(2026年9月更新)獣医師が使う「DISHAA」の考え方、食事・サプリ・お薬の選択肢、夜鳴きや徘徊への環境ケア、受診の目安を追記しました。
人間も認知症になるように、犬も認知症になることがあります。認知症は犬の平均寿命が延びた事によって、増加傾向にあると言われています。
もし、愛犬が認知症になってしまうと飼い主さんはどういったことに気を使わなければいけないのでしょうか。完治するかどうかも気になるところです。
ここでは、犬の認知症について、症状チェックや予防方法、末期症状、そして完治の有無についてもご紹介いたしますのでぜひ参考にしてみて下さい!
犬の認知症とは?
認知症は、認知能力が低下する事によって行動に変化がでる病気です。
老化によって様々な場所に衰えが出てきますが、老化現象は体だけではなく脳細胞にも出てきます。
近年長生きする犬が増えてきていることから、認知症を発症する子も増えてきていると言われています。
獣医療の現場では「認知機能不全症候群(CDS/CCD)」と呼ばれ、人のアルツハイマー病と似た、加齢にともなう脳の変化が関わっていると考えられています。海外の調査では高齢犬のおよそ14〜35%にあたる犬が該当するとの推定もあり、決して珍しい状態ではありません。「うちの子だけ」ではない、とまず知っておいていただければと思います。
犬の認知症チェックリスト~認知症の末期症状について
- 名前を呼んでも来ない・反応がない
- 最近よく寝る様になった
- ご飯を食べたのに食べたがる(食欲増加)
- 昼は寝て過ごし、夜中や明け方に鳴き始める(昼夜逆転)
- 狭い場所へ入りたがる・行き止まりになると後退できない
- 円を歩くように歩く(同じところをグルグルと回る)
- 排泄の失敗
- これまで覚えていたことの行動ができなくなる
- 視力・聴力が衰えて異常ににおいを嗅いでいる
- 飼い主のことを見分けられなくなった
- 何事にも無反応
など。
チェックリストに当てはまる数が多い場合、認知症の症状が進んでいると考えましょう。
更に、睡眠障害や徘徊が始まると認知症の末期と言われています。
飼い主さんの多くは、上記のような症状を「老化が進んでいて、体を動かすのが辛いのかも…」「老犬だから目や耳が遠くなり始めているのだ」と、認知症を見過ごしてしまいます。
単なる老化だと見過ごさずに、上記のような症状が現れたら動物病院を受診するようにして下さい。
【2026年版】獣医師が見ている6つの変化「DISHAA」
動物病院では、認知機能の低下を整理して見るために「DISHAA(ディシャー)」という6つの視点が使われることがあります。診察前にご家庭での様子を当てはめてメモしておくと、獣医師に伝えやすくなりますよ。
- D|見当識障害…慣れた部屋で迷う、壁や家具の隙間でフリーズする、ドアの蝶番側で立ち尽くす
- I|社会的交流の変化…家族への反応が薄い、なでられるのを避ける、逆に過剰にくっつく
- S|睡眠・覚醒サイクルの乱れ…昼夜逆転、夜鳴き、夜間の徘徊
- H|排泄の失敗…トイレを覚えていたのに失敗する、外でしてから室内でもしてしまう
- A|活動性の変化…同じ場所をぐるぐる回る、目的のない歩き回り、逆に何もしなくなる
- A|不安の増加…留守番や物音に過敏になる、そわそわが止まらない
なお、これらはあくまで「気づきのための目安」です。同じような行動は脳の病気、痛み、内臓の病気、ホルモンの病気、目や耳の衰えなどでも起こります。チェックが当てはまったからといって認知症と決めつけず、必ず動物病院で他の原因がないかを確認してもらいましょう。
認知症になりやすい犬の特徴
- 13歳以上
- 日本犬系の犬種
- 外で飼育している犬
認知症は多くの場合13歳頃から症状が出始めると言われています。(13歳よりも早く症状が出ることもあります)
近年では、10歳を過ぎたあたりから少しずつ変化が現れ、13〜14歳ごろに目立ってくると説明されることが増えています。「13歳になってから気にすればいい」ではなく、10歳を過ぎたら小さな変化をメモしておく、というくらいの構えがおすすめです。
また、大型犬の場合は7歳~8歳ごろから症状現れる事が多いと言われています。認知症の症状が出やすい高齢期になると注意が必要です。
そして、認知症は日本犬系の犬種に多く発症する事が分かっているようです。もちろん洋犬にも発症しますが、日本犬のほうが発症率が高いため、日本犬を飼育している場合は特に注意が必要です。
そして、屋外で飼育している子は室内で飼育している子よりも認知症になりやすいと言われています。
室内飼育の子はつねに飼い主さんとのスキンシップがありますが、屋外飼育の場合は室内飼育の子に比べると刺激が少ないため、脳の老化も進みやすいようです。
認知症は完治する?認知症の治療方法について
認知症は初期の段階であれば症状改善が見られる事もあるようですが、完治できるような薬はないと言われています。
病院での治療は主に症状の進行を遅らせたり、改善する効果が期待できます。
治療方法は主に、適切な運動や睡眠をさせて、適切な食事管理を行うことです。
適度な運動・睡眠
夜にぐっすり眠れるように日中たくさん遊んであげます。
お散歩に行ったり、室内でおもちゃなどを使って遊んだりと飼い主さんとのふれあいの時間を増やしましょう。
適切な食事管理
認知症にはDHAやEPAなどが豊富に含まれている食べ物が、認知力や記憶力などの向上に効果が期待できると言われています。
これらを豊富に含むドッグフードやサプリメントを選ぶようにしましょう。
また、神経伝達物質を増やすような薬を処方されることもありますよ。
【2026年版】いま選べる食事・サプリ・お薬の選択肢
「治す薬はない」と聞くと気持ちが沈んでしまいますが、進行をゆるやかにしたり、困っている症状をやわらげたりする手段は少しずつ増えています。代表的なものを整理しました。
MCT(中鎖脂肪酸)を配合した療法食
加齢とともに脳がブドウ糖をうまく使いにくくなると考えられており、MCT(中鎖脂肪酸)はその代わりとなるエネルギー(ケトン体)を脳に届ける働きが期待されています。MCTを配合した療法食を与えた研究では、認知機能の指標が改善する傾向がみられたと報告されています。
ただし療法食は持病や体質によって向き不向きがあり、油分の急な追加は下痢や膵臓への負担につながることもあります。市販のMCTオイルを自己判断で足すのではなく、まずはかかりつけの獣医師に相談してから始めてください。
DHA・EPAや抗酸化成分のサプリメント
オメガ3系脂肪酸であるDHA・EPAには抗炎症作用が、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化成分には脳の酸化ストレスをやわらげる働きが期待されています。これらを組み合わせた高齢犬向けの療法食やサプリメントも各社から出ています。
サプリメントは「飲めばよくなる」ものではなく、生活の工夫と組み合わせて初めて力を発揮するものと考えましょう。複数を同時に足すと何が効いているのか分からなくなるため、1つずつ様子を見るのがおすすめです。
動物病院で処方されるお薬
脳内の神経伝達物質の分解をおさえるタイプのお薬(セレギリンなど)が、症状の緩和を目的に使われることがあります。また夜鳴きや強い不安がある場合には、抗不安薬や睡眠をサポートするお薬が処方されることもあります。
いずれも獣医師の診察と処方が必要なお薬で、効き方には個体差があります。人用の睡眠薬やサプリを転用するのは絶対にやめてください。
【2026年版】夜鳴き・徘徊への環境ケア
飼い主さんがいちばん疲れてしまうのが、夜鳴きと夜間の徘徊です。まずは「叱らない」「起こさない工夫をする」の2つを基本に、次のような環境づくりを試してみてください。
- 日中に光と刺激を入れる…朝にカーテンを開けて日光を浴びる、短くてもにおいを嗅ぐ散歩に出る。生活リズムが整うと夜に眠りやすくなります
- ぐるぐる歩ける安全な空間をつくる…円形のサークルやプールマットなどで角をなくし、行き止まりで動けなくなるのを防ぎます
- 転倒・落下を防ぐ…床に滑り止めマット、段差や階段にゲート、家具の角にクッション材を
- 寝床は暖かく静かに…冷えは体の痛みを強め、夜の不快感につながります
- 鳴いたら「困りごとの確認」から…トイレ、のどの渇き、空腹、暑さ寒さ、痛みなど、認知症以外の理由が隠れていることもあります
- 飼い主さんの休息も計画に入れる…ペットシッターやデイケア、老犬ホームの一時利用など、抱え込まない選択肢を早めに調べておきましょう
夜鳴きが毎晩続くとご家族の生活も限界に近づきます。「がんばりが足りない」わけでは決してありません。眠れない日が続いているなら、それ自体を獣医師に相談してよい困りごとです。
すぐに動物病院へ相談したいサイン
認知症と似た行動でも、別の病気が隠れていることがあります。次のような様子が見られたら、早めに受診してください。
- 数日〜数週間で急にふらつきや旋回、性格の変化が現れた
- けいれん発作、体の片側だけがうまく動かない、首が傾いている
- 水を飲む量・おしっこの量が急に増えた/体重が落ちてきた
- 触られるのを嫌がる、抱っこで鳴く(痛みのサインかもしれません)
- 物にぶつかる、段差を踏み外す(目や耳の衰えの可能性)
- 夜鳴きが続き、ご家族が眠れない状態が1週間以上続いている
急に始まった変化ほど、認知症以外の原因である可能性が高くなります。「歳だから」と様子を見る前に、まずは電話で動物病院に相談してみてください。
犬の認知症予防のために普段から運動と食事管理を心がけよう!
犬の認知症を予防するために、飼い主さんができる予防方法はとにかく脳に刺激を与えることです。
脳に刺激を与える事によって脳が活性化し、認知症を予防してくれます。
例えばお散歩コースは1週間ごとに変更してみたり(逆走したりなど)ドッグランで遊ばせるなど、少しの工夫だけでも脳に刺激を与える事ができます。
シニアになって長く歩けなくなっても、「においを嗅ぐ時間」は立派な脳の運動です。距離を伸ばすより、草むらの前でゆっくり嗅がせる、おやつを部屋に隠して探させる(ノーズワーク)といった短時間の遊びを毎日続けるほうが、脳には良い刺激になりますよ。
また、食事はDHAやEPAが含まれているドッグフードや、サプリメントを与えるなどして予防をしましょう。
そして、認知症だと疑われる症状が現れた場合は「歳だから仕方がない」と放っておかずに、必ず動物病院で診断を受けて、治療方法を一緒に考えてもらうようにしてくださいね!
早期発見するためにも、日頃から愛犬とのスキンシップを十分にとるようにしておきましょう!
よくある質問(FAQ)
Q. 犬の認知症は何歳ごろから気をつければいいですか?
A. 一般的には10歳を過ぎたころから少しずつ変化が現れ、13〜14歳ごろに目立ってくると言われます。大型犬は体の老化が早く、7〜8歳ごろから気にしておくと安心です。犬種や個体差も大きいので、年齢だけでなく「以前と違う行動」に注目してください。
Q. 認知症は治りますか?
A. 残念ながら、現時点で完全に治す方法は確立されていません。ただし、食事・サプリメント・お薬・生活環境の工夫を組み合わせることで、進行をゆるやかにしたり症状をやわらげたりできることがあります。早い段階で対策を始めるほど選べる手段が増えるため、気づいた時点で獣医師に相談しましょう。
Q. 夜鳴きがつらいです。叱ってもいいですか?
A. 叱っても改善しないどころか、不安を強めて悪化させてしまうことがあります。まずはトイレ・のどの渇き・寒さ・痛みなど他の理由がないかを確認し、日中に日光と軽い刺激を取り入れてリズムを整えてみてください。それでも続く場合は、お薬を含めた選択肢を動物病院で相談できます。
Q. ぐるぐる同じ場所を回るのは認知症のサインですか?
A. 認知症でよく見られる行動のひとつですが、脳の病気、耳の異常、痛みなどでも同じように回ることがあります。とくに急に始まった場合や、ふらつき・首の傾きをともなう場合は早めの受診をおすすめします。
Q. サプリメントは飲ませたほうがいいですか?
A. DHA・EPAや抗酸化成分、MCTなど期待されている成分はありますが、持病やお薬との相性があるため自己判断での併用は避けてください。とくに療法食やMCTオイルは、消化器や膵臓に負担がかかることもあります。かかりつけの獣医師に、今の食事内容と一緒に相談するのが安心です。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。愛犬の症状や治療方針については、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。掲載内容は2026年9月時点の情報です。

