(2026年8月更新)犬が発症する病気【僧帽弁閉鎖不全症】は、犬のなりやすい病気の中でも上位にある心臓病です。
「僧帽弁閉鎖不全症になると、穏やかな最期を迎えることができないかもしれない」と言われているほど、この病気にかかった愛犬と暮らす飼い主さんは覚悟が必要です。
では具体的に僧帽弁閉鎖不全症とはどのような病気なのでしょうか?症状や発症してからの余命、発症しやすい子の特徴などについて解説いたします。
ぜひ参考にしてみてください!
犬の僧帽弁閉鎖不全症はどんな病気?
犬の僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の左心房・左心室の間にある【僧帽弁】という機能を持つ弁がなんらかの原因で変性、閉鎖不全が起こる病気です。
僧帽弁は心臓が「ドクン」と収縮すると左心房から左心室に血液が流れるときにだけ開くようになっていて、左心室に入った血液は左心房に逆流することはできない仕組みになっています。
しかし、僧帽弁閉鎖不全症になると弁の開閉機能に支障をきたし、左心室から左心房へ血液が逆流してしまうようになります。
さらに症状が進行すると肺水腫を発症し、治療が遅れると死に至ることもある病気です。僧帽弁閉鎖不全症は心臓病の中でも発症率はトップ1で、中でも小型犬がなりやすいと言われています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージ分類(ACVIM分類)
僧帽弁閉鎖不全症の進行度は、アメリカ獣医内科学会(ACVIM)のガイドラインで5つのステージに分類されます。動物病院でも「ステージB2」のように診断されることが多いので、それぞれの意味を知っておくと獣医師の説明が理解しやすくなりますよ。
| ステージ | 状態 |
| ステージA | 現時点で心臓に異常はないが、発症リスクの高い犬種(好発犬種) |
| ステージB1 | 心雑音や僧帽弁の逆流はあるが、心拡大は認められない |
| ステージB2 | 心雑音・逆流に加えて心拡大が認められる(無症状) |
| ステージC | 咳や呼吸困難など心不全の症状がある、または肺水腫の治療歴がある |
| ステージD | 標準的な治療では症状のコントロールが難しい末期の状態 |
特に重要なのがステージB2です。無症状でも心拡大が確認された時点で「ピモベンダン」という強心薬による治療を始めると、心不全の発症を大きく遅らせられることが大規模臨床試験(EPIC試験)で示されており、現在のガイドラインでもステージB2からの投薬開始が推奨されています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の好発犬種や年齢とは?
犬の僧帽弁閉鎖不全症は小型犬がなりやすいと上記でお伝えいたしましたが、日本で飼育されている小型犬の中でも
- チワワ
- キャバリア・キング・チャールズ
- マルチーズ
- シー・ズー
- トイ・プードル
- ポメラニアン
- ヨークシャー・テリア
- ミニチュア・ダックスフント
などの犬種に好発すると言われています。
また、オスよりメスに多く6歳を超えると急激に病気にかかる率が上昇する事実があります。
僧帽弁閉鎖不全症になってしまった犬の余命は?
余命はステージによって大きく異なります。心拡大のないステージB1であれば、何年も無症状のまま寿命を全うする子も少なくありません。一方、肺水腫など心不全の症状が出たステージC以降で投薬治療を開始した場合の平均生存期間は、報告にもよりますが約9ヶ月〜1年前後と言われています。
僧帽弁閉鎖不全症が進行し、肺水腫の症状をみせるのは8~10歳がもっとも多いと言われています。小型犬の平均寿命と言われている15歳前後まではまだ数年ありますので、いかに早い段階で見つけて進行を遅らせるかが重要です。
ですが、これは肺水腫まで症状が進行した場合の平均生存期間です。早期発見であればあるほど長生きすることは可能です。
実際に、内科的治療のみで小型犬の平均寿命である15歳まで生きた子もたくさんいますよ。
犬の僧帽弁閉鎖不全症になる原因は?
犬の僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬の場合は遺伝的な素因であることが考えられていますが、詳しい原因はまだわかっていません。
一部では、歯周病を放置して歯周病菌が心臓にまでたどり着き炎症を起こしてしまうことで、僧帽弁閉鎖不全症を引き起こしてしまうのではないか?とも考えられていて、心臓病の発症は歯周病菌が大きく関与しているとも言われています。日頃からの歯磨き習慣はお口だけでなく心臓の健康にもつながります。歯磨きのやり方は犬の歯磨きのやり方|6ステップの慣らし方と正しい磨き方・頻度の目安で詳しく解説しています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状とは?
たまたまワクチン接種などで病院へ行き獣医師が心音をチェックした際に「心臓の雑音」に気付き病気が発覚する事は多くありますが、飼い主さんが見てわかる症状は初期の段階では無いことがほとんどです。
進行すると
- 咳が出る
- 運動を嫌がる
- 運動後や興奮時に倒れる
などの症状が出て初めて愛犬の異変に気付く飼い主さんが多いです。特に「咳」の症状で気付く飼い主さんが多いと言われていますよ。
この時点で上記のような症状に気付いたらすぐに動物病院へ受診するようにしましょう。
さらに重症し肺水腫が起こると
- 呼吸困難
- チアノーゼ
などをおこし、数分で死に至ることもあります。
ここまで症状が悪化すると「絶対になにかおかしい」と気付く飼い主さんは多いかと思いますが、この時点で気付いた場合手遅れだったというケースも多いです。
僧帽弁閉鎖不全症は早期発見・早期治療が進行を遅らせるうえでとても重要になります。
初期の段階では無症状で飼い主さんが気付くことは難しいですが、定期検診で早期発見・早期治療をすることができます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症にならないために飼い主さんができること
残念ながら、犬の僧帽弁閉鎖不全症の予防は難しいと言われています。
ですが、日常的に塩分の高い食事を控えたり肥満を予防したりと、心臓に負担をかける生活を避けて健康的に過ごす事は、愛犬の健康を守るためにも基本的なことです。
病気の早期発見のためにも定期検診に行こう!
定期検診に行き、病気の早期発見に務めることもとても大切なことです。
愛犬の健康管理は飼い主さんにしかできない事なので、健康を意識した生活ができるように心がけましょう!
生活面での注意点
愛犬が僧帽弁閉鎖不全症になってしまった場合、生活面で様々な注意点があります。
獣医師から処方された薬を確実に投薬することはもちろん、高温多湿を避けて、過度な運動はNGです。また、塩分の多い食事は心臓の負担となりますので避けて、呼吸の回数や舌の色など異変はないかこまめにチェックをすることも大切です。
獣医師から生活面や投薬のアドバイスを必ずもらえますので、しっかりと覚えておきましょうね!
愛犬が僧帽弁閉鎖不全症になってしまったら…
僧帽弁閉鎖不全症は外科的治療・内科的治療どちらの選択も可能ですが、基本的には内科的治療が行われます。
内科的治療では根治は難しく、進行を遅らせてできるだけ良い状態を長く保てるようにするという目的があります。ステージB2以降ではピモベンダンを中心に、症状に応じて利尿薬や血管拡張薬などを組み合わせて治療します。
一方、根治を目指せる唯一の方法が外科手術(僧帽弁修復術)です。人工心肺を使う高度な手術のため実施できる施設は限られていますが、近年は国内でも専門施設が増えており、経験豊富な施設では90%以上の成功率が報告されています。費用は入院費を含めて総額150万〜250万円程度が目安です。手術適応かどうかはステージや年齢・他の病気の有無によって変わりますので、興味がある場合はかかりつけの獣医師に相談し、循環器専門施設への紹介を受けましょう。
| 内科的治療 | 外科的治療 | |
| メリット | ・軽症の場合、心不全までに進行しない可能性もある | ・心臓病の症状が消失する可能性が高い ・薬を減量できる ・生活の制限を軽減できる |
| デメリット | ・心不全再発の可能性がある ・治療に限界がある ・内服薬が多くコストと通院の手間がある | ・手術できる医師(病院)が少ない ・手術のリスク ・費用が高額 |
延命ということで、僧帽弁閉鎖不全症になってしまった子の治療は生涯続きます。最期が近くなれば近くなるほど飼い主さんの介護が必要になることもあります。
治療方針はしっかりとかかりつけの獣医師と相談して決定しましょうね。
犬の僧帽弁閉鎖不全症に関するよくある質問
Q. 僧帽弁閉鎖不全症と診断されたら余命はどのくらい?
ステージによって大きく異なります。心拡大のない初期(B1)なら数年単位で無症状のまま過ごせる子も多くいます。心不全の症状が出たステージC以降では平均生存期間は約9ヶ月〜1年前後と言われていますが、適切な治療でより長く安定して過ごせるケースもあります。
Q. 手術費用はどのくらいかかる?
僧帽弁修復術は入院費を含めて総額150万〜250万円程度が目安です。ペット保険の適用可否は契約内容によって異なるため、事前に保険会社と手術実施施設の両方に確認しましょう。
Q. 咳が出ていたらすぐ受診すべき?
はい。特に好発犬種のシニア犬で「興奮時や夜間に咳が出る」「疲れやすくなった」場合は、早めに動物病院を受診しましょう。また、自宅で安静時・睡眠時の呼吸数を数える習慣(1分間に40回以上なら要注意)も早期発見に役立ちます。
Q. 予防することはできる?
確実な予防法は残念ながらありません。ただし、歯周病ケア・肥満予防・塩分を控えた食事で心臓への負担を減らすこと、そして定期健診での早期発見が何より大切です。
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まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症はある日突然亡くなってしまう可能性も十分にある病気です。
僧帽弁閉鎖不全症は完治・予防ともに難しいと言われている病気です。飼い主さんが愛犬にできることは、病気を少しでも早く発見し、治療を開始することです。
そのためには、シニア犬になるまでには年に最低でも1回、シニア犬からは年に2回以上の健康診断を受けて、病気の早期発見・早期治療に努めましょう!
また、普段と様子が違うことに気付いたら、早急にかかりつけの動物病院を受診しましょう。

