あくびというと眠い、退屈といったのんびりしたイメージで、普段は特に気にならないかもしれません。ほのぼのとした愛犬のあくびに、つられたことのある飼い主さんも、多いのではないでしょうか?
最近の研究では、飼い主さんのあくびが、愛犬にもうつることが明らかになっています。このような場合は、強い絆や信頼度のあらわれなので、心配はいりませんが、中には注意が必要なあくびも存在します。では愛犬のあくびについてみてみましょう。
犬があくびをする理由
犬のあくびには、主に次のような理由があげられます。
- 眠い、退屈
- 自分や相手を落ち着かせるカーミングシグナル
- ストレス
- 貧血
- 低血糖
- 口腔内のトラブル
- てんかん
普段のあくび
人間同様、犬も眠い時や退屈な時にあくびが出ます。生理的なものなので心配ありません。
犬のあくびは緊張や不安、服従や謝罪、疑問などいろいろなサインでもあります。
これをカーミングシグナルといい、集団で行動していた犬たちにとっては、私たちの言葉と同じような役割があり、あくびをすることで、自分や相手の気持ちを落ち着かせ、不要な争いを避けているのです。
食事や散歩の準備をしている時のあくびは、気乗りしないのではなく、嬉しくて興奮する気持ちを落ち着かせている場合がほとんどです。例えるなら心の準備のようなものでしょうか。喜んでいるのは一目瞭然です。本当に嫌がっている場合もありますが、これも態度でわかりますね。
愛犬が他の犬の前であくびをする時は、お互いの気持ちを落ち着かせ、敵意が無いことを伝えるためだと、考えられています。怒らないでね、仲良くしようよって言っているのかもしれません。
いたずらをして叱られている時や、知らない人や苦手な人に、スキンシップを迫られている時のあくびは、小言に退屈しているわけでも、なでられて眠くなったわけでもなく、実はストレスを感じていて、「ごめんなさい」や「もうやめて」というサインかもしれません。表情や態度をよく観察してみると、心の声が聞こえてきませんか?
体調が悪くなさそうなのに、あくびが多い場合は、何かストレスになっていることが、あるのかもしれません。
ストレスが続けば、うつ病のようになってしまう場合もありますので、原因を探してみてください。
注意が必要なあくび
ここからは注意が必要なあくびです。あくび以外の変化にも注目してください。ぐったりしている、嘔吐や下痢など体調不良が見られれば、病気を発症している可能性もあります。すぐに獣医さんの診察を受けましょう。
貧血
貧血の原因は中毒、寄生虫感染、大量出血などさまざまです。
貧血で脳が酸欠状態になると、あくびの回数が増えることがあり、他にも普段より舌や歯茎が白っぽい、呼吸が早い、元気がない、食欲不振などの症状も出てきます。
中毒は誤飲したものによって症状は異なりますが、中には貧血を起こす中毒物質があり、注意が必要です。犬のタマネギ中毒は、飼い主さんの間では常識ですが、世間一般の常識かと言われれば、そうではないのかもしれません。タマネギだけでなくネギ、ニラなどのネギ類は中毒物質です。
このような話があります。朝、愛犬を実家に預け、夕方迎えに行くとぐったりしていた。聞けば愛犬のために作ってくれた野菜スープに、タマネギを入れたとのこと。幸い発見が早く大事には至りませんでしたが、迎えに行くのが遅かったら、発症が夜中になっていたらと考えると…。
タマネギ中毒では、赤血球が酸素を運べない、さらに壊れやすくなることで、溶血性貧血が引き起こされます。赤血球が壊れたことにより、尿が茶褐色やオレンジなど、通常よりも濃い色になるのでよく観察してください。
誤飲直後は元気でも、中毒物質を口にしたようであれば、すぐに病院に行くようにしましょう。
寄生虫が媒介する感染症や、吸血生物の大量寄生によって、貧血を引き起こすことがあります。
ノミ、マダニは予防薬があるので、寄生される前に対策が可能です。
低血糖
血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度で、ブドウ糖は脳のエネルギー源です。
低血糖になると脳のエネルギー不足から、あくびが増える、よだれが出る、嘔吐、さらにひどくなると、ふらつきや痙攣、意識障害、最悪の場合は命にかかわります。
体の機能がまだ未成熟な生後3か月までの子犬や、成犬であっても小型で脂肪が少ない場合は低血糖になりやすいため、注意が必要です。
日ごろから空腹には注意し、食事の量は足りているか、しっかり体重が増えているかを確認してください。
よく耳にするキシリトール。人間にとっては、身近にあるお口の健康によいものという認識ですが、犬にとってキシリトールは低血糖と、急性の肝不全を起こす危険な中毒物質です。
口腔内のトラブル
歯垢や歯石、歯周病などによる不快感や痛みのため、あくびが増えることがあります。他にも、口臭がきつい、食べにくそうにしている、口を気にしている、口が開けづらそうなどの症状がないか確認してください。
てんかん
てんかんは、さまざまな原因により起こりますが、あくびをする、全身が突っ張る、顎がガクガク震えるなどの症状が見られます。
まとめ
犬のあくびにはこんなにも多くの理由がありました。日ごろから愛犬のあくびを見る時は、表情やしぐさを観察し、口の中をのぞいて、舌の色や歯、歯茎もチェックしておくと、異常に気付きやすくなります。命にかかわる病気の早期発見にもつながりますので、愛犬がストレスを感じない範囲で、普段からよく観察をしてみてはいかがでしょうか。