結論:首の皮膚をつまんで離し、戻りに2秒以上かかれば脱水の可能性があります。すぐに少量ずつ水分補給を行ってください。ぐったりしている、嘔吐・下痢を伴う場合は、応急処置よりも受診を優先しましょう。
犬は全身で汗をかけないため、人よりも脱水に気づきにくい動物です。この記事では、自宅で5秒でできる脱水チェックの手順を解説します。重症度の見分け方、応急の水分補給、受診の目安まで順に確認しましょう。
犬の脱水症状とは?夏に急増する理由
脱水症状とは、体から水分と電解質が過剰に失われた状態です。犬の体は体重の約60〜70%が水分でできています。ヒルズの獣医師監修情報でも、脱水は血液の濃縮を招くと解説されています。放置すると内臓に負担がかかり、命に関わることもあります。
犬が夏に脱水しやすいのには理由があります。犬は人と違い、全身の皮膚で汗をかけません。体温調節は主にパンティング(あえぎ呼吸)に頼ります。パンティングは呼気から大量の水分を奪います。つまり暑い日は、体を冷やすほど水分が失われるのです。
環境省もペットの熱中症予防の啓発で、こまめな給水を呼びかけています。散歩は早朝や夜の涼しい時間帯にすること。外出時も水を持参し、いつでも飲めるようにすることが基本です。

自宅でできる脱水チェック3つ(皮膚・歯茎・目)
脱水が疑われたら、次の3つを順番に確認します。すべて自宅で1分以内にできるチェックです。
①皮膚テントテスト(5秒でできる基本チェック)
最も基本的な確認方法が皮膚テントテストです。ツルゴールテストとも呼ばれます。手順は次の通りです。
- 首の後ろ〜肩甲骨あたりの皮膚をやさしくつまむ
- 2〜3cmほど持ち上げて、静かに離す
- 皮膚が元に戻るまでの秒数を数える
健康な犬なら、皮膚は1秒以内にすっと戻ります。2秒以上かかる場合は脱水の可能性があります。テントを張ったように皮膚が残る状態は重度のサインです。すぐに動物病院へ向かってください。
注意点もあります。高齢犬や痩せた犬は、脱水がなくても皮膚の戻りが遅いことがあります。肥満犬は逆に戻りが速く見えることがあります。健康なときに一度試して、愛犬の「普段の戻り速度」を知っておきましょう。
②歯茎チェック(乾き・ネバつき・色)
唇をめくり、歯茎を指で触ってみます。健康な歯茎はしっとり濡れていて、鮮やかなピンク色です。乾いていたり、唾液がネバついていたりすれば脱水を疑います。
あわせて確認したいのが毛細血管再充填時間(CRT)です。歯茎を指で軽く押すと、その部分が白くなります。離してからピンク色に戻るまでが2秒以内なら正常です。2秒を超える場合は血流が悪化しているサインです。歯茎が青白い、暗赤色という場合は緊急性が高い状態です。
③目のくぼみ・尿の色・体重
脱水が進むと、目が落ちくぼんで見えます。目に力がない、ぼんやりしているのも危険なサインです。
尿の変化も分かりやすい指標です。体が水分を溜め込もうとするため、尿の色が濃くなり量が減ります。濃い黄色〜オレンジ色、茶褐色に近づくほど要注意です。
体重も目安になります。水分喪失は体重減少に直結するためです。体重10kgの犬なら、1〜2%(100〜200g)の急な減少で軽度の脱水に相当します。5%(500g)の減少は重度で、すぐに受診が必要なレベルです。
脱水の重症度と受診の目安
獣医学では、体液の喪失率で脱水の重症度を評価します。目安を表にまとめました。
| 重症度(体液喪失) | 主なサイン | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 軽度(約5%) | 皮膚の戻りがやや遅い。歯茎が少し乾く | 水分補給しつつ様子見。改善なければ受診 |
| 中等度(約6〜9%) | 皮膚の戻りが明らかに遅い。目のくぼみ。尿が濃い | 当日中に動物病院を受診 |
| 重度(10%以上) | 皮膚が戻らない。ぐったり・ふらつき。歯茎が青白い | 今すぐ受診(救急対応)。点滴治療が必要 |
【受診の目安】次のいずれかに当てはまれば、様子を見ずに受診してください。
- 皮膚テントテストで2秒以上戻らない状態が続く
- 嘔吐や下痢を繰り返している
- ぐったりして起き上がれない、ふらつく
- 歯茎が青白い・暗赤色、呼吸が荒い
- 丸1日ほとんど水を飲まない・尿が出ない
- 子犬・高齢犬・持病(腎臓病・糖尿病など)がある
脱水の背景に病気が隠れていることもあります。下痢や嘔吐のほか、腎臓病、糖尿病、アジソン病などが代表例です。繰り返す嘔吐がある場合は犬が嘔吐を繰り返す原因と危険サインもあわせて確認してください。下痢を伴う場合は犬の下痢の原因と受診の目安が参考になります。

応急処置:正しい水分補給のさせ方
軽度の脱水であれば、まず水分補給が応急処置になります。ポイントは「少量ずつ・こまめに」です。一気に大量に飲ませると、嘔吐して逆に水分を失うことがあります。体重10kgの犬なら、まず50ml程度を目安に与えます。10〜15分おきに少しずつ繰り返しましょう。
自力で飲めないときは、無理に流し込んではいけません。誤嚥の危険があります。口の周りや歯茎を濡らす程度にとどめ、すぐに動物病院へ向かってください。
経口補水液は犬用を。人間用はNG
水と一緒に電解質も失われているため、犬用の経口補水液が有効です。動物病院やペットショップで購入できます。夏の間は1本常備しておくと安心です。
注意したいのは、人間用の経口補水液やスポーツドリンクです。犬にとっては塩分と糖分が濃すぎるため、そのまま与えるのは避けましょう。持病のある犬は、事前にかかりつけの獣医師に相談してから選んでください。
熱中症との違い・併発時の対応
脱水と熱中症は密接に関係しますが、同じではありません。脱水は「体の水分が足りない状態」です。熱中症は「体温が下げられなくなった状態」で、体温が40℃を超えて上昇します。熱中症では激しいパンティング、よだれ、ふらつきが目立ちます。
夏はこの2つを併発しやすいのが怖いところです。併発が疑われるときは、冷却を優先してください。風通しのよい日陰に移し、水で体を濡らして風を当てます。飲めるようなら水分も少量ずつ与えます。応急処置と並行して、必ず動物病院に連絡しましょう。初期サインと正しい冷やし方は犬の熱中症|症状・応急処置・予防で詳しく解説しています。
なお、夏の車内は数分で危険な温度に達します。JAFのデータでは、外気温が高い日の車内温度は短時間で50℃超に達します。詳しくは犬の車内放置は何分で危険?を確認してください。
脱水を防ぐ夏の生活管理
犬が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたり約50〜60mlが目安です。体重5kgの小型犬なら250〜300ml、10kgなら500〜600mlになります。フードに含まれる水分も含めた量なので、飲水量はこれより少なくても構いません。ただし、飲水量が急に増えた場合は糖尿病や腎臓病のサインのこともあります。
予防のポイントは次の通りです。
- 水飲み場を家の2〜3カ所に分けて設置する
- 水は涼しい場所に置き、1日2回以上交換する
- 散歩は早朝・夜にし、犬用の水筒を必ず持参する
- 留守番時はエアコンで室温26℃前後を保つ
- 水を飲まない子はウェットフードやスープで水分を補う
もともと水を飲む量が少ない犬は、脱水の予備軍です。飲ませ方の工夫は犬の夏バテ対策ごはんと水分補給のコツで紹介しています。食欲が落ちている場合も水分不足につながるため、早めに対策しましょう。
子犬・シニア犬は特に注意
子犬とシニア犬は、脱水が急速に進みやすいグループです。子犬は体が小さく、水分の予備が少ないためです。下痢や嘔吐が半日続くだけでも危険な状態になり得ます。シニア犬はのどの渇きを感じる力が弱まり、飲水量が自然に減ります。水飲み場まで歩くのが億劫になっている場合もあります。
10歳以上の犬では腎臓病の発症率が約30%以上とされます。腎臓病があると尿から水分が失われやすく、慢性的な脱水につながります。寝床の近くに水飲み場を増やす、定期的に飲水を促すなどの工夫をしましょう。半年〜1年ごとの健康診断で、腎臓の数値を確認しておくことも大切です。
犬の脱水症状に関するよくある質問
Q1. 犬の脱水症状はどうやって見分けますか?
首の皮膚をつまんで離す皮膚テントテストが基本です。戻りに2秒以上かかれば脱水の可能性があります。歯茎の乾きやネバつき、尿の色が濃くなるのもサインです。
Q2. 脱水したらスポーツドリンクを飲ませてもいいですか?
おすすめできません。人間用は犬には塩分・糖分が濃すぎます。犬用の経口補水液を使い、なければ水を少量ずつ与えてください。改善しない場合は受診しましょう。
Q3. 犬は1日にどれくらい水を飲めばいいですか?
食事の水分も含め、体重1kgあたり約50〜60mlが目安です。体重10kgなら500〜600mlです。夏や運動後はこれより多く必要になります。
Q4. 脱水と熱中症はどう違いますか?
脱水は水分不足の状態、熱中症は体温を下げられなくなった状態です。夏は併発しやすく、その場合は日陰への移動と冷却を優先し、すぐ病院に連絡してください。
Q5. 病院ではどんな治療をしますか?
脱水の程度に応じて、皮下点滴や静脈点滴で水分と電解質を補います。下痢・嘔吐や腎臓病など原因となる病気があれば、血液検査などで調べて治療します。
Q6. 皮膚テントテストが当てにならない犬はいますか?
います。高齢犬や痩せた犬は脱水がなくても戻りが遅く、肥満犬は脱水でも速く見えることがあります。健康時の戻り方を覚えておき、歯茎や尿と組み合わせて判断してください。
まとめ:5秒のチェックを習慣に
犬の脱水は、皮膚・歯茎・尿の3点チェックで早期発見できます。「皮膚の戻りが2秒以上」「歯茎が乾く」「尿が濃い」が危険のサインです。軽度なら少量ずつの水分補給、中等度以上なら迷わず受診してください。夏の間は毎朝の皮膚テントテストを習慣にすると、変化にすぐ気づけます。
【出典・参考】
・環境省「防ごう!ペットの熱中症」啓発資料
・ヒルズ「犬の脱水症状と水分補給について」(獣医師執筆)
・動物病院サプリ「犬が脱水症状を起こしているか見分ける方法」ほか獣医師監修文献
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

