犬にマダニが付いたら?正しい取り方とNG行為・受診目安【獣医学情報】

犬にマダニが付いていたら、無理に指やピンセットで引き抜かないでください。口の部分が皮膚に残って化膿したり、マダニの体液が逆流して病原体が入りやすくなります。原則は動物病院での除去です。この記事では、今まさに付いているマダニへの正しい対処を最初に解説します。

草むらを散歩する犬
草むらはマダニが待ち構える代表的な場所です
目次

マダニを見つけたら:まずやってはいけない3つのこと

散歩やアウトドアのあと、犬の体に小豆やイボのようなふくらみを見つけたら、それはマダニかもしれません。吸血したマダニは丸くふくれ、皮膚に固く食い込んでいます。焦って対処する前に、次の3つのNG行為を避けてください。

NG1:指やピンセットで無理に引き抜く

マダニは「口下片(こうかへん)」という突起を皮膚に差し込み、セメント状の物質で固定して吸血します。無理に引っ張ると口の部分だけが皮膚内に残ります。厚生労働省も、無理に引き抜くと一部が残って化膿したり、マダニの体液を逆流させて病原体が体内に入りやすくなると注意しています(出典:厚生労働省「SFTSに関するQ&A」第8版)。

NG2:マダニを潰す・ねじる

体を潰すと、マダニの体液や病原体が傷口に流れ込みます。卵が飛び散ることもあります。ねじって取るのも口下片が残る原因です。潰さない・ねじらないが鉄則です。

NG3:1匹取れて安心して終わりにする

1匹見つかったら、他の場所にも寄生している可能性が高いです。全身をチェックし、駆除薬で確実にケアする必要があります。1匹だけで判断しないでください。

マダニの正しい取り方(病院推奨/自宅で取る場合の手順)

動物病院で診察を受ける犬
マダニが食い込んでいる場合は動物病院での除去が最も安全です

基本は動物病院で取ってもらう

皮膚に食い込んで固定されたマダニは、動物病院で除去してもらうのが最も安全です。獣医師は専用器具で口下片を残さず取り除き、必要なら消毒や駆除薬の処方まで行います。厚生労働省も、マダニがしっかり食い込んでいる場合は無理に取らず獣医師に除去してもらうよう推奨しています。

すぐに受診できない場合の応急手順

夜間や休日ですぐに受診できない緊急時は、次の手順で対処します。ただし食い込んだマダニは自己判断で取らず、可能な限り受診を優先してください。

  1. 使い捨て手袋をつけ、素手で触らない。
  2. 先端の細いピンセット(できればマダニ除去専用)を消毒する。
  3. マダニの頭部(皮膚に近い部分)をつまむ。
  4. ねじらず、均一な力でゆっくり真上に引き上げる。
  5. 取れたマダニは粘着テープに貼り付け、潰さず密封して処分する。

取り除いたマダニは、種類の確認や後日の受診時の参考になるため、密封して数日間保管しておくと安心です。

皮膚の上を歩いているだけのマダニは?

まだ噛みついておらず、被毛の上を歩いているマダニは、ノミ取りコームやピンセットで取り除けます。取ったマダニはテープで密封して処分します。この場合も他に寄生していないか全身を確認しましょう。

取った後・取れなかった後のケアと消毒

マダニを除去したあとは、噛まれた部位を消毒用アルコールや石けんでしっかり洗浄します。SFTSウイルスは酸や熱に弱く、消毒用アルコールや台所用洗剤で感染性がなくなるとされています(出典:厚生労働省「SFTSに関するQ&A」)。処置後は飼い主自身の手もよく洗ってください。

口下片が皮膚に残ってしまった、患部が赤く腫れて化膿してきた、というときは自己処置をやめて動物病院を受診します。無理に掘り出そうとすると、かえって炎症を悪化させます。

噛まれた後に注意する症状と病気(バベシア症・SFTS)

皮膚をなめる犬
噛まれた後は数週間、体調の変化に注意します

マダニは吸血時にさまざまな病原体を媒介します。取り除いたあとも、数週間は犬の様子を観察してください。次のような症状が出たら受診の目安です。

バベシア症

マダニが媒介するバベシア原虫が赤血球を破壊し、貧血を起こす病気です。元気がない、食欲不振、発熱、歯ぐきや舌が白っぽい、濃い黄〜茶色の尿(血色素尿)などが代表的なサインです。急性の場合は黄疸や多臓器不全を起こし、命に関わることもあります。これらの症状が見られたらすぐに受診してください。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

マダニが媒介するウイルス感染症です。犬は無症状のことも多い一方、発熱・元気消失・嘔吐などを示すこともあります。厚生労働省によると、発症した場合はイヌで約4割、ネコで約6割が死亡すると報告されています(出典:厚生労働省「SFTSに関するQ&A」第8版)。発熱や消化器症状が続くときは注意が必要です。

そのほかの症状

大量寄生による貧血、唾液がアレルゲンとなる強いかゆみ・赤み、まれに神経障害(ダニ麻痺症)を起こすこともあります。噛まれた部位をしきりに気にする、ぐったりする、といった変化も見逃さないようにしましょう。

人にもうつる?家庭内での注意(SFTSの人獣共通リスク)

SFTSは犬や猫から人にうつる「人獣共通感染症」です。厚生労働省によると、SFTSウイルスに感染して発症した動物の血液や唾液など体液に直接触れると、人が感染する可能性があります。日本の人の患者の致命率は27%と報告されており、2025年は過去最高の183名の患者が報告されました(2025年11月時点)。2024年3月には国内で初めて人から人への感染事例も確認されています。

ただし、ペットに付いているマダニに触れただけで人が感染することはありません。過度に恐れる必要はなく、次の点に注意すれば十分です。愛犬の体調不良時はマスクと手袋を着用し、噛まれたり舐められたりしないよう気をつける。動物に触れたら必ず手を洗う。口移しでエサを与える、布団で一緒に寝るといった過剰な触れ合いは控える。愛犬がSFTSと診断され、その後に自分が発熱や消化器症状を感じたら、医療機関を受診してペットの状況を医師に伝えてください。

マダニが付きやすい場所・季節と予防

マダニは森林や草地、河川敷のほか、郊外や市街地の草むらにも生息します。犬の体では、耳、目や口の周り、胸、内もも、足の指の間、肛門周囲など被毛の少ない場所に付きやすい傾向があります。散歩やアウトドアのあとは、こうした部位を手で触ってチェックしましょう。

マダニは春から秋にかけて活動が活発になります。厚生労働省は、草むらに入るときは肌の露出を避けることを推奨しています。飼い主自身も長袖・長ズボンを着用し、DEETやイカリジンを含む虫よけを補助的に使うと効果的です。愛犬には、動物病院で処方される定期的な駆除薬(スポットタイプ・内服薬)が最も確実な予防策です。

マダニの大きさは吸血前で3〜8mm、吸血後は10〜20mm程度にふくらみます。予防と早期発見の詳しい方法は、関連記事もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. マダニと黒いイボ・できものはどう見分ければいい?

A. 吸血したマダニは丸くふくらみ、イボによく似ています。見分けるポイントは「脚(8本)があるか」「皮膚から少し浮いて付いているか」です。よく見ると脚が確認できればマダニです。判断がつかないときは触らず、動物病院で確認してもらいましょう。

Q. マダニを取ったあと、頭が残ったかもしれません。どうすれば?

A. 無理に掘り出そうとせず、動物病院を受診してください。口下片が残ると化膿や炎症の原因になります。患部が赤く腫れる、しこりが残る場合は早めに相談しましょう。

Q. 酢やアルコールでマダニを弱らせて取ってもいい?

A. 酢の匂いを嫌ってマダニが口を離すことはありますが、確実ではありません。刺激で体液を逆流させるリスクもあるため推奨されません。基本は動物病院での除去を優先してください。

Q. マダニに噛まれた後、いつまで様子を見ればいい?

A. 少なくとも数週間は体調の変化に注意してください。発熱、元気消失、食欲不振、嘔吐、濃い色の尿などが現れたら、マダニに噛まれた経緯を伝えたうえで動物病院を受診しましょう。

Q. 室内飼いの犬でもマダニ予防は必要?

A. 必要です。散歩やベランダ、庭に出る機会があればマダニに接触するリスクがあります。飼い主が屋外から持ち込むこともあるため、定期的な駆除薬でのケアをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

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