人・他犬への社会化に続いて今回は音の社会化です。音も生活するうえで必ずあるものでワンちゃんが反応しやすい、問題行動にも繋がりやすいことのひとつです。あらためて社会化の重要性や音への社会化手順などを解説していきましょう。
音に反応する理由とは?
音に反応するワンちゃんは多いので音への社会化はとても大事。ではなぜ音に反応するのか?実は音そのものの好き嫌いではなく、その音と何かを関連付けて覚えているからなんです。
チャイムに反応するワンちゃんはけっこう多いですが、これはチャイムが鳴ると知らない人が来ることを学習した結果です。反応するだけならいいのですが、人に対して嫌なイメージがあったり好きすぎたりすると過度に反応して飼い主さんを困らせる行動を取ることがある。つまり音だけではなく人への社会化が必要ということになります。
このように音への反応は他の原因からくることのほうが多いですが、原因を取り除いたり社会化で好きにするだけではなく、その音に対して社会化することで早く効率よく解決できます。
特に恐怖心が原因だと吠え続けたり何か音がするたびにブルブル震えたりストレスが溜まり心身ともに良くありません。当然飼い主さんも困ったり心配で楽しく過ごせないはずなので音への社会化をして愛犬がストレスを感じないようにしたり、すでに嫌なイメージがついているならストレスから開放してあげましょう。
音への社会化の基本
人・他犬への社会化とかぶる部分もありますが改めて説明します。
🔶 どんな音に慣れさせるかを決める
音といっても無数にあるので、現在の環境で聞こえる音に優先順位をつけて社会化をしていきましょう。一般的にワンちゃんが反応しやすい音は「チャイム・他犬の吠え・子供の声・車(バイク)の音・カミナリ」などです。
🔶 難易度が低い状況から始め、慣れてから徐々に難易度を上げステップアップ
🔶 好きな物と合わせて経験させることで「嫌い寄り ⏩ 普通 ⏩ 好き寄り ⏩ 好き」になってもらう
音の社会化手順はシステム化でき難易度を調整しやすいので失敗しにくい方法ですが、欲張って大きくステップアップしすぎると一瞬でその音を嫌いになることはあるので注意しましょう。
🔶 事前に手順を頭に入れて、うまくいかなかった場合の対応も考えておく
うまくいっていない時はスパッとやめるのが一番です。どこがいけなかったのかを考え修正して、飼い主さんも愛犬も落ち着いてから再開しましょう。
✅ 音への反応は音そのものではなく、音と何か(原因)を関連付けて覚えているから
✅ 現在の環境を考慮して、社会化する音の優先順位を決める
✅ 一瞬でその音を嫌いになることはある
社会化手順
ここでは「チャイムの音への社会化手順とポイント」を説明していきます。
音の社会化の難易度は「場所」と「音量」です。場所は自宅のリビングなど一番安心できるスペースで小さい音量から始めます。当然音量が大きくなるほど難易度は上がります。
音はいつどんな音量で鳴るのかわからないので、本番で完璧な対応はできないと思ってください。なにか音が鳴って愛犬が反応したらできるだけ早くオヤツをあげるか、ナデたり抱っこして安心させることくらいしかできません。だから社会化をしてどんな状況でも音に過剰反応しないようにすることが大事なんです。
1. 事前準備
チャイムの音をスマホなどに録音しておきます。それを音量調節しながら再生することで難易度をコントロールして社会化をすることができます。ちゃんとしたステレオやスピーカーで再生しないと反応しない子もたまにいるので、必要であればスピーカーなどを用意してください。
すでにチャイムに反応して望ましくない行動をしている場合はチャイムの音を変えてみてください。音が変わるとそれだけで反応しなくなるワンちゃんもいます。「嫌なイメージから」よりも「フラットな状態から」始めたほうが時間もかからずやりやすいので音を変えることも考慮してください。
オヤツは長時間ナメたりかじったりできるようなものを用意して継続的にかじらせます。チャイム音を最低音量で再生し、反応しなかったら徐々に上げて再生を繰り返します。反対に、オヤツをかじらなくなったりちょっとでも反応したらその音量が今の限界なのでそこで音量をキープします。
ここまで準備ができたら手順に沿って社会化をしていきましょう。
2. 音に慣らす
【オヤツのタイミング】
画像の①から⑤の順に難易度が上がっていきます。まずは、①から挑戦してみてください。
① オヤツをかじらせてから再生して、チャイムが鳴り終わったらオヤツを引き上げます。
かじっている時には反応しにくいのでチャイムの前にオヤツをかじらせ始めます。特に吠える子などはかじるのと吠えは両立できないので有効です。
ワンちゃんが「オヤツ食べてるとチャイムが聞こえる」と理解しだしたら音量を徐々に上げていき、普段聞こえるチャイムの音量よりちょっと大きいくらいまで慣れたらステップアップしましょう。
②~⑤
あとはオヤツをあげるタイミングを徐々に遅くしていき、最終的にはチャイムが鳴っても騒いだりせず飼い主さんの望ましい状態だったらオヤツをあげます。そうなるとチャイム=オヤツがもらえる音(合図)になるので怖がったりすることはありません。理屈は「パブロフの犬」と同じです。
手順はこれだけなのでさほど難しくないですよね。チャイムに対してフラットな場合は事前準備の「今の限界音量」を探っている段階で特になんの反応もなく社会化できてしまう場合もあります。ステップアップも愛犬の反応を見ながら調整することで成功率は上がるし早く社会化できるようになります。
【他の音にも慣らす】
音を変えるだけで手順はまったく同じです。最近は便利なもので「環境音楽」で検索すればフリー素材はいくらでも出てきますし、youtubeなどにもアップされています。いろいろな音で社会化することで音全般に過剰反応しなくなり安心して暮らせるようになります。
おすすめは「他犬の吠え・子供の声・車(バイク)の音・カミナリ」。飼い主さんならわかると思いますが、他犬が吠えると愛犬も吠えやすいなど、ほとんどのワンちゃんが反応しやすい音だからです。特にカミナリは恐怖心も伴い、それがきっかけで音全般怖くなるワンちゃんもいるので早めに社会化してあげてください。
私の愛犬バッシュの話ですが、ある日急にしっぽを下げて腰砕けで固まってしまったことがあります。
明らかに怖がっていて、私をじっと見て助けを求めているようなので抱っこしてあげようと呼んでもまったく動かない。。。そして何に怖がっているかわからない。仕方が無いので近づいて抱っこしてあげたらブルブル震えてしばらく収まりませんでした。
この日は山のコテージに宿泊していて初めての場所だったんですが、初めての場所は何度も経験していて怖がったことはない。その他状況を見て考察してみると、原因はどうやら外の音にあるようでした。普段は防音のしっかりしたマンションで外の音はまったく聞こえない環境だったのに、その日は風で木が揺れて擦れる音が「ざわざわ・ガサガサ」と聞こえていました。
私はかなり社会化していたつもりでしたが、怖いものなしだと思っていた愛犬のこんな姿を見て「社会化は年齢や性格に関係なく何に対してでもやっておいたほうがいいな」と思ったものです。「こんな経験させたらどんな反応するのかな?」という好奇心でもいいと思います。
例えば、
- 「人形が急に踊り出し音楽が流れたらどうなる?」→ 音・動きがあったほうが逆に興奮してじゃれはじめた
- 「お風呂は嫌いだけどプールは?」→ 最初は自分から入らず腰が引けていたけど、おもちゃで遊んでテンション上がってからプールにおもちゃを投げ入れたら飛び込んだ
などです。
そんな好奇心からの社会化は飼い主さんも楽しくできるはずなので、ぜひいろいろな良い経験をさせてあげて楽しく社会化してみてください♪
✅ 音量で難易度をコントロール
✅ いろいろな音を社会化することで音全般に過剰反応しなくなっていく
✅「これにはどんな反応するんだろう?」と飼い主さんも楽しんで社会化をする