犬の健康状態をチェックする方法の一つで、「犬の飲水量をチェックする」ことも非常に重要です。
犬がたくさん水を飲む理由は、暑さやのどが渇いているからだけではありません。
急に水を飲む量が増えるのは、ストレスや病気が原因の可能性もあります。
そこで今回は
・犬がたくさん水を飲む原因とは?
・犬の多飲とされる飲水量と飲水量の量り方とは?
・犬に与えてもいい水の種類とは?
などの疑問にお答えします。
また飲む水だけではなく「犬の体を洗うときの水について」も解説しています。
ぜひ参考にしてください。
【犬がたくさん水を飲む原因とは?】
犬がたくさん水を飲む理由には、のどが渇いているだけでなく、さまざまな原因が考えられます。
以下に当てはまる原因はないか、犬の様子を注意深く観察してください。
〖犬が多飲する主な原因〗
1.脱水症状による多飲
暑くなると多いのが、脱水症状により飲水量が増加することです。
犬はのどが渇く感覚が鈍く、汗腺が肉球や鼻先といった部分にしかないので、人間のように汗をかいて体温調節ができません。
そのため、犬が口を大きく開けて呼吸をしている場合は、体の熱を外に出そうとしている状態です。そして、体温を下げるためにたくさん水を飲むのです。
また、下痢や嘔吐により体内の水分が失われて脱水状態になった場合にも、たくさん水を飲みます。
2.食事の変化による多飲
水分量の多いウェットタイプのドッグフードからドライタイプのドッグフードに変更した場合に、飲水量が多くなります。
また塩分が多く含まれているドッグフードを与えた場合も、飲水量が増えるので与えるドッグフードの種類にも注意が必要です。
3.ストレスが原因の多飲
犬が暮らす環境が変わったり極度の緊張やストレスを感じると、犬の体内で抗ストレスホルモンが分泌されます。
このホルモンの影響で、飲水量が増える場合があります。
4.服薬が原因の多飲
皮膚炎の治療に使われるステロイド剤など、薬が原因で飲水量が増える場合があります。
薬を処方される際に、薬の服用により飲水量が増える可能性があるか、獣医師に確認しておきましょう。
〖犬の多飲の原因となる病気〗
1.糖尿病
糖尿病は多飲を引き起こす代表的な病気の一つ。
シニア期の犬に多くみられ、インスリンの低下により血糖値が異常に高くなる病気です。
糖尿病の初期症状としては、多飲多尿がみられます。
症状が進行し、さらに重篤化すると意識障害や昏睡状態に陥ります。
また死に至ることもあるので、早めに動物病院を受診してください。
2.クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
シニア期の犬によくみられる内分泌疾患です。
副腎皮質ホルモンが、多量に分泌されることにより多飲の原因となります。
放置するといろいろな病気を引き起こす可能性があるので、早めに動物病院を受診してください。
3.慢性腎臓病
老化や腫瘍、遺伝などが原因で、血液をろ過して老廃物を排出する腎臓の機能が、徐々に低下する病気です。
腎臓の機能が低下すると、尿を凝縮できず薄い尿をたくさんするようになります。
その結果、多くの水分が体外に排出されるので、水を飲む量が多くなります。
放置するとどんどん腎臓の組織が壊れ、やがて死に至るのでなるべく早く動物病院を受診してください。
4.子宮蓄膿症
細菌が子宮に入り込み、子宮の中で細菌が増殖し膿が貯留される病気です。
子宮にたまった細菌が出す毒素の影響で、肝臓の機能が低下して尿量が増えます。
そのため、水を飲む量が多くなります。
避妊手術や出産の経験をしていないシニア期の犬は、発症のリスクが高いです。
症状が進行するとやがて死に至る可能性があるので、生理後1〜2カ月の間に水を飲む量が増えた場合はすぐに動物病院を受診してください。
ほかにも多飲の症状が現れる病気には、尿崩症や肝臓病などがあります。
多飲の原因が病気にある場合は、自然治癒することがほとんどありません。
日頃から犬の飲水量をチェックし、水を飲む量が多くなれば早めに動物病院を受診しましょう。
犬の多飲とされる飲水量と飲水量の量り方とは?
個体差はありますが犬に必要な1日の水分量の目安として、最低でも体重×50mlの水分が必要です。
ただし季節や与えるドッグフードの種類により、必要な1日の水分量は変わります。
そこで、多飲とされる水の摂取量について解説していきます。
〖犬の多飲の目安とは?〗
犬の多飲とされる飲水量の目安は、1日に犬の体重1kgあたり100ml以上水を飲む状態が長く続いている場合を言います。
例えば犬の体重が5kgだとすると、1日に500mlの水を飲むようであれば多飲と考え、動物病院に相談してください。
正確に犬の飲水量をチェックするには、与える前に水の量を量っておく必要があります。
そこで次に、犬に与える飲料水の量り方を解説していきます。
〖犬の1日の飲水量をチェックする方法〗
犬の1日の飲水量をチェックするために、水の量を計量カップで量ってから容器に入れましょう。
そして水を取り換える際には、容器に残った水を計量カップで量ります。
最初に与えた水の量から残った水の量を引くと、そのときに飲んだ水の量が把握できます。
この方法を繰り返して1日分の水の量を合算したのが、犬が1日で飲んだ水の量です。
犬が飲む水の摂取量を毎日記録しておくことで、犬の体調の変化に気がつきやすくなります。
また犬の病気の早期発見にも繫がるため、普段から犬の飲水量を確認しておきましょう。
犬に与えてもいい水の種類とは?
犬に与える水は「水道水」がおすすめです。
そうはいっても、「犬に与える水はミネラルウォーターのほうがいいのでは?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
ミネラルウォーターより水道水をおすすめするのには理由があります。
ミネラルウォーターは、カルシウムやマグネシウムといったミネラル成分を含むからです。
これらのミネラル成分は、犬の尿結石症を引き起こす要因になることも。
人間にとって影響のない量のカルシウムやマグネシウムでも、犬にとっては負担になる可能性があります。
とくにミネラル成分が多く含まれる「硬水」を、犬に与えるのは控えましょう。
日本の水道水は軟水で、衛生面や安全面も厳しく管理されているので、犬の飲料水に適しています。
また公園などの屋外施設の水道水も、「飲用不可」の記述がなければ犬に飲ませても問題ありません。
ただ、地域や場所によっては水道水にカルキ臭が強く出ることがあります。
犬の健康に害はありませんが、犬が臭いを嫌がって飲まない場合は、水を煮沸してください。
沸騰させて冷ますことで、カルキ臭を除去できる場合があります。
ただし、煮沸した水は保存性が低下するので、長時間置きっぱなしにするのは避けましょう。
犬の体を洗うときの水について
犬の体を洗うときの水も、硬水より軟水のほうが良いでしょう。
国内の研究で、せっけんを使って軟水でシャンプーすると、皮膚炎の緩和がみられたという報告があるからです。
また、犬の体を洗うときの水の温度は、温水プール程度の30〜32度のぬるま湯が適しています。
あまり水の温度が高いと皮膚表面の毛細血管の拡張により、かゆみにつながることがあるので注意が必要です。
犬の飲水量チェックで健康管理!
普段から犬の1日の飲水量をチェックしておくことで、犬の体調の変化に気づきやすくなります。
また目安となる飲水量よりも、普段との違いに気をつけることが大切です。
犬の飲水量が普段より増えている状態がしばらく続く場合は、速やかに動物病院を受診してください。
多飲は重篤な病気の初期症状であることが多いので、多飲の症状を見逃さないように注意しましょう。