犬のおしっこが「赤・ピンク・コーラ色」なら、当日中に動物病院へ。「濃い黄色〜オレンジ」は脱水か肝臓・胆道の異常のサインで、水を飲ませても24時間以上戻らなければ受診してください。正常な色は「薄い黄色〜麦わら色」です。

おしっこは、毎日ノーコストで確認できる健康診断です。血液検査をしなくても、色の変化だけで腎臓・肝臓・膀胱・赤血球の異常に気づけることがあります。
とくに夏は、汗をかけない犬が呼吸(パンティング)で大量の水分を失います。尿が濃くなりやすく、膀胱炎や尿石症のリスクが上がる季節です。
この記事では、尿の色を5段階に分けて危険度を整理します。あわせて自宅での観察方法と、受診すべき明確な線引きも解説します。
犬の正常なおしっこの色とは|「薄い黄色〜麦わら色」が基準
健康な犬の尿は、透明感のある薄い黄色です。「麦わら色」「レモン色」と表現されます。
この色は、古くなった赤血球が分解されてできる「ウロビリン」という色素によるものです。水をたくさん飲めば薄く、少なければ濃くなります。
1日の正常な尿量と飲水量の目安
色と同じくらい大切なのが「量」です。獣医内科学で使われる一般的な基準値は次のとおりです。
| 項目 | 正常範囲(体重1kgあたり/1日) | 異常とされる値 |
|---|---|---|
| 尿量 | 約25〜45mL | 50mL以上で「多尿」 |
| 飲水量 | 約50〜60mL | 90〜100mL以上で「多飲」 |
| 尿比重 | 1.015〜1.045 | 1.008〜1.012が続くと腎機能低下を疑う |
体重5kgのトイプードルなら、1日の尿量は125〜225mL程度。飲水量は250〜300mLが目安です。
体重10kgの柴犬なら、尿量250〜450mL、飲水量500〜600mL。飲水量が1日1,000mLを超えるようなら「多飲」として受診対象になります。
多飲多尿は、慢性腎臓病・糖尿病・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)・子宮蓄膿症の代表的な初期サインです。色が正常でも、量が急に増えたら見過ごさないでください。
排尿回数の目安
成犬の排尿回数は1日3〜5回が一般的です。子犬は膀胱が小さく、生後3か月なら1日7〜10回にもなります。
1日10回以上トイレに行くのに、1回の量が数滴しか出ない。これは「頻尿」で、膀胱炎か尿道閉塞を強く疑う所見です。
【色別チャート】犬のおしっこの色でわかる危険度
色ごとに、考えられる原因と受診の緊急度を整理しました。まずは一覧で全体像をつかんでください。
| 尿の色 | 考えられる主な原因 | 危険度・受診目安 |
|---|---|---|
| 薄い黄色・麦わら色 | 正常 | ― 経過観察 |
| ほぼ無色透明 | 多飲多尿(腎臓病・糖尿病・クッシング) | 中|数日続くなら受診 |
| 濃い黄色 | 脱水・水分不足・発熱 | 中|給水しても24時間続くなら受診 |
| オレンジ〜濃い茶 | 黄疸(肝臓・胆道疾患)、重度脱水 | 高|当日〜翌日に受診 |
| 赤・ピンク | 血尿(膀胱炎・尿石症・腫瘍・前立腺) | 高|当日受診 |
| 赤褐色・コーラ色 | 血色素尿(玉ねぎ中毒・IMHA・バベシア)/ミオグロビン尿 | 最高|今すぐ救急受診 |
| 白く濁る・膿っぽい | 細菌性膀胱炎、結晶尿、子宮蓄膿症 | 高|当日受診 |
濃い黄色|まずは脱水を疑う(夏に最多)
いちばん多い原因は、単純な水分不足です。体内の水が減ると腎臓が水を再吸収し、尿が濃縮されます。
朝いちばんの尿が濃いのは正常な現象です。夜間は水を飲まないため、誰でも尿が濃くなります。判断は日中の尿で行ってください。
ただし、日中も一日じゅう濃い黄色が続く場合は要注意。発熱、下痢や嘔吐による体液喪失、腎機能の低下も原因になります。
対処はシンプルです。まず新鮮な水を飲める環境を整え、24時間観察します。それでも色が戻らないなら受診してください。
あわせて皮膚のツルゴール(首の後ろの皮膚をつまんで戻る速さ)と歯茎の湿り気を確認しましょう。詳しい手順は犬の脱水症状チェック|5秒でできる見分け方と応急処置で解説しています。
オレンジ〜濃い茶色|黄疸の可能性がある
紅茶やウーロン茶のような色は、ビリルビン尿の疑いがあります。肝臓や胆道に異常があると、胆汁色素が尿に漏れ出します。
この場合、尿を振ると泡まで黄色くなるのが特徴です。透明な容器に取って泡の色を見ると判別しやすくなります。
同時にチェックすべきは白目・歯茎・耳の内側の色です。黄色みがあれば黄疸で、胆管閉塞や肝炎、溶血が起きている可能性があります。
黄疸を伴う場合は当日中に受診してください。原因によっては数日で急激に悪化します。
赤・ピンク|血尿。膀胱炎と尿石症が二大原因
尿に赤血球が混ざった状態が血尿です。犬でもっとも多いのは細菌性膀胱炎、次いで尿石症(結石)です。
犬の尿石で頻度が高いのはストルバイトとシュウ酸カルシウムの2種類。ストルバイト結石はウレアーゼ産生菌(ブドウ球菌など)の感染に伴って形成されることが多いとされています。
アニコム損保の統計では、尿石症はミニチュア・シュナウザー、シー・ズー、パピヨン、パグで発生が多いと報告されています。該当犬種は年1回の尿検査をおすすめします。
血尿で見逃せない他の原因は次のとおりです。
- 膀胱移行上皮癌:高齢犬に多く、抗生剤で一時的に改善するため見逃されやすい
- 前立腺肥大・前立腺炎:未去勢のオスに多い。排尿とは無関係に尿道から血が垂れることも
- 子宮蓄膿症:未避妊のメス。発情終了後1〜2か月に発症しやすく、命に関わる
- 発情出血:未避妊のメスでは生理的なもの。ただし膀胱疾患との併発もあるため自己判断は禁物
元気も食欲もある軽い血尿なら緊急性は低めですが、放置は禁物です。当日〜翌日には尿検査を受けてください。
赤褐色・コーラ色|血色素尿。もっとも危険なサイン
ドス黒い赤、醤油やコーラのような色は、血尿とは別物の可能性があります。「血色素(ヘモグロビン)尿」です。
これは体内で赤血球が大量に壊れ、色素が尿に漏れ出した状態です。膀胱の出血ではなく、全身性の病気を意味します。
主な原因は次のとおりです。
- 玉ねぎ・ニラ・ニンニク中毒:ネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物が赤血球を破壊する
- 免疫介在性溶血性貧血(IMHA):自分の免疫が赤血球を攻撃する。死亡率の高い緊急疾患
- バベシア症:マダニが媒介する寄生虫感染症。西日本で報告が多い
- フィラリア症(大静脈症候群):突然の血色素尿と虚脱を起こす。緊急手術が必要
また、激しい運動や長時間のけいれん発作のあとには「ミオグロビン尿」が出ることがあります。筋肉が壊れて色素が尿に排泄される状態で、こちらも急性腎障害を起こしうる緊急事態です。
血尿・血色素尿・ミオグロビン尿は、見た目だけでは区別できません。尿を遠心分離して上澄みの色を見る、血液検査を行うといった手順で初めて鑑別されます。
コーラ色の尿を見たら、様子を見ずにすぐ動物病院へ電話してください。とくにネギ類を食べた心当たりがある場合は犬が玉ねぎを食べた|中毒症状・危険量と今すぐの対処法もあわせて確認しましょう。
ほぼ無色透明|「薄すぎる」も異常のサイン
水のように透明な尿が続く場合、腎臓が尿を濃縮できていない可能性があります。
慢性腎臓病では、腎機能の約3分の2が失われた段階で尿の濃縮力が落ちます。血液検査で異常が出るより先に、尿の薄さで気づけることがあります。
糖尿病、クッシング症候群、尿崩症、子宮蓄膿症も多尿を起こします。「よく水を飲むようになった」は、飼い主が最初に気づける重要なサインです。
ただし、暑い日に運動した後や、水分の多いフードに切り替えた直後は一時的に薄くなります。3日以上続くかどうかで判断してください。
白く濁る・キラキラする|結晶尿や感染を疑う
白っぽく濁る尿は、細菌・白血球・結晶が混ざっている状態です。細菌性膀胱炎でよく見られます。
ペットシーツの上で乾いた尿がキラキラして見えるなら、ストルバイト結晶の可能性があります。結晶は結石の前段階で、放置すると尿道に詰まる危険があります。
とくにオス犬は尿道が細長く、途中でカーブしているため閉塞しやすい構造です。まったく尿が出ない状態が続くと、24時間以内に急性腎不全から死に至ることがあります。
「何度も構えるのに出ない」は、色の異常より緊急度が高い所見です。夜間でも救急動物病院を探してください。
夏に犬の尿が濃くなる理由|脱水と尿路トラブルの連鎖

犬は人間のように全身の汗腺で発汗できません。体温調節の主役は、口を開けて息をするパンティングです。
パンティングは呼気とともに水分を失います。気温30℃を超える日は、涼しい日より必要な水分量が明らかに増えます。
ここで飲水が追いつかないと、次の連鎖が起こります。
- 尿量が減り、尿が濃縮される
- 膀胱内に尿がとどまる時間が長くなる
- 細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎が起きる
- ミネラルが濃くなり、結晶・結石ができやすくなる
つまり「夏の濃い尿」は、それ自体が病気の入口です。色が濃いうちに手を打つ意味があります。
夏の飲水量を増やす具体策
- 水飲み場を2〜3か所に増やす:リビング・寝床の近く・階が違う場合は各階に
- ドライフードに水やぬるま湯を大さじ2〜3杯かける:体重5kgなら1食あたり30〜50mLの上乗せになる
- ウェットフードを1日1回混ぜる:ウェットフードは水分含有量が約75%
- 散歩には必ず携帯用ボトルを持つ:15分に1回、10〜20mL程度を目安に
- 器を陶器やステンレスに替える:プラスチックの匂いを嫌う犬がいる
なお、ミネラルウォーター(とくに硬水)の常用は避けてください。マグネシウムやカルシウムの摂取が増え、尿石症のリスク要因になりえます。基本は水道水で十分です。
それでも水を飲まない場合の工夫は犬が水を飲まない原因と対処法にまとめています。
今すぐ受診すべきサイン|色+併発症状で判断する
色だけで慌てる必要はありません。判断の軸は「色 × 併発症状 × 継続時間」の3つです。
今すぐ(当日・夜間でも)受診すべき
- コーラ色・醤油色の尿が出た
- 何度も排尿姿勢を取るのに、尿がまったく出ない
- ぐったりして立てない、歯茎が白い・黄色い
- 嘔吐を繰り返し、水も飲めない
- お腹を触ると痛がる、背中を丸めて動かない
- ネギ類・ブドウ・保冷剤などを食べた心当たりがある
翌日〜数日以内に受診すべき
- 赤・ピンクの尿が出たが、元気も食欲もある
- オレンジ〜茶色の尿が2回以上続く
- 濃い黄色が給水しても24時間以上戻らない
- 透明な尿と多飲が3日以上続く
- 頻尿・少量ずつの排尿が2日以上続く
- 尿の匂いが急に強くなった、アンモニア臭が増した
受診時に持っていくべきもの
診断のスピードを大きく左右します。可能な範囲で準備してください。
- 採取した尿(最重要):清潔な容器に入れ、冷蔵で保存。採取から6時間以内が理想
- ペットシーツの写真:実物より色が変わりやすいので、その場で撮影する
- いつから・何回・何色かのメモ
- 飲水量と食事内容の記録
- 投薬中の薬(現物またはパッケージ)
なお、尿は時間が経つと細菌が増殖し、pHや結晶の所見が変わります。前日の尿では正確な判定ができないため、当日朝の尿を持参してください。
自宅でできる尿の観察方法|ペットシーツと採尿のコツ

ペットシーツでは色が正しく見えない
吸収ポリマーは尿を素早く吸い込むため、色が薄まって見えます。白いシーツでも実際より淡く感じます。
正確に見たいときは、シーツを裏返して防水面(青やグレーの面)を上にして敷きます。尿が吸収されず表面に残るので、本来の色が確認できます。
この方法は採尿にも使えます。表面に溜まった尿を、清潔なスポイトや使い捨てスプーンですくってください。
屋外・室内での採尿テクニック
- オス犬(足上げ):おたまや浅いトレーを、脚に触れないよう横からそっと差し入れる
- メス犬(しゃがむ):長い柄の付いた紙コップや、100均のミニおたまが使いやすい
- 警戒する犬:数日前から道具を見せて慣らす。無理に追いかけると排尿を我慢してしまう
- どうしても取れない場合:病院でカテーテル採尿や膀胱穿刺が可能。無理せず相談する
採取のタイミングは、朝いちばんの尿が理想です。もっとも濃縮されており、異常所見が出やすくなります。
ただし出はじめの尿には陰部の細菌が混ざりやすいので、可能なら「中間尿」(出はじめを見送ってから採る)を取りましょう。
記録しておくと診断が早まる項目
| 記録項目 | 簡単な測り方 |
|---|---|
| 飲水量 | 朝に計量カップで給水し、翌朝の残量を引く |
| 尿量 | ペットシーツを使用前後で計量(1g≒1mL) |
| 排尿回数 | スマホのメモに正の字でカウント |
| 色 | 裏返したシーツの上で、自然光の下で撮影 |
1週間分でも十分な情報になります。「なんとなく多い気がする」より、数字のほうが獣医師には正確に伝わります。
尿トラブルを防ぐ4つの習慣
- 水を飲みやすい環境をつくる:新鮮な水を複数箇所に。夏は最低でも1日2回入れ替える
- 排尿を我慢させない:トイレが汚れていると我慢する犬がいる。こまめに交換し、静かな場所に置く
- 適度な運動を続ける:運動不足は膀胱炎のリスク要因。夏は早朝・夜間の涼しい時間帯に
- 年1回の尿検査を受ける:7歳以上や尿石症の好発犬種は年2回。血液検査より安価で、腎臓病を早期に拾える
尿検査の費用は1,000〜2,500円程度が一般的です。健康診断のオプションとして、朝の尿を持参するだけで受けられます。
また、体調の変化は尿以外にも現れます。犬の食欲がない|夏に多い原因と受診すべきサインや犬の目やに|色別の原因と病気のサインもあわせて確認しておくと、異変に早く気づけます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 朝の1回だけ尿が濃いのですが、病気でしょうか?
正常な可能性が高いです。夜間は水を飲まないため、朝いちばんの尿は誰でも濃縮されます。日中の2回目以降の尿が薄い黄色に戻っていれば、心配はいりません。逆に、日中も一日を通して濃い状態が24時間以上続くなら受診を検討してください。
Q2. サプリメントや薬で尿の色が変わることはありますか?
あります。ビタミンB2(リボフラビン)を含むサプリは尿を鮮やかな黄色〜蛍光がかった黄色にします。ビートやニンジンを大量に与えた場合も一時的に赤みが出ることがあります。ただし「食べ物のせい」と自己判断するのは危険です。心当たりがあっても、赤い尿が2回以上続くなら病院で尿検査を受けてください。
Q3. 血尿ですが元気も食欲もあります。様子を見てもいいですか?
元気があっても、翌日〜2日以内の受診をおすすめします。膀胱炎は自然に色が戻ることがありますが、細菌が残っていれば再発し、慢性化すると結石や腎盂腎炎につながります。高齢犬では膀胱腫瘍が「一時的な血尿」として現れることもあり、これは自然治癒しません。尿検査だけなら数千円で済みます。
Q4. 未避妊のメス犬の血は生理(発情出血)と区別できますか?
見た目だけでの区別は困難です。発情出血は陰部から直接出るもので、通常は2〜3週間かけて赤色から薄い粘液へ変化します。一方、膀胱炎の血尿は排尿時のみ混ざります。判断のポイントは「排尿していないときも血が垂れるか」ですが、発情期は子宮蓄膿症のリスクも高まる時期です。出血が3週間以上続く、量が急に増えた、水をよく飲む、といった変化があれば受診してください。
Q5. 尿の量が正常かどうか、自宅で正確に測れますか?
ペットシーツの重さで概算できます。使用前のシーツをキッチンスケールで計量し、排尿後にもう一度計量します。差分のグラム数がほぼそのままmL数です(尿の比重は水に近いため)。1日分を合計し、体重で割ってください。1kgあたり50mLを超えるなら多尿の疑いがあります。
Q6. 尿検査ではどんなことがわかりますか?
尿比重(腎機能)、pH(結石のできやすさ)、潜血、タンパク、糖、ビリルビン、そして顕微鏡での細菌・結晶・細胞の確認ができます。血液検査に異常が出る前の慢性腎臓病や、無症状の膀胱炎を拾えるのが強みです。所要時間は15〜30分程度で、その場で結果が出る項目がほとんどです。
まとめ
- 正常な尿は薄い黄色〜麦わら色。1日の尿量は体重1kgあたり25〜45mLが目安
- 赤・ピンクは血尿。膀胱炎・尿石症が二大原因で、当日〜翌日に受診
- コーラ色・醤油色は血色素尿の疑い。玉ねぎ中毒やIMHAなど命に関わるため今すぐ救急へ
- 濃い黄色は夏に最多。まず給水し、24時間で戻らなければ受診
- 透明すぎる尿+多飲は腎臓病・糖尿病のサイン。3日続けば受診
- 尿が出ない状態は色の異常より緊急。24時間で命に関わる
- ペットシーツは裏返して防水面を上にすると正しい色が見える
尿の色は、愛犬が言葉にできない体調を毎日教えてくれるサインです。トイレ掃除のついでに5秒だけ色を見る習慣が、病気の早期発見につながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。
