犬の外耳炎|梅雨・夏に増える原因と症状・自宅ケアと受診の目安【獣医学情報】

耳をこちらに向ける犬(外耳炎の解説イメージ)

結論:耳をかゆがる・におい・黒い耳垢は外耳炎のサイン

愛犬が耳をかゆがり、においや黒い耳垢があれば外耳炎の可能性が高い病気です。梅雨〜夏は高温多湿で急増します。1〜2日で改善しない、痛がる、頭を強く振る場合は早めに受診してください。

「最近よく耳をかいている」「抱っこすると耳が少し臭う」。そんな変化は外耳炎の入り口かもしれません。外耳炎は犬にとても多い耳の病気です。とくに梅雨から夏にかけて増えます。

ペット保険大手アニコム損保の「家庭どうぶつ白書」では、犬の保険金請求理由のうち外耳炎が上位を占めています。それだけ身近な病気です。本記事では原因タイプ別の見分け方、症状、自宅ケア、受診の目安、予防までを獣医学情報をもとに整理します。

目次

外耳炎とは?梅雨・夏に増える理由

外耳炎とは、耳の入口から鼓膜までの「外耳道」に起こる炎症です。犬の耳は人と構造が違います。入口から下へ伸びたあと、奥で水平に曲がる「L字型」になっています。

このL字構造は通気性が悪い形です。湿気がこもりやすく、菌が増えやすい環境になります。だから犬はもともと外耳炎になりやすい動物だといわれます。

梅雨〜夏に増えるのには理由があります。マラセチアという常在菌は高温多湿で増えやすい性質です。皮膚や外耳道にもともといる菌が、湿度の上昇で一気に増えます。シャンプーや水遊びで耳に水が残ると、さらに悪化しやすくなります。

同じ時期は皮膚トラブルも増えます。あわせて犬の梅雨の皮膚トラブル(膿皮症・マラセチア)の記事も確認しておくと安心です。

原因タイプ別の見分け方(マラセチア・細菌・耳ダニ・アレルギー)

外耳炎の原因はひとつではありません。耳垢の色やにおいで、ある程度あたりをつけられます。下の表で代表的な4タイプを整理しました。

原因タイプ耳垢の特徴におい見分けのヒント
マラセチア(真菌)茶色〜黒っぽくベタつく甘い発酵臭・独特の異臭高温多湿期に悪化。脂性肌・垂れ耳に多い
細菌感染黄色〜クリーム色で膿っぽい強い腐敗臭赤み・腫れ・痛みが出やすい。二次感染で起こる
耳ダニ黒く乾いたカサカサの耳垢強くないことも激しいかゆみと頭振り。子犬・多頭飼いに多い
アレルギーさらさら〜やや増える軽いことが多い体の他の部位もかゆがる。繰り返しやすい

マラセチアは健康な犬の耳にもいる常在菌です。アトピーや食事アレルギー、脂漏症などがあると過剰に増えます。茶色〜黒い耳垢と独特のにおいが特徴です。

耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は約0.3mmの小さなダニです。黒く乾いた耳垢が大量に出ます。かゆみがとても強く、犬同士でうつります。多頭飼いでは1頭でも見つかれば全頭の確認が必要です。

注意したいのは、複数の原因が重なるケースです。マラセチアと細菌が同時に増えることもあります。自己判断が難しい理由はここにあります。最終的な原因は動物病院の耳垢検査で確認します。

症状チェック|かゆがる・におい・赤み・耳垢の色

外耳炎は進むほど症状が重くなります。早く気づくほどケアが楽になります。次のサインがないか毎日チェックしましょう。

  • 後ろ足で耳をかく、頭を床にこすりつける
  • 頭をぶんぶん振る、首をかしげる
  • 耳を触ると嫌がる、痛がる、怒る
  • 耳の入口が赤い、腫れている
  • 茶色・黒・黄色のベタついた耳垢が増える
  • 抱っこすると耳が臭う、耳だれ(みみだれ)が出る
  • 名前を呼んでも反応が鈍い(聞こえにくい)

正常な耳垢は少量で、強いにおいがありません。両耳に少しある程度です。一方、片耳だけ大量、黒や濃い茶色、ドロドロは病的なサインです。

においが気になるときは、犬の耳が臭いときに考えられる病気の記事もあわせてご覧ください。

外耳炎になりやすい犬種・体質

どの犬種でも外耳炎になります。ただ、なりやすい特徴があります。当てはまる犬はとくに注意しましょう。

  • 垂れ耳の犬種(コッカー・スパニエル、ゴールデン、キャバリア、ダックスフンドなど)
  • 耳の中の毛が多い犬種(プードル、シー・ズーなど)
  • 脂性肌・脂漏症になりやすい犬種(フレンチ・ブルドッグ、パグ、ラブラドールなど)
  • アレルギー・アトピー体質の犬
  • 柴犬などアレルギー性皮膚炎が多い犬種

垂れ耳は耳の中に空気が通りにくい形です。湿気と熱がこもり、菌が増えやすくなります。だから垂れ耳の犬は外耳炎を繰り返しやすいのです。

自宅ケアの基本|やってよい掃除・やってはいけない掃除

犬の耳をやさしくケアする飼い主

耳掃除は「やりすぎない」ことが大切です。耳垢は基本的に自然に外へ出ます。汚れが少なければ、無理に掃除する必要はありません。間違ったケアはかえって外耳炎を招きます。

やってよいケア

  • 耳の外側(耳介)を、犬用イヤークリーナーを含ませたコットンでやさしく拭く
  • 掃除は月1回程度を目安にし、汚れが少なければ無理にしない
  • シャンプーや水遊びのあとは、耳の入口の水気をやさしく拭き取る
  • 毎日、耳のにおいと耳垢の色をチェックする

やってはいけないケア

  • 綿棒を耳の奥に差し込む(耳垢を奥へ押し込み、鼓膜を傷つける恐れ)
  • ゴシゴシ強くこする
  • 炎症や赤みがあるのに市販クリーナーを使う(悪化する恐れ)
  • 毎日のように頻繁に掃除する
  • 耳の中の毛を自己判断で抜く

奥の耳垢は綿棒ではうまく取れません。逆に押し込んでしまいます。すでに炎症がある場合は、自宅ケアより受診を優先してください。

これは病院へ|受診の目安

外耳炎は命に関わる病気ではありません。ただ、放置すると悪化します。慢性化すると治療が難しくなります。次のサインがあれば早めに受診しましょう。

  • セルフケアをしても1〜2日で改善しない
  • 頭を強く振る、首を傾けたままにする
  • 耳を触ると強く痛がる、怒る
  • 黒や黄色のドロドロした耳垢、強い悪臭
  • 耳の赤み・腫れ・耳だれが続く
  • 同じ症状を何度も繰り返す
  • 呼んでも反応が鈍く、聞こえにくそう

放置した外耳炎は、奥の中耳炎や内耳炎に進むことがあります。慢性化すると外耳道が硬く狭くなり、手術が必要になる場合もあります。早期発見・早期治療がいちばんの近道です。

動物病院では耳鏡で耳の中を診ます。耳垢検査で原因菌やダニを調べます。原因に合わせて耳の洗浄、点耳薬、内服薬で治療します。治療にかかる期間の目安は犬の外耳炎はどれくらいで治る?の記事で詳しく解説しています。

動物病院での検査と治療の流れ

受診すると、まず耳鏡で耳の中を観察します。次に耳垢を採り、顕微鏡で原因を調べます。マラセチアか、細菌か、耳ダニかをここで見分けます。重い細菌感染では培養検査を追加することもあります。

奥まで炎症が進んでいるときは、レントゲンや耳道カメラを使う場合もあります。何度も繰り返す外耳炎では、アレルギーなど基礎疾患の検査も行います。

治療はまず耳の洗浄から始めます。汚れた状態では薬が届きにくいためです。そのうえで原因に合った薬を使います。マラセチアには抗真菌薬、細菌には抗菌薬、耳ダニには駆除薬が中心です。かゆみが強ければ抗炎症剤を併用します。

大切なのは、自己判断で薬をやめないことです。途中でやめると再発しやすくなります。症状が落ち着いても、獣医師の指示どおり最後まで続けましょう。慢性化や耳道が狭くなった重症例では、手術を検討することもあります。

予防|耳の乾燥・シャンプー後のケア・湿度管理

外耳炎は一度なると再発しやすい病気です。だから日々の予防が重要です。ポイントは「耳を乾いた清潔な状態に保つ」ことです。

  • シャンプーや水遊びのあとは、耳の入口の水分を必ず拭き取る
  • 梅雨〜夏は室内の湿度を下げる(除湿・エアコンを活用)
  • 垂れ耳の犬は、ときどき耳をめくって風を通す
  • 毎日においと耳垢をチェックし、変化に早く気づく
  • アレルギーなど基礎疾患があれば、その治療を続ける
  • 体質に合った頻度・種類のシャンプーで皮膚を清潔に保つ

シャンプー選びに迷ったら、犬のシャンプーおすすめの選び方の記事が参考になります。皮膚タイプに合うものを選ぶと、外耳炎の予防にもつながります。

よくある質問(FAQ)

犬の外耳炎は自然に治りますか?

軽い炎症でも自然治癒は期待しにくいです。原因の菌やダニが増えると悪化します。早めに受診したほうが、結果的に短期間で治ります。

市販の点耳薬やクリーナーで治せますか?

原因の特定が先です。炎症があるときに市販品を使うと悪化することがあります。自己判断は避け、まず動物病院で原因を調べましょう。

外耳炎は他の犬や人にうつりますか?

マラセチアや細菌は基本的にうつりません。常在菌が増えて起こるためです。ただし耳ダニは犬同士でうつります。多頭飼いでは全頭の確認が必要です。

耳掃除はどのくらいの頻度がよいですか?

汚れが少なければ月1回程度で十分です。耳垢は自然に排出されます。やりすぎは逆に耳を傷つけ、外耳炎の原因になります。

なぜ梅雨や夏に外耳炎が増えるのですか?

マラセチアなどの菌は高温多湿で増えやすいからです。耳の中も蒸れやすくなります。水遊びやシャンプー後の湿りも引き金になります。

外耳炎の治療費はどのくらいかかりますか?

軽症なら耳掃除と点耳薬で数週間が目安です。慢性化や基礎疾患があると長引きます。費用は症状や検査の内容で変わるため、診察時に確認しましょう。

まとめ

外耳炎は犬にとても多く、梅雨〜夏に増える病気です。耳をかゆがる、におい、黒い耳垢が代表的なサインです。原因はマラセチア・細菌・耳ダニ・アレルギーなどさまざまです。

自宅ケアは「やりすぎない」が基本です。月1回程度のやさしいケアと、毎日のチェックを続けましょう。1〜2日で治らない、痛がる、頭を強く振るときは早めに受診してください。早期発見が再発を防ぐいちばんの方法です。

参考・出典

  • アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書」(犬の保険金請求疾患の統計)
  • アニコム損害保険「みんなのどうぶつ病気大百科」マラセチア皮膚炎・外耳炎
  • 獣医師監修による犬の外耳炎の原因・治療・予防に関する解説

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

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