フランスの作家であったジョルジュ・サンドの愛犬が、自分の尻尾を追ってぐるぐる回る様子を見て、作曲されたという小犬のワルツ。作曲したのはサンドの恋人でピアノの詩人と呼ばれる、フレデリック・ショパンです。題名を知らなくても、軽快で愛らしい旋律を聞けば、聞き覚えがあるかもしれません。
このように愛犬が楽しそうに回っているのは、微笑ましい光景ではありますが、注意が必要な場合もあるようです。今回は犬がぐるぐる回るのには、どのような理由が考えられるのかをご紹介します。
犬がぐるぐる回る理由
愛犬がぐるぐる回っている場面は、日常でもよく見かけるのではないでしょうか。言葉にすると同じですが、回る様子は、表情や動きなどに違いがあり、観察する上でも重要なポイントです。犬がぐるぐる回る理由で代表的なものは、以下が考えられます。
- 遊んでいる
- 喜んでいる
- うんちやおしっこの前・寝床に入った時の安全確認
- ストレス
- お尻周りの不快感
- 耳の異常
- 脳の異常
遊んでいる時
自分の尻尾を追いかけて、楽しく遊ぶ犬もいます。その様子を見て飼い主さんが喜ぶと、愛犬も嬉しくなって繰り返しているのかもしれませんね。あまりにも頻繁に回っていたり、尻尾を噛んだりしていなければ、無理に止めなくても大丈夫でしょう。ただし周りに障害物がないか、足を滑らせないかなど、ケガをしないように気を配ってください。
嬉しい時
お散歩やごはんの前、飼い主さんが帰宅した時などは、嬉しくて興奮し、ぐるぐる回ることがよくあります。遊んでいる時と同様、ケガをしないように注意し、お散歩やごはんは、なるべく落ち着いてからにしましょう。
うんちやおしっこの前・寝床に入った時
うんちやおしっこの時は、とても無防備。そのため、その場所の安全確認をしていると考えられています。
余談ですが、人々を笑わせ考えさせた研究に与えられる「イグノーベル賞」というものがあります。そのイグノーベル賞の2014年生物学賞は、犬の排泄に関する研究でした。内容を簡単に説明すると、犬は南北の軸に体を沿わせて用を足す傾向があり、東西に体を向けて用を足すのを避ける様子も見られたというもの。もしかしたら、愛犬は磁場を感じ、南北を探しているのかもしれませんね。
寝床に入った時も安全確認をして、さらに寝床を自分好みに整えています。
これらは、愛犬が周囲の状況を確認し、居心地をよくするために、ぐるぐる回っていますので、心配せず見守ってあげましょう。
ストレスを感じている時
退屈、恐怖、不安などのストレスから、ぐるぐる回ることがあります。頻繁に回る、尻尾を噛む、うなるなどの様子がみられる場合は、ストレスが原因かもしれません。楽しく遊んでいる、喜んで興奮しているのではない場合は、ストレスの原因を探してみてください。お留守番の時間が長い、運動不足、環境が変わったなど何か思い当たることはありませんか?
お尻周りに不快感がある時
お尻を気にしながら回っている場合は、お尻周りに不快感があるのかもしれません。
うんちなど異物がくっついている、皮膚が炎症を起こしているなど、お尻歩きをしている場合は肛門腺の不快感も考えられますので、細部までよく確認してください。不潔になると、肛門嚢炎になる場合がありますので、定期的に肛門腺絞りを行い、清潔に保ちましょう。
耳の異常でめまいを起こしている時
中耳炎、内耳炎や前庭疾患になると平衡感覚や運動機能に異常をきたし、同じ方向にぐるぐる回るようになります。他にも元気がない、食欲不振、嘔吐、眼球が小刻みに動く、よろめく、首が傾いているなどの症状があり、めまいを起こしている状態です。特発性前庭疾患は数週間で回復することが多いのですが、別の病気が隠れている事もあるので、必ず獣医さんの診察を受けるようにしましょう。
認知症など脳の異常
私たち同様、犬も高齢になれば認知症になる可能性があります。認知症でぐるぐる回る場合は、遊びや興奮で回るのとは様子に違いが見られるでしょう。他にも壁や障害物に向かって進もうとする、トイレの失敗など、さらに進むと徘徊や夜鳴きなどの症状も出てきます。
脳炎や脳腫瘍の症状のひとつにぐるぐる回るというものがあり、他にはけいれんや意識障害など、さまざまな症状があります。
まとめ
愛犬がぐるぐる回る原因は、習性、遊び、感情、ストレス、病気など様々でした。しかし目を輝かせて嬉しそうにしていたり、イライラしていたり、元気がなかったりということは判断できます。遊びなら暖かく見守る、ストレスなら取り除けるように、もし病気が疑われるのなら、すぐに獣医さんの診察を受けることで早期発見、早期治療が可能です。普段から愛犬がどのような理由で回っているのかを、想像しながら観察していると、いつもと違う行動が見られた時、いち早く気づくことができるでしょう。