犬の膵炎の主な症状は「繰り返す嘔吐」「ぐったりして動かない」「お尻だけを上げる祈りのポーズ」の3つです。1つでも当てはまれば、様子見せず当日中に動物病院を受診してください。
急性膵炎は、膵臓の消化酵素が膵臓自身を溶かしてしまう「自己消化」が起きる病気です。進行すると全身の炎症から多臓器不全に至り、命に関わります。ある後ろ向きコホート研究では、膵炎と診断された犬全体の死亡率は39.7%、急性腎障害を併発した犬では70.6%と報告されています。
一方で、初期は「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」だけのこともあり、見逃されやすい病気でもあります。この記事では、急性と慢性それぞれの症状の違い、緊急度の判断基準、動物病院での検査と治療、そして再発を防ぐ食事管理の具体的な数値まで解説します。

今すぐ確認|すぐに動物病院へ電話すべきサイン
- 半日以内に3回以上吐いている
- 水を飲んでもすぐ吐く/水も飲めない
- 呼びかけへの反応が鈍い、立ち上がれない
- 前足を伸ばしお尻を上げる姿勢(祈りのポーズ)をとる
- お腹を触ると「キャン」と鳴く、抱っこを嫌がる
- 歯ぐきが白い、または紫がかっている
犬の膵炎とは|膵臓が自分自身を消化してしまう病気
膵臓は、たんぱく質や脂肪を分解する消化酵素と、血糖値を調整するインスリンを分泌する臓器です。この膵臓に炎症が起きた状態を膵炎と呼びます。
通常、消化酵素は腸に届いてから活性化します。ところが膵臓がダメージを受けると、酵素のひとつであるトリプシンが膵臓の中で活性化してしまいます。これが連鎖的に他の酵素も活性化させ、膵臓が自分自身を消化する「自己消化」が始まります。
さらに炎症性サイトカイン(TNF、インターロイキンなど)が大量に放出されると、いわゆるサイトカインストームが起こります。炎症が全身へ広がり、腎臓・肝臓・凝固系にまで障害が及ぶことがあります。これが膵炎が「命に関わる」といわれる理由です。
急性膵炎と慢性膵炎の違い
| 急性膵炎 | 慢性膵炎 | |
|---|---|---|
| 発症の仕方 | 数時間〜1日で急激に | 数週間〜数年かけて徐々に |
| 主な症状 | 激しい嘔吐・強い腹痛・虚脱 | ときどき吐く・軟便・体重減少 |
| 緊急度 | 非常に高い(当日受診) | 中(数日以内に受診) |
| 膵臓の変化 | 回復すれば元に戻りうる | 線維化し不可逆的に進行 |
| 将来のリスク | 多臓器不全・死亡 | 糖尿病・膵外分泌不全 |
注意したいのは、この2つがはっきり分かれるわけではない点です。ヒトと犬の病理組織検査の研究では、急性膵炎とされた症例の最大40%が、実際には慢性膵炎の急性増悪だったことが明らかになっています(Hess ら, 1998 ほか/Purina Institute まとめ)。
つまり「初めての激しい発作」に見えても、その裏で何か月も静かに炎症が続いていた可能性があるということです。一度膵炎を起こした犬に生涯の食事管理が推奨されるのは、このためです。
犬の膵炎の症状一覧|急性・慢性別の見分け方
急性膵炎でよく見られる症状
- 繰り返す激しい嘔吐:膵炎でもっとも多い症状。胃液や黄色い泡だけを吐くこともある
- 食欲廃絶:好きなおやつにも見向きもしない
- 元気消失・虚脱:横たわったまま動かない、呼んでも顔を上げない
- 腹痛:お腹に触れると嫌がる、抱き上げると鳴く、背中を丸める
- 祈りのポーズ:胸を床につけ、お尻だけを高く上げる姿勢
- 下痢・軟便:血が混じることもある
- 発熱:犬の平熱は38.0〜39.0℃(環境省ガイドライン)。39.5℃以上は発熱を疑う
- 脱水:首の皮をつまんでも戻りが遅い、歯ぐきが乾いてベタつく
慢性膵炎でよく見られる症状
- 月に数回、理由なく吐く日がある
- 下痢と正常便を繰り返す、便がゆるい日が多い
- 食べているのに体重が少しずつ減る
- 脂っこいものを食べた翌日に必ず体調を崩す
- なんとなく元気がない日が周期的にある
慢性膵炎は「うちの子は昔からお腹が弱くて」で片づけられがちです。しかし炎症が続くと膵臓の細胞が壊れ、インスリンを出せなくなって糖尿病に、消化酵素を出せなくなって膵外分泌不全(EPI)に進むことがあります。月1回以上の嘔吐や軟便が3か月以上続くなら、一度きちんと検査を受ける価値があります。
「祈りのポーズ」は強い腹痛のサイン
祈りのポーズ(英語で prayer position)とは、前足を前方に伸ばして胸を床につけ、腰だけを高く上げる姿勢です。遊びに誘うときのプレイバウとよく似ていますが、決定的な違いがあります。
| 比較点 | プレイバウ(遊びの誘い) | 祈りのポーズ(腹痛) |
|---|---|---|
| しっぽ | 大きく振る | 下げる、動かない |
| 表情 | 口角が上がり明るい | 目を細める、うつろ |
| 持続時間 | 数秒で解除 | 数十秒〜数分続く |
| 頻度 | 1回きり | 何度も繰り返す |
| その後 | 走り出す | そのまま伏せる/動かない |
この姿勢は、上腹部を伸ばして膵臓周辺の圧迫を減らそうとする本能的な行動と考えられています。膵炎に限らず、腸閉塞や胃拡張捻転など緊急疾患でも見られます。遊びに誘っていないのにこの姿勢を繰り返すなら、腹部の緊急疾患を疑って受診してください。
なお、嘔吐そのものの見分け方は犬が嘔吐を繰り返す|何度も吐く原因と今すぐ受診すべき危険サインで詳しく解説しています。下痢が主症状のときは犬の下痢の原因と対処法もあわせてご確認ください。

犬が膵炎になる原因とリスク要因
1. 高脂肪食の急な摂取
もっとも多い引き金が、普段食べ慣れない脂っこい食べ物を一度に摂ることです。揚げ物、バラ肉、生クリーム、バター、人間のお菓子などが典型例です。お盆や年末年始など、家族が集まって人の食事をおすそ分けしやすい時期に急性膵炎の発症が増えます。
どのくらいの量が「多すぎる」のか、数値で見てみましょう。環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、犬の1日必要カロリーを132×体重(kg)の0.75乗で算出しています。
| 体重 | 1日の必要カロリー | 間食の上限(20%以内) | 豚バラ肉に換算すると |
|---|---|---|---|
| 3kg | 約300kcal | 約60kcal | 約16g |
| 5kg | 約441kcal | 約88kcal | 約24g |
| 10kg | 約742kcal | 約148kcal | 約40g |
| 20kg | 約1,248kcal | 約250kcal | 約68g |
| 30kg | 約1,692kcal | 約338kcal | 約92g |
※豚バラ肉(脂身つき・生)は100gあたり約366kcal・脂質約35.4g(日本食品標準成分表2020年版)で計算
体重10kgの犬が豚バラ肉を50g食べると、約183kcal・脂質約18gを摂ることになります。環境省が示す間食の上限(1日の必要カロリーの20%以内)を超えるうえ、後述する低脂肪食の1日分の脂質量にほぼ匹敵します。「ひと切れくらい」が想像以上の負荷になることがわかります。
2. 肥満・高脂血症
血中の中性脂肪(トリグリセリド)が高い状態は、膵炎の明確なリスク因子です。肥満はそれ自体が高脂血症を招きます。環境省のボディコンディションスコア(BCS)で、肋骨が触れないBCS4〜5の犬は減量対象です。
3. 内分泌疾患・基礎疾患
糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症、高リポタンパク血症を持つ犬は膵炎のリスクが高まります。すでに消化器疾患の病歴がある犬、外科手術を受けた直後の犬も注意が必要です。
4. 腐敗した食べ物・誤食
生ゴミあさりや、夏場に出しっぱなしにしたウェットフードの摂取も引き金になります。環境省ガイドラインでは、ウェットフードや手作り食の給与時間は20分程度が目安とされています。誤食全般の対応は犬の誤飲・誤食の対処法|危険物一覧と受診の目安を参考にしてください。
5. 好発犬種
膵炎になりやすい犬種として、ミニチュア・シュナウザーが最多と報告されています。シュナウザーは遺伝的に高脂血症を起こしやすい体質が知られています。次いでトイプードル、ヨークシャー・テリア、コッカー・スパニエル、ミニチュア・ダックスフンドが挙げられます。全体として小型犬・中〜高齢犬に多い傾向があります。
6. 特発性(原因不明)
実際の臨床では、明確な原因を特定できない特発性膵炎が少なくありません。「うちは何も変わったものを与えていない」場合でも膵炎は起こりえます。原因が分からないからといって、受診を遅らせないでください。

受診の目安|いつ動物病院へ行くべきか
環境省のガイドラインでも、「数日間にわたって嘔吐をくりかえす」「お腹が膨れていて、触ると痛がる」は獣医師に診てもらうべきサインとして明記されています。
膵炎は「一晩様子を見てから」が命取りになりうる病気です。特に急性膵炎では、早期に静脈輸液を開始できるかどうかが、浮腫性膵炎から壊死性膵炎への進行を防げるかを左右します。迷ったら電話だけでもかけてください。
受診前に自宅でしてはいけないこと
- 市販の胃腸薬や人間用の薬を飲ませる:診断を妨げ、悪化させる可能性があります
- 無理に食べさせる・飲ませる:嘔吐を誘発し、誤嚥性肺炎のリスクがあります
- 自己判断で吐かせる:膵炎では逆効果です
- 脂っこいものでも食べれば安心と与える:症状を悪化させます
受診時に伝えるとよい5項目
- 嘔吐の回数と時刻、吐いたものの色・内容(スマホ撮影が有効)
- 最後に食べたもの・時刻と、普段と違うものを食べていないか
- 最後に排便した時刻と便の状態
- 飲水量の変化
- 現在飲んでいる薬・サプリメント
動物病院での検査と診断
膵炎は「この検査だけで確定する」という単独の検査が存在しません。臨床症状・血液検査・画像検査を組み合わせて総合的に診断します。
| 検査 | わかること | 膵炎での検出率・特徴 |
|---|---|---|
| 一般血液検査 | 好中球増多、貧血、血小板減少、腎・肝数値、ビリルビン | 重症度の把握に必須 |
| 膵特異的リパーゼ(Spec cPL) | 膵臓の腺房細胞の障害 | 膵炎に最も特異的。正常なら膵炎でない可能性が高い |
| 腹部超音波(エコー) | 膵臓の腫大、周囲の液体貯留、胆管閉塞 | 検出率 約68% |
| X線検査 | 膵臓周囲の陰影、他疾患の除外 | 検出率 約25% |
| 尿検査 | 顆粒円柱=腎尿細管障害の示唆 | 全身への波及を評価 |
X線の検出率が約25%と低いのは、膵臓がガスの多い腸に囲まれており写りにくいためです。それでも、腸閉塞や異物といった「症状が似ていて緊急性の高い他の病気」を除外する目的で撮影されます。
Spec cPLについては注意点があります。膵炎がない犬でも数値が上がることがあるため、この検査だけで確定診断はできません。逆に数値が正常であれば膵炎ではない可能性が非常に高く、除外診断としての価値が高い検査です。
犬の膵炎の治療法
急性膵炎の治療(多くは入院)
- 静脈輸液:治療の中心。膵臓の微小循環を維持し、浮腫性膵炎から壊死性膵炎への移行を防ぐ効果が示されています
- 鎮痛:明らかに痛がっていない犬も含め、全例に鎮痛を行うことが推奨されています。オピオイド、ケタミン、リドカインなどを使用。痛みを抑えると嘔吐も減ることがあります
- 制吐薬:マロピタントが第一選択。制吐作用に加え、消化管運動を抑えない・内臓痛への鎮痛作用を持つ点が膵炎に適します
- 抗生剤:軽症例では不要。敗血症、感染性腹膜炎の併発、重症例の予防的使用に限定されます
- 電解質補正・制酸剤:ストレス性胃潰瘍を伴う場合に使用
「絶食」は過去の常識になりました
かつては「膵臓を休ませるため絶飲絶食」が標準でした。しかし現在、この方針は否定されています。食事で嘔吐や痛みが誘発される場合を除き、早期に食事を再開したほうが回復が速いことが分かっています。
自力で食べられない場合は、一時的に食道チューブを設置して経腸栄養を行います。血管から栄養を入れる静脈栄養は合併症リスクが高く、推奨されません。自力採食できる場合は、低脂肪食を少量ずつ頻回に与えます。
もし通っている病院で「とにかく3日絶食」と言われたら、「早期経腸栄養は難しい状態でしょうか」と確認してみてください。個体の状態によって判断は変わりますが、根拠を共有できる関係が大切です。
慢性膵炎の治療(長期コントロール)
慢性膵炎は「治す」より「悪化させない」ことが目標です。低脂肪・高消化性の療法食への切り替えを軸に、必要に応じて制吐薬、胃腸薬、鎮痛薬を組み合わせます。
膵炎の既往がある犬は、症状が落ち着いた後も1〜3か月ごとに血液検査・膵リパーゼ検査・体重測定を行い、再燃を早期に捉えることが推奨されます。

再発を防ぐ食事管理|低脂肪食の具体的な数値基準
「低脂肪フードを」と言われても、どのくらいが低脂肪なのか判断に迷います。Purina Institute がまとめた栄養管理の指針では、犬の状態別に次の数値が示されています。
| 犬の状態 | 推奨される脂肪量 | 代謝エネルギー換算 |
|---|---|---|
| 高トリグリセリド血症がある | 超低脂肪食:乾物量で10%以下 | 2〜3 g/100kcal ME |
| 膵炎から回復・高脂血症なし | 低脂肪食:乾物量で15%以下 | 3.5 g/100kcal ME 未満 |
| 脂肪不耐の徴候がない | 中程度脂肪の高消化性食も可 | 4〜6 g/100kcal ME |
体重10kgの犬(1日約742kcal)に「3 g/100kcal ME」の食事を与える場合、1日の脂質量は約22gです。前述のとおり豚バラ肉50gだけで脂質約18gですから、おすそ分け1回で1日分の枠をほぼ使い切ってしまう計算になります。
フードのパッケージ表示から脂肪量を読み取る方法
市販フードの成分表示は「粗脂肪○%以上」という現物ベースの表記です。乾物量に直すには、水分を除いて計算します。
乾物量ベースの脂肪%の求め方
乾物量の脂肪% = 粗脂肪% ÷(100 − 水分%)× 100
例:粗脂肪8%・水分10%のドライフード → 8 ÷ 90 × 100 = 約8.9%(超低脂肪の基準10%以下に該当)
ウェットフードは水分が約75%あるため、見かけの粗脂肪が3%でも乾物量では12%になります。ドライとウェットを同じ数字で比べないよう注意してください。
脂肪ゼロを目指してはいけない理由
脂肪を極端に減らせばよいわけではありません。食事中の脂肪はリノール酸などの必須脂肪酸を供給し、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収にも必要です。無脂肪食は適切ではないと明記されています。手作り食で対応しようとせず、獣医師が指示した療法食を使うのが安全です。
フードを切り替えるときは、1週間ほどかけて少しずつ新しいフードの割合を増やします。急な変更は嘔吐や下痢の原因になります。手順は老犬のごはん完全ガイドや犬の1日の食事量と回数|体重・年齢別の目安と計算方法もあわせてご覧ください。
今日からできる膵炎の予防
- 人の食べ物を与えない:特に揚げ物・バラ肉・生クリーム・バター・チーズ。家族全員でルールを共有します
- おやつは1日の必要カロリーの20%以内:環境省ガイドラインの基準。与えた分は主食を減らします
- 適正体重を維持する:BCS3(肋骨が触れて、上から見て腰のくびれがある)が目標
- フードを出しっぱなしにしない:ウェットフードの給与時間は20分が目安
- ゴミ箱にフタをする:拾い食い・ゴミあさりは高脂肪食の摂取源です
- 中高齢犬は年1〜2回の健康診断:高脂血症や内分泌疾患を早期に見つけます
与えてよい食材・避けるべき食材の全体像は犬が食べてはいけないもの完全一覧にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 犬の膵炎は自然に治りますか?
ごく軽症例が自然に軽快することはありますが、飼い主が「軽症かどうか」を見分ける方法はありません。膵炎の死亡率は研究により全体で約39.7%と報告されており、急性腎障害を併発すると70.6%まで上がります。嘔吐やぐったりがある状態での様子見は危険です。逆に、早期に輸液と鎮痛を開始できた症例の多くは数日で回復に向かいます。
Q2. 入院はどのくらいの期間になりますか?
軽症〜中等症の急性膵炎では、静脈輸液と鎮痛のために2〜5日程度の入院が一般的です。重症例では集中管理や酸素管理が必要となり、1週間以上に及ぶこともあります。退院の目安は「自力で低脂肪食を食べ、吐かずに維持できること」です。期間と費用は病院ごとに差があるため、初診時に見積もりを確認しておくと安心です。
Q3. 一度膵炎になったら再発しますか?
再発しやすい病気です。急性膵炎とされた症例の最大40%が実は慢性膵炎の急性増悪だったという報告があり、初回発作の時点で膵臓に慢性変化が生じている可能性があります。そのため、回復後も生涯にわたる低脂肪食の維持と、1〜3か月ごとの血液検査・体重確認が推奨されます。
Q4. 血液検査の膵臓の数値が高いと言われました。すぐ治療が必要ですか?
数値だけでは判断できません。Spec cPLは膵炎がない犬でも上昇することがあるため、症状・超音波検査・全身状態と合わせて判断します。症状がまったくない状態で偶発的に見つかった場合は、食事の見直しと定期的な再検査で経過を追うこともあります。一方で嘔吐や腹痛を伴う場合は、数値の高低にかかわらず治療が必要です。
Q5. 膵炎になりやすい犬種はありますか?
ミニチュア・シュナウザーが最も多いと報告されています。遺伝的に高トリグリセリド血症を起こしやすい体質が背景にあります。次いでトイプードル、ヨークシャー・テリア、コッカー・スパニエル、ミニチュア・ダックスフンドが挙げられます。これらの犬種では、健康診断で中性脂肪値もあわせて確認しておくと予防につながります。
Q6. 膵炎の犬に手作りごはんを与えてもいいですか?
推奨されません。膵炎の食事管理では脂質を「乾物量で10〜15%以下」という精度で制御する必要があり、家庭での計算は困難です。加えて、脂肪を減らしすぎると必須脂肪酸や脂溶性ビタミンが不足します。どうしても療法食を食べない場合は、獣医師に相談してトッピングの可否や別ブランドの療法食を検討してください。
まとめ
- 膵炎の3大サインは「繰り返す嘔吐」「ぐったり」「祈りのポーズ」。1つでもあれば当日受診
- 急性膵炎は膵臓の自己消化が起こる緊急疾患。全体の死亡率は約39.7%、急性腎障害併発で70.6%
- 診断は臨床症状+血液検査+画像を総合。超音波の検出率は約68%、X線は約25%
- 治療の中心は静脈輸液と鎮痛。鎮痛は痛がっていなくても全例で推奨される
- 「絶食」は現在否定され、早期の食事再開が回復を早める
- 再発予防は低脂肪食が要。乾物量で10〜15%以下(2〜3.5 g/100kcal ME)が目安
- おやつは1日の必要カロリーの20%以内(環境省ガイドライン)
膵炎は、日々の食事管理で発症リスクを確実に下げられる病気です。同時に、いざ発症したときの数時間の判断が予後を分ける病気でもあります。「様子を見る」のではなく「電話して聞く」を選んでください。
参考にした情報源
- 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」(環境省自然環境局総務課動物愛護管理室)
- Purina Institute「治療的栄養学:犬の慢性膵炎の栄養管理アプローチ」(Xenoulis ら 2008、Davenport ら 2010、Hess ら 1998 ほかを引用)
- 夕やけの丘動物病院(獣医師 嶋崎貴匡/酪農学園大学出身・JAHA総合臨床認定医)「急性膵炎」解説
- 犬の膵炎における生存アウトカムと予後指標に関する後ろ向きコホート研究(急性腎障害・併発疾患)
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。
