犬用レインコートの選び方|耐水圧の数字の読み方とサイズ実測3か所・嫌がる犬の慣らし方

雨の日に傘をさして犬と散歩する飼い主

犬用レインコートは「濡れないため」ではなく「帰宅後の拭き取りと乾燥の手間を減らすため」に選ぶ道具です。どんな製品を着せても、足先と下腹部は必ず濡れます。だから選定の軸は、①形状、②防水性能の表示、③サイズ実測3か所、④着脱のしやすさ、の4つに絞れます。

この記事では、商品名ではなく「性能表示の読み方」を解説します。JIS L 1092(繊維製品の防水性試験方法)における「撥水」と「耐水」の違い、商品ページによく出る「耐水圧15,000mmH₂O」という数字をどう受け取るべきか。さらに、気象庁の平年値から見える「秋こそレインコートの本番」という事実と、購入後に使われなくなる最大の理由=嫌がる犬への慣らし方4ステップまで踏み込みます。

雨の日に傘をさして犬と散歩する飼い主
雨の日の散歩は「濡らさない」より「帰宅後どう乾かすか」で設計する
目次

結論:レインコートは「濡れない道具」ではなく「拭く面積を減らす道具」

先に結論を書きます。犬用レインコートに全身を完全防水する性能を期待してはいけません。理由は単純で、犬は四足歩行だからです。

  • 足先は地面に接しており、水たまりを踏めば必ず濡れる
  • 下腹部は排泄のために開いている製品が大半で、路面からの跳ね返りを受ける
  • 口周りと耳はフードがあっても風向き次第で濡れる

つまりレインコートの役割は「濡れる面積を、背中・胴・腰という乾きにくい部位から、足先という拭きやすい部位へ移すこと」です。ここを理解すると、選び方の優先順位が変わります。

よくある選び方手間が減る選び方
とにかく全身を覆うものを選ぶ背中・胴が確実に乾いた状態で帰れるものを選ぶ
耐水圧の数字が大きいものを選ぶ数字の出どころと、蒸れ対策の有無を見る
犬種名でサイズを決める首回り・胴回り・着丈を実測して決める
デザインで選ぶ自分が30秒で着せられる留め具かで選ぶ

「30秒で着せられるか」は軽視されがちですが、購入後に使われなくなる原因の多くはここにあります。雨の日の玄関先で、愛犬が動く中で3分かかる作業を毎回続けられる人はほとんどいません。

秋こそ本番|気象庁の平年値が示す「強い雨は秋に集中する」

レインコートは「梅雨のグッズ」と思われがちですが、データを見ると認識が変わります。気象庁の平年値(東京、統計期間1991〜2020年)から、月別の降水を整理しました。

月降水量合計1.0mm以上の日数10.0mm以上の日数30.0mm以上の日数
6月(梅雨)167.8mm11.6日5.4日1.6日
7月156.2mm10.5日4.2日1.6日
8月154.7mm7.9日3.8日1.4日
9月224.9mm11.0日5.6日(年間最多)2.1日
10月234.8mm(年間最多)10.5日5.3日2.3日(年間最多)
11月96.3mm7.4日2.6日0.8日

出典:気象庁「平年値(年・月ごとの値)東京」統計期間1991〜2020年。

ここから読み取れることは2つあります。

(1)雨の「日数」は梅雨がやや多いが、「強さ」は秋が上
日降水量1.0mm以上の日数は6月11.6日が最多で、9月11.0日・10月10.5日と大差ありません。ところが日降水量10.0mm以上、つまり傘をさしても濡れる本降りの日数は9月5.6日が年間最多、10月5.3日が3位です。30.0mm以上の日数に至っては10月2.3日・9月2.1日が年間ワンツーで、6月1.6日を明確に上回ります。

(2)梅雨用に買った軽装備は秋に通用しないことがある
秋雨前線と台風が重なる9〜10月は、短時間強雨とまとまった雨が集中します。しとしと雨を想定した薄手のポンチョでは、生地の防水性能そのものが試される場面が増えるということです。

加えて秋は気温が下がる時期です。東京の平均気温は9月23.3℃→10月18.0℃→11月12.5℃と推移し、9→10月で-5.3℃、10→11月で-5.5℃と年間で最大の下げ幅になります。濡れた被毛は気化熱で体温を奪うため、「濡れる+冷える」が重なる秋は、夏の雨より体への負担が大きいと考えてください。台風や低気圧のタイミングで体調を崩す犬については、犬が台風で体調不良になる?低気圧で元気がない原因と見分け方で詳しく扱っています。

雨に濡れた路面に立つ犬
秋は「本降りの日数」が年間で最も多い。装備の想定を梅雨より一段上げる

判断軸①|形状は3タイプ。カバー率と着せやすさはトレードオフ

形状は大きく3つに分かれます。カバー率が上がるほど着せる手間も増えるため、「愛犬が服に慣れているか」と「雨の強さ」の2軸で選びます。

形状カバー範囲着せる時間の目安向いている犬弱点
ポンチョ(マント)型背中〜腰、製品により胸元まで10〜20秒服に慣れていない犬、短毛種、急な雨に備える携帯用脇腹と腹が開きやすく、強い雨・横風に弱い
セパレート(前足のみ通す)型背中・胴・胸、前足の付け根30〜60秒ある程度服に慣れた犬、中〜強い雨後肢と腹の跳ね返りは防げない
オールインワン(四肢・足先まで)型四肢を含む全身1〜3分長毛種、泥道を歩く犬、雨天でも長く歩く犬着脱の負担が大きく、嫌がる犬が最も多い。蒸れやすい

「頭を通さない」構造は隠れた重要ポイント

同じオールインワン型でも、頭から被せるタイプと、背中が全開して上から乗せるタイプでは、犬の受け入れやすさがまったく違います。顔の周りを覆われることに抵抗を示す犬は多く、頭を通す動作が一度でも嫌な経験になると、次から玄関で逃げるようになります。

すでに服を嫌がる傾向がある場合は、背中開き(バックオープン)または足を通さず面ファスナーで巻き留める構造を優先してください。カバー率で1段階落ちても、実際に着てくれる製品のほうが価値があります。

フードは「あり」ではなく「取り外せる」を選ぶ

フードは顔周りの濡れを減らしますが、犬にとっては視界が狭まり、耳が覆われて音が聞こえにくくなる装備です。周囲の情報が減ると不安が強まり、歩かなくなる犬がいます。

判断が難しいなら、フードが着脱式の製品を選んでください。最初はフードを外して使い、慣れてから装着を試す、という順序が取れます。透明素材のフードは視界を確保しやすい設計ですが、それでも耳が覆われる点は変わりません。装着後に耳を伏せる、動きが止まる、頻繁に頭を振るといった反応が出たら、その日は外して歩かせます。

判断軸②|「撥水」と「防水」は別物。JIS L 1092での定義を押さえる

商品ページで最も混乱しやすいのが性能表示です。日本産業規格のJIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」では、防水性とは「耐水性・漏水性・はっ水性の総称」と定義されています。つまり「防水」は上位概念で、「撥水」はその一部です。

撥水(はっ水)耐水(防水コーティング)
仕組みフッ素系・シリコーン系の加工剤で生地表面の表面張力を下げ、水を弾く樹脂やゴムを片面・両面にコーティング、または樹脂シートをラミネート
布目塞がれていない塞がれている
蒸れしにくいしやすい(透湿加工がなければ内部が結露する)
弱点強い雨・長時間の雨で水が浸透する。洗濯や摩擦で効果が落ちる折り目や縫い目から浸水しうる。経年で樹脂層が劣化する
犬用での位置づけ小雨・短時間の散歩なら十分本降り・長時間・泥道に必要

出典:一般財団法人ボーケン品質評価機構「防水性試験(JIS L 1092)」の解説による定義整理。

撥水は「落ちる前提」の性能である

ここが最も重要な点です。撥水加工は永久ではありません。それを制度として裏づけているのが家庭用品品質表示法の運用で、コート類に撥水性をうたう場合、JIS L 1092に規定された洗濯処理またはドライクリーニング処理を行った後のはっ水度試験で2級以上の性能があることと定められています。わざわざ「洗濯後」と条件が付いているのは、洗えば性能が落ちるのが前提だからです。

はっ水度試験(スプレー試験)は、45°に傾けた試験片に水250mLを散布し、余分な水滴を落としてから湿潤状態を見本と比較して1〜5級で判定します。級数が大きいほど水を弾きます。犬用レインコートでこの等級を公表している製品はほとんどありませんが、「撥水」とだけ書かれた製品は、使っているうちに性能が落ちるものだと理解して購入することが大切です。対処法は後述の「撥水性の復活方法」で扱います。

「耐水圧15,000mmH₂O」という数字をどう読むか

犬用レインコートの商品説明では「耐水圧15,000mmH₂O」「10,000mm」といった数値をよく見かけます。この数字の意味を正確に押さえておきましょう。

耐水度試験(静水圧法)は、17cm×17cmの試験片を5枚採取し、毎分600mm±30mmの速さで水位を上げて水圧をかけ、試験片の裏側3か所から水が出た時点の水位(mmH₂O)を測る試験です。数値が大きいほど水を通しにくいことを示します。

注意すべきは試験法の適用範囲です。JIS L 1092の耐水度試験にはA法(低水圧法)とB法(高水圧法)があり、用途が分かれています。

試験法対応する水圧の範囲適用される製品
A法(低水圧法)約2,000mmH₂Oまでレインウェア、傘、おむつカバー、防水シーツなど(ISO 811と同様の方法)
B法(高水圧法)約10kPa〜約500kPa防水帆布、テント用布、靴用布など

ここから分かるのは、レインウェアに適用されるA法の範囲は約2,000mmH₂Oまでだという事実です。1mmH₂Oは約9.8Paなので、10kPaはおよそ1,020mmH₂Oに相当します。つまり「15,000mmH₂O」という値は、レインウェア向けのA法の適用範囲を大きく超えた領域の数字です。

この数字が誤りだと断定はできません。B法や海外の同等試験、あるいはメーカー独自の測定で出した可能性があります。ただし試験法が明示されていない耐水圧の数字は、他社製品と横並びで比較できないと考えるべきです。実務的な判断基準はこうなります。

  • 数字の大小だけで製品を選ばない。試験法が書かれていない数値は比較材料になりません
  • 代わりに構造を見る。縫い目のシームテープ処理(ホットプレス防水加工)があるか、ファスナー部が防水仕様か
  • 参考値として:一般的な人用レインウェアの耐水圧は10,000mm前後、傘は250mm程度とされます。犬の散歩は数十分で、座り込んで体重をかける場面も少ないため、人のレインウェア並みの高い数値が必須というわけではありません

蒸れ対策——犬は汗で体温を下げられない

耐水性の高いコーティング生地は、水蒸気も通しません。犬は人のように全身の汗で体温を調節できず、主にパンティング(口を開けた浅く速い呼吸)で放熱します。全身をコーティング生地で覆えば、体表の熱がこもりやすくなるということです。

目安として、気温が20℃を超える雨の日にオールインワン型を長時間着せるのは避けてください。東京の日最高気温の平年値は9月27.5℃、10月22.0℃です。秋雨のシーズン前半は、まだ蒸れ対策が必要な気温帯だと分かります。

  • 透湿防水素材(耐水性を保ちつつ水蒸気は通す)を採用した製品を選ぶ
  • 背中や脇にベンチレーション(通気口)があるか確認する
  • 気温が高い日は、カバー率の低いポンチョ型に切り替える
  • 散歩後は玄関ですぐに脱がせる(濡れたコートを着せたまま室内に入れない)

散歩中にパンティングが激しくなる、歩みが遅くなる、立ち止まるといった様子が出たら、雨天でもコートを脱がせて早めに帰宅させてください。

判断軸③|サイズは3か所を実測する。犬種名で選んではいけない

サイズ選びの失敗は返品交換の最大の原因です。同じ犬種でも体格差は大きく、「チワワだからS」という決め方は通用しません。メジャー(柔らかい布製の巻き尺)で次の3か所を測ってください。

測る場所正しい測り方よくある間違い
首回り首輪を着ける位置よりやや下、首の付け根の一周顔に近い細い位置で測ってしまい、きつくなる
胴回り(胸囲)前足の付け根のすぐ後ろ、胴で最も太い部分の一周お腹の細い部分で測り、胸が入らなくなる
着丈(背丈)背中側の首の付け根から、尻尾の付け根まで頭の後ろや尻尾の先まで測り、長すぎる製品を選ぶ

測定の実務ルール5つ

  1. 立たせた姿勢で測る。座らせると胴回りが実際より大きく出ます
  2. メジャーは指1本が入る程度のゆとりで当てる。きつく締めて測ると、出来上がりが窮屈になります
  3. 首回り・胴回りは実測値+2〜3cmを目安にサイズ表と照合します。レインコート生地はストレッチ性がないものが主流で、伸びに頼れません
  4. 着丈は実測値と同じか、わずかに短めを選びます。長すぎると排泄時に汚れ、後肢の動きも妨げます
  5. 長毛種は被毛を軽く押さえて測る。毛の上から測ると実寸より大きくなり、ぶかぶかになります

3か所のうち1か所でもサイズ表の範囲を超える場合は、大きいほうのサイズを選び、調整機構(面ファスナー・ドローコード)で詰めるのが基本です。小さいものは物理的に着せられませんが、大きいものは調整できます。

また、ネット購入ではサイズ交換に対応しているショップを選んでください。実店舗で試着できるなら、着せた状態で数歩歩かせて、前足の付け根が擦れないか、首元が締まらないかを確認します。首回りのフィット感は首輪と同じく「指2本が入る余裕」が目安で、この考え方は犬の首輪の選び方|サイズ調整の指2本ルールでも解説しています。

判断軸④|留め具・リード穴・反射材——使用頻度を左右する細部

留め具は3種類。毛の長さで選ぶ

留め具長所短所向く犬
面ファスナー着脱が最速。サイズ微調整ができる長毛が絡む。泥や毛が詰まると粘着力が落ちる短毛・中毛種
スナップボタン毛を巻き込みにくい。外れにくい位置が固定でサイズ調整幅が小さい長毛種、動きの多い犬
ファスナー/バックル固定力が高く、強風でもめくれにくい操作に慣れが必要。ファスナーに毛が噛むことがある大型犬、悪天候で長く歩く犬

長毛種で面ファスナーを使う場合は、留め具の周囲にあて布や保護フラップがある製品を選ぶと毛の巻き込みを減らせます。面ファスナーは使ううちに毛が詰まって粘着力が落ちるため、月に一度は爪楊枝やブラシで詰まった毛を除去してください。

リード穴の有無は必ず確認する

リード穴(ハーネスホール)がないと、レインコートの上から首輪やハーネスを着けることになり、装具自体が濡れます。濡れたナイロンやポリエステルは乾きにくく、翌日まで湿ったままだと臭いの原因になります。

とくにフード付きの製品では、リード穴がないとフードが正しく被せられない構造のものがあります。購入前に商品画像で穴の位置を確認し、愛犬がハーネス派なのか首輪派なのかに合った位置かを見てください。胸元で引くタイプのハーネスを使っている場合、背中側にしか穴がない製品は使いにくくなります。装具の選び方は犬用ハーネスおすすめの選び方と犬のリードの選び方も参考にしてください。

反射材は「安全装備」として数える

雨の日は視界が悪く、フロントガラスの水滴でドライバーの視認性がさらに落ちます。小型犬は路面に近い位置にいるため、運転席から見つけにくい存在です。

反射材(リフレクター)は1か所だけでなく、背面と側面の複数箇所に入っているものを選んでください。真後ろからしか光らない製品では、交差点で横から来る車に気づかれません。明るいイエローやオレンジといった高視認色を選ぶのも有効です。黒や濃紺のレインコートは見た目は良いですが、雨天の薄暮時には路面と同化します。

犬種・体型別の選び方

体型・犬種推奨形状優先するポイント
胴長短足(ミニチュアダックスフンド、ウェルシュコーギー)腹部まで覆うポンチョ、または胴長専用サイズのセパレート地面との距離が近く、腹への泥はねが最も多い。着丈が合う「胴長用」表記の製品を探す
短毛・小型(チワワ、ミニチュアピンシャーなど)ポンチョ型+防寒性のある裏地被毛が薄く体温を奪われやすい。秋以降は保温も兼ねる
長毛種(シーズー、マルチーズ、ポメラニアンなど)オールインワン型(背中開き)濡れると乾燥に時間がかかる。カバー率を優先。留め具はスナップボタン
大型犬(ラブラドール、ゴールデンなど)セパレート型で耐水性の高い生地被毛量が多く、濡れると重い。生地強度とファスナー/バックルの固定力を重視
短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど)カバー率の低いポンチョ型呼吸の負担が大きく蒸れに弱い。フードは使わない。着用時間を短くする
シニア犬(7歳以上、関節に不安がある)頭と足を通さない背中開き型着せる際に関節をひねらせない。滑りやすい路面では無理に歩かせない

短頭種については、呼吸機能に構造的な負担があるため、蒸れと体温上昇のリスクが他犬種より高くなります。気温が高い雨の日は、レインコートを使わず散歩を短時間に切り替える判断も選択肢です。

ぬかるんだ地面を歩く長毛の犬
長毛種は濡れると乾燥に時間がかかる。カバー率を優先して選ぶ

レインコートを嫌がる犬への慣らし方4ステップ

買ったレインコートが使われなくなる最大の理由は、性能でもサイズでもなく「犬が嫌がるから」です。対処の原則はひとつ、雨の日にいきなり着せて外に出さないことです。

嫌がる犬に無理やり着せて外に連れ出すと、「レインコート=嫌なことが始まる合図」という学習が成立します。一度成立すると、コートを取り出した時点で逃げるようになり、修正に何倍も時間がかかります。晴れた日の室内から、次の順序で進めてください。

ステップ1:置いておくだけ(2〜3日)

レインコートを犬の生活空間の床に広げて置きます。着せません。犬が自分から近づいて嗅いだら、その瞬間におやつを1粒与えます。近づかなくても構いません。「そこにあっても何も起きない」状態を作るのが目的です。

ここで面ファスナーを勢いよく剥がす「バリッ」という音を聞かせないでください。この音を怖がる犬は珍しくありません。もし音に反応するなら、離れた場所で小さく剥がす→おやつ、を数回繰り返して音単体に慣らします。

ステップ2:体に触れさせる(2〜3日)

コートを軽く背中に乗せるだけで、留めません。乗せた瞬間におやつ、3秒で外します。犬が固まる・体を振り落とそうとする場合は、時間が長すぎるサインです。1秒に戻してやり直します。

1回の練習は5回まで、1日1〜2セット。3秒で平然としていたら10秒、30秒と伸ばします。時間を伸ばすのは3日間安定してから、短くするのは嫌がった瞬間に即座に——これが脱感作の基本ルールです。同じ考え方は犬がチャイムで吠えるのをやめさせる4ステップでも解説しています。

ステップ3:留めて室内で過ごす(3〜5日)

留め具まで閉じて、室内で30秒〜3分過ごします。ここで重要なのは着せたまま動かせることです。じっと固まっている状態は「受け入れた」のではなく、身動きが取れなくなっている可能性があります。

おやつを床に転がして数歩歩かせる、おもちゃで誘って方向転換させる、といった動きを入れてください。普通に歩き、尻尾の位置が普段どおりなら受け入れています。逆に、足を高く上げて歩く、後ずさりする、体を伏せて動かないといった反応が出たら、ステップ2に戻します。

ステップ4:晴れた日に屋外で着る(3〜5日)

いきなり雨の日に使わず、晴れた日の短い散歩で着せます。外は室内より刺激が多く、室内でできたことが崩れやすいためです。玄関を出て5分歩いて帰る、から始めます。

ここまで問題なく進めば、雨の日のデビューです。初回は小雨の日を選び、10〜15分で切り上げます。雨音や地面の感触という別の刺激が加わるため、コート自体には慣れていても戸惑う犬がいます。

なお、レインコート以前に雨の日そのものを嫌がって歩かない犬もいます。雨音、地面の冷たさ、傘の動きなど原因はさまざまです。その場合はコートの問題ではないため、犬が散歩を嫌がる原因から切り分けてください。

着ても濡れる「足と腹」——帰宅後5分の拭き取り工程

冒頭で述べたとおり、レインコートを着せても足先と下腹部は濡れます。そして秋の皮膚トラブルの入口は、この濡れたまま放置された部位です。

犬の皮膚にはMalassezia pachydermatis(マラセチア)やブドウ球菌が常在しています。これらは普段は問題を起こしませんが、湿潤・温度・皮脂の条件が揃うと増殖し、マラセチア性皮膚炎や膿皮症につながります。とくに指の間(趾間)は被毛と皮膚が密着して乾きにくく、湿気が最も残りやすい場所です。梅雨〜夏の皮膚トラブルは犬の梅雨の皮膚トラブル|膿皮症・マラセチアの症状とケアで詳述していますが、同じ条件は秋雨のシーズンにも成立します。

玄関での手順(所要5分)

  1. レインコートを先に脱がせる(0:00〜0:30)。室内に上げる前に玄関で脱がせ、そのまま浴室やベランダへ。濡れたコートを着せたまま家に入れると、床と犬の両方が濡れます
  2. 足先から拭く(0:30〜2:30)。肉球の間に指を差し込み、指の股を1本ずつ拭きます。ここを飛ばすと乾きません。前足2本・後足2本で計2分が目安
  3. 腹と内股を拭く(2:30〜3:30)。泥はねが最も集中する部位。毛の流れに逆らって、根元から水分を吸い取ります
  4. 胸元・首回り・耳の後ろ(3:30〜4:30)。フードの隙間から入った水が溜まる場所です
  5. 最後に全身を軽く押さえ拭き(4:30〜5:00)。擦らず、タオルを押し当てて吸わせます

拭き取りで使うタオルは吸水性と、擦らずに水分を吸える構造が重要です。擦る動作は皮膚のバリアを傷め、かえって炎症の引き金になります。タオルの選定基準は犬用タオルの選び方|吸水性を数字で見抜く4つの判断軸で、公的な品質基準の数値も含めて整理しています。

長毛種や、指の間を舐める癖がある犬は、タオルの後にドライヤーの冷風〜弱温風で趾間を乾かしてください。手で触れて冷たく湿っている感触が残っていれば、まだ乾いていません。

タオルで包まれた犬
擦らず押し当てて吸わせる。指の股まで届いているかが分かれ目

受診を考える目安

雨の日の散歩が続いたあと、次のサインが出たら動物病院に相談してください。「様子を見る」で済ませてよい期間の目安も添えます。

サイン対応
指の間を執拗に舐め続ける、噛む2〜3日続けば受診。趾間炎・マラセチアの初期の可能性
指の間や腹が赤い、腫れている、被毛が唾液で変色している受診。自己判断で市販の外用薬を塗らない
皮膚がべたつく、独特の臭いがある受診。マラセチアの増殖を疑う所見
赤い発疹、かさぶた、円形の脱毛受診。膿皮症を疑う所見
足を着かない、歩き方がおかしい当日中に受診。皮膚以外(異物・外傷・関節)の可能性
濡れた後に震えが止まらない、元気がない体を拭いて保温し、30分〜1時間で戻らなければ受診

症状が出てからの洗浄には、薬用シャンプーなど獣医師の指示に基づく製品が必要になる場面があります。日常のシャンプー選びは犬のシャンプーおすすめの選び方を参照してください。

お手入れ|撥水性は復活させられる

前述のとおり、撥水加工は洗濯や摩擦で落ちます。「新品のときは水玉が転がったのに、最近は生地が濡れて色が濃くなる」という状態は、撥水剤が落ちたか、表面が汚れで覆われたサインです。

洗濯の頻度と方法

  • 毎回:帰宅後に水道水でさっと流し、陰干し。泥や砂は生地を傷めるため必ず落とす
  • 5〜10回使用ごと:中性洗剤で手洗い、またはネットに入れて弱水流。柔軟剤は撥水性を落とすため使わない
  • すすぎは十分に:洗剤が残ると、その部分が水を吸い込むようになる
  • 乾燥機はNG:高温で樹脂コーティング層が劣化・剥離することがある

撥水性を戻す2つの方法

  1. 低温のアイロンやドライヤーで熱をかける。洗濯で寝てしまったフッ素系撥水剤の分子が立ち上がり、撥水性が部分的に回復することがあります。必ずあて布をし、製品の洗濯表示で温度上限を確認してください
  2. 撥水剤を再付与する。スプレータイプが手軽です。乾いた生地に20〜30cm離して均一に噴霧し、完全に乾かします。犬が着る製品なので、噴霧は必ず屋外で行い、完全に乾燥・脱臭してから着せてください。噴霧中と乾燥中は犬を近づけないこと

コーティング層そのものが劣化して剥がれている(内側の樹脂膜がボロボロと落ちる、ベタつく)場合は、撥水剤では戻りません。買い替えのタイミングです。使用頻度にもよりますが、2〜3シーズンが交換の目安と考えてください。

保管

完全に乾いてから保管します。湿ったまま畳むとカビが生え、生地の樹脂層も劣化します。シーズンオフは強い折り目をつけず、ハンガーに吊るすか緩く丸めて通気のある場所へ。折り目は、そこから浸水する原因になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. そもそも雨の日の散歩は必要ですか?

毎回必ず外に出る必要はありません。豪雨や雷、台風接近時は無理に出ず、室内での運動や嗅覚を使う遊びに切り替えてください。ただし、排泄を屋外でしか行わない犬の場合、我慢させることが膀胱炎などのリスクになります。短時間でも排泄のために出る判断が必要です。「雨だから毎回中止」を続けると、雨そのものを怖がる犬になることもある点にも留意してください。

Q2. 耐水圧は何mm以上あれば安心ですか?

一律の推奨値を示すのは適切ではありません。犬用レインコートでは試験法(JIS L 1092のA法かB法か、あるいは独自測定か)が明示されていない数値が多く、メーカー間で横並び比較できないためです。数字を追うより、縫い目のシームテープ処理の有無、生地の厚み、裏面のコーティング状態を見るほうが実用的です。参考として、人用レインウェアは10,000mm前後、傘は250mm程度とされます。

Q3. 人間用のレインコートを切って使ってもいいですか?

応急的には可能ですが、常用は勧めません。犬は四足歩行で、前足の付け根の可動域が人と大きく異なります。人用を流用すると脇が擦れて脱毛や炎症を起こすことがあります。また切断面がほつれ、誤飲につながる危険もあります。急場しのぎなら、大きめのゴミ袋に頭と前足の穴を開けたポンチョのほうが安全です(着用は短時間に限り、必ず目を離さないでください)。

Q4. 着せると固まって歩かなくなります。どうすればいいですか?

「慣れさせるために外で歩かせ続ける」は逆効果です。固まっている状態は学習が進んでいるのではなく、身動きが取れなくなっている状態だからです。本記事の4ステップに戻り、室内で「乗せるだけ3秒」からやり直してください。またサイズが窮屈、フードで視界が塞がれている、生地のシャカシャカ音が苦手、といった物理的な原因も確認します。音が苦手な場合は、伸縮性のあるトリコット素材など擦過音の小さい生地の製品が選択肢になります。

Q5. レインコートを着せれば、帰宅後に足を拭かなくても大丈夫ですか?

いいえ。足先は必ず濡れ、泥や落ち葉の汚れも付きます。むしろレインコートを着せた日ほど「濡れていないはず」と油断しやすく、趾間の乾燥を怠りがちです。毎回、指の股まで拭いてください。洗う場合はぬるま湯で流し、洗剤を毎回使う必要はありません。洗ったあとに乾かさないことが最も避けるべき状態です。

Q6. 秋冬は防寒兼用のレインコートを選んだほうがいいですか?

11月以降で、短毛種・小型犬・シニア犬であれば裏起毛タイプが有効です。ただし9〜10月前半はまだ日最高気温の平年値が22〜27℃台(東京)あり、裏起毛では蒸れて体温が上がりすぎるおそれがあります。理想は「秋用の薄手」と「冬用の裏起毛」の2枚を使い分けることです。1枚で済ませるなら、薄手を選び、寒い日は下に服を着せて調整するほうが融通が利きます。秋の体調管理全般については犬の秋バテ|症状と受診ラインもあわせてご覧ください。

まとめ|購入前チェックリスト

  • レインコートは「完全防水」ではなく「拭く面積を減らす道具」と位置づける
  • 気象庁平年値では、強い雨(日降水量10mm以上)の日数は9月が年間最多。秋は梅雨より装備の想定を上げる
  • 形状はポンチョ/セパレート/オールインワン。カバー率と着せやすさはトレードオフ
  • 「撥水」は水を弾く性能で洗濯すると落ちる。「耐水(防水)」はコーティングで通さないが蒸れる
  • 試験法が書かれていない耐水圧の数字は比較材料にならない。縫い目のシーム処理など構造を見る
  • サイズは首回り・胴回り・着丈の3か所を立たせて実測し、首回り・胴回りは+2〜3cm
  • 留め具は長毛種ならスナップボタン、短毛種なら面ファスナー
  • 嫌がる犬は晴れた日の室内から4ステップ。雨の日にいきなり着せない
  • 帰宅後は玄関で脱がせ、指の股を1本ずつ拭く。趾間の湿気が皮膚トラブルの入口
  • 撥水性は低温の熱または撥水剤で回復可能。乾燥機と柔軟剤は使わない

参考にした情報源

  • JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(はっ水度試験・耐水度試験A法/B法の定義と適用範囲)
  • 一般財団法人ボーケン品質評価機構「防水性試験(JIS L 1092)」(防水性=耐水性・漏水性・はっ水性の総称、試験手順、家庭用品品質表示法における撥水表示の要件)
  • 気象庁「平年値(年・月ごとの値)東京」統計期間1991〜2020年(月別降水量・階級別降水日数・気温)
  • Merck Veterinary Manual: Pyoderma in Dogs / Malassezia Dermatitis in Dogs(湿潤環境と皮膚常在菌の増殖)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

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