犬が足を引きずる原因|前足・後ろ足別の見分け方と受診目安【獣医学情報】

草原に立つ犬(犬が足を引きずる原因の解説記事)

両方の後ろ足を引きずる・立てない・排尿できない場合は、様子見せず今すぐ動物病院へ。椎間板ヘルニアなど神経の緊急疾患の可能性があり、治療の遅れが麻痺を残すことがあります。片足を軽くかばう程度なら、まず本記事のセルフチェックで原因を絞り込みましょう。

犬が足を引きずる原因は、肉球のケガから椎間板ヘルニアまで幅広くあります。ポイントは「前足か後ろ足か」「急に始まったか徐々にか」の2軸です。この記事では、飼い主さんが自宅で確認すべき順序と受診の目安を整理します。

目次

まず確認|今すぐ病院へ行くべき危険サイン

次のサインが1つでもあれば、緊急性が高い状態です。夜間でも救急対応の動物病院に連絡してください。

後ろ足を両方引きずる・立てない・排尿できない(緊急)

両後ろ足の麻痺は、脊髄が圧迫されているサインです。代表例が椎間板ヘルニアの重症型(グレード4〜5)です。自力で排尿できない状態は膀胱麻痺を伴っている恐れがあります。重度の脊髄圧迫は、発症からの時間が回復率を左右します。「一晩様子を見る」が最も危険な選択です。

明らかな変形・激しい鳴き・患部が熱い

足が不自然な方向に曲がっている場合は骨折や脱臼が疑われます。触ろうとすると激しく鳴く、患部が腫れて熱いのも同様です。骨折部位には内出血による赤紫色の変色が出ることもあります。無理に触らず、キャリーやタオルで安静を保って搬送してください。

自宅でできるセルフチェック5ステップ

緊急サインがなければ、体の末端から順に確認します。犬が嫌がったら中断し、無理に触らないでください。痛みで咬んでしまう事故を防ぐためです。

  1. 肉球:切り傷・水ぶくれ・赤み・異物(ガラス片・小石・とげ)がないか。夏はやけどの水ぶくれに注意。
  2. :折れ・根元のぐらつき・出血・伸びすぎによる巻き爪がないか。狼爪(内側の爪)は見落としやすい部位です。
  3. 指の間:赤み・腫れ・湿り・脱毛がないか。しきりに舐めるなら指間炎の可能性もあります。
  4. 関節:膝・肘・股関節に腫れや熱感がないか。左右の足を見比べると分かりやすいです。
  5. 背中:背骨に沿って軽く触れ、ビクッとする・キャンと鳴く箇所がないか。抱っこを嫌がるのもヘルニアのサインです。

1〜3で異物や小さな傷が見つかれば、足先のトラブルが有力です。4〜5で反応があれば、関節や脊椎の疾患を疑って受診しましょう。

前足を引きずるときに多い原因

肉球のやけど・切創/爪の折れ/指間炎

前足の跛行で最も多いのは足先のトラブルです。散歩中にガラス片や木の枝を踏む、伸びた爪が割れるなどが典型例です。夏はアスファルトによる肉球やけどが急増します。詳しい応急処置は犬の肉球やけどに注意|夏のアスファルト対策と応急処置で解説しています。

足先を頻繁に舐めていて赤みがあるなら、指間炎の可能性もあります。「舐める」が主症状の場合は犬の指間炎とは?足を舐める原因・症状・自宅ケアを参照してください。本記事は「歩き方の異常」に絞って解説します。

肘関節疾患・骨折・打撲

ソファやベッドからの着地失敗は、前足の骨折・打撲の主な原因です。特にトイプードルやイタリアングレーハウンドなど細い前腕の犬種は要注意です。大型犬の子犬では、肘関節形成不全など発育期の関節疾患も見られます。成長期に前足が歪んできた場合は、成長板の損傷(成長板早期閉鎖)の恐れもあります。

後ろ足を引きずるときに多い原因

膝蓋骨脱臼(パテラ)|小型犬に最多

膝のお皿(膝蓋骨)が正常な溝から内側にずれる病気です。チワワ・トイプードル・ポメラニアンなど小型犬に多発します。特徴は「スキップのように時々ケンケンする」「数歩だけ足を上げてまた普通に歩く」という間欠的な跛行です。軽度なら無症状のことも多い一方、進行すると常に足を挙げたままになります。

前十字靭帯損傷|急に「キャン」と鳴いた後から

膝の中の靭帯が切れるケガです。運動中に「キャン」と鳴き、直後から足を着けなくなるのが典型経過です。獣医師監修の解説では、階段を駆け上がる程度の軽い動作でも切れることがあるとされます。落ち着くと引きずりながら歩くため「治った」と誤解されやすい病気です。放置すると半月板損傷や関節炎が進むため、早期の診断が重要です。

椎間板ヘルニア|ダックス・コーギーは特に注意

背骨のクッションが飛び出し脊髄を圧迫する病気です。ミニチュアダックスフンド・コーギー・ペキニーズなどが好発犬種です。初期は「抱っこを嫌がる」「段差を避ける」程度の痛みサインだけのこともあります。進行すると後ろ足のふらつき、ナックリング(足先を裏返して歩く)、麻痺へ進みます。好発犬種の予防的な暮らし方はミニチュアダックスフンドの飼い方|ヘルニア予防の暮らし方で詳しく解説しています。

股関節形成不全|大型犬の若齢期から

股関節のかみ合わせが悪く、緩みや関節炎が進む病気です。レトリーバー種など大型犬に多く見られます。「うさぎ跳びのように両後ろ足で走る」「腰を左右に振って歩く」が特徴的なサインです。生後4〜12か月の成長期に気づかれることが多い病気です。

急性か慢性か|発症の速さで原因を絞り込む

「いつから」は診断の重要な手がかりです。次の表で自分のケースを当てはめてみてください。

発症パターン疑われる主な原因受診の目安
さっきまで普通→突然引きずる足先のケガ、骨折、前十字靭帯損傷、ヘルニア急性発症当日〜翌日
時々ケンケン、すぐ戻る膝蓋骨脱臼、軽度の関節炎1週間以内に一度受診
数週間かけて徐々に悪化変形性関節症、股関節形成不全、腫瘍早めに予約受診
日によって引きずる足が変わる免疫介在性多発性関節炎など早めに受診(診断が難しい)

大型犬で徐々に悪化する跛行は、骨肉腫(骨の腫瘍)の注意も必要です。獣医学の報告では、骨肉腫の90%以上が体重20kg以上の犬で発生するとされます。7歳前後の大型犬で腫れを伴う跛行が続く場合は、レントゲン検査を受けましょう。

夏に多い原因|アスファルトの肉球やけど

気温30℃を超える晴天日、アスファルト表面は50〜60℃に達することがあります。散歩から帰った後に足を引きずる・舐め続ける場合は、肉球やけどを疑ってください。水ぶくれや肉球表面の剥がれが見えたら受診が必要です。

予防の基本は散歩時間の変更です。環境省の熱中症予防情報でも、暑い時間帯の運動は避けるよう呼びかけられています。手の甲を地面に5秒当てて熱いと感じたら、犬にも熱すぎる路面です。早朝か日没後の散歩に切り替えましょう。

シニア犬の場合|関節症と筋力低下の切り分け

7歳以上のシニア犬では、変形性関節症が跛行の代表的な原因です。「散歩に行きたがらない」「段差を避ける」「立ち上がりが遅い」が初期サインです。老化による筋力低下と思い込むと、治療できる痛みを見逃します。関節症の痛みは内服薬でコントロールできることが多いため、あきらめずに受診してください。

認知症による徘徊やふらつきは、跛行と紛らわしいことがあります。震えを伴う場合は犬が震える原因|寒さ・恐怖・痛み・病気の見分け方も参考にしてください。

やってはいけない3つの対処

人間用の鎮痛剤を飲ませる(絶対NG)

ロキソニン・イブなど人間用の鎮痛剤は、犬に絶対に与えないでください。犬はこれらの成分の代謝が苦手で、胃腸の潰瘍や急性腎不全を起こします。獣医中毒学の文献では、イブプロフェンは体重1kgあたり25mg程度から中毒症状が出るとされます。体重5kgの小型犬なら、市販薬1錠(150mg)で中毒域に達する計算です。誤って与えた場合は、すぐ動物病院に連絡してください。

自己流のマッサージ・ストレッチ

骨折や脱臼、ヘルニアの場合、揉んだり伸ばしたりすると悪化します。原因が確定するまで、患部には触らないのが原則です。

期限を決めない「様子見」

様子を見てよいのは「食欲・元気があり、足を着けて歩ける」場合だけです。それでも48時間を期限にしてください。48時間たっても引きずりが続くなら受診が必要です。原因のわからない痛みへの向き合い方は犬が感じる痛みの原因がわからないときはどうすれば良い?でも解説しています。

動物病院で伝えるべき情報リスト

跛行の診断では、歩き方の観察が最重要です。病院では犬が緊張して普通に歩いてしまうことがよくあります。受診前に次の情報を整理し、動画を撮っておきましょう。

  • いつから引きずっているか(きっかけの有無)
  • どちらの足か・足が日によって変わるか
  • 頻度(常にか、時々か、運動後だけか)
  • 食欲・元気・排尿排便の変化
  • 触ると痛がる場所

動画の撮り方のコツ:①犬の真横から歩く姿を10秒、②真後ろから10秒、③立ち上がる瞬間を撮影します。スロー再生できると診断精度がさらに上がります。フローリングより滑らない床や屋外で撮るのがおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 犬が足を引きずっているのに痛がりません。放置していい?

放置は勧められません。犬は痛みを隠す動物です。また麻痺があると痛みを感じないこともあります。ごく稀に「かまってほしくて引きずる仮病」もありますが、見極めは検査でしかできません。48時間続くなら受診してください。

Q2. 時々スキップみたいにケンケンします。病気ですか?

小型犬なら膝蓋骨脱臼(パテラ)の典型的なサインです。すぐ元に戻っても、膝の中では脱臼を繰り返している可能性があります。グレード評価のため、一度整形外科に詳しい動物病院で検査を受けましょう。

Q3. 散歩の後だけ引きずります。原因は?

まず肉球・爪・指の間をチェックしてください。夏ならアスファルトやけどの可能性が高まります。足先に異常がなく運動後の跛行が続くなら、関節炎や靭帯の部分損傷が疑われます。

Q4. 診察までの間、湿布や包帯をしてもいい?

どちらも避けてください。人間用湿布には犬に有害な成分が含まれ、舐めると中毒の恐れがあります。素人の包帯固定は血行障害のリスクがあります。安静とケージレスト(ケージ内で休ませること)が最善の応急処置です。

Q5. 治療費はどのくらいかかりますか?

原因により大きく異なります。レントゲン検査は1枚3,000〜6,000円程度が目安です。骨折のギプス固定は入院込みで5〜10万円程度、手術になると15〜50万円程度かかることもあります。膝蓋骨脱臼の手術は20〜50万円程度が相場とされます。早期発見ほど治療の選択肢が広く、費用も抑えられます。

まとめ|2軸で絞り込み、迷ったら48時間以内に受診

犬が足を引きずるときは、「前足か後ろ足か」「急性か慢性か」で原因を絞り込めます。両後ろ足の麻痺・排尿不能・変形・激痛は即受診です。それ以外でも、様子見の期限は48時間と決めてください。歩き方の動画を撮って受診すれば、診断の精度が大きく上がります。人間用の鎮痛剤だけは、どんなに痛そうでも絶対に与えないでください。

【参考情報】獣医師監修の跛行解説(PS保険・ベッツペッツ)、環境省 熱中症予防情報、獣医中毒学文献(イブプロフェン中毒量)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

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