらしているワンちゃんには「止まってしゃがんで横を向いて待つ」これが一番安全で仲良くなれる方法です。近寄ってこないならオヤツなどを使ってみましょう。それでもだめならその時はあきらめた方が良いと思います。
詳しくは【人・他犬への社会化】手順とポイント解説をご覧ください。
あくび・鼻を舐める
シグナルなの?というような行動ですがこれも意味がある場合があり、緊張・不安をやわらげようという行動です。自分に対してもあれば相手に対して落ち着けというシグナルでも使われます。


そういう時は愛犬が落ち着けるように対応してあげるのが飼い主さんのお仕事です。もちろんただ眠いだけの場合もあるので見極めが必要です。
昔タレント犬の撮影に付き添った際、急に「あくびをさせてほしい」と言われたことがありました。それは芸として教えていなければ無理な話しです。そこで「知らない人が近づいたり触れば出るかもしれません」と提案し、飼い主さんに許可をいただき初対面の人を連れてきて触ってもらいました。
するとすぐにあくびしたではありませんか!
知らない人という条件がワンちゃんの緊張感を誘いあくびを誘発したということです。ワンちゃんにはストレスがかかることなのであまりやっていいことではありませんが、緊張によってあくびが出るというひとつの実例です。
割って入る
人や他犬の距離が近いときにフラ~っと来て間に割って入る時があります。「仲間に入れてほしいのかな?」「ヤキモチ焼いてるのかな?」と思いますよね。もちろんそういう時もあるかもしれませんがシグナルの時もあります。

距離が近いと「緊張状態にあるかも」「ケンカになるかも」と考え、それを避けるために間に割って入ります。「まぁまぁ落ち着いて」という感じですかね。ワンちゃんなりに気を使っているんです。
上の画像は割って入る前ですが、真ん中の子が様子を見ていて険悪な雰囲気など感じ取れば割って入って収めようとするはずです。
まだまだありますが、シグナルは愛犬を注意深く観察していればわかるものばかりです。ただし、そのシグナルの解釈が合っているかが大事なのでちゃんと観察して理解してあげましょう。
そして、読み取るだけでなく飼い主さんも同じように使うこともできます。たとえば「あくびをして落ち着かせる」「視線や体の向きをそらす」「割って入る」などですね。
あなたの愛犬特有のシグナルがあるかもしれないのでぜひ探してみてください!