犬も風邪をひくの?受診するべき症状や治療法、普段から取り組む予防法とは

「なんだか元気がないな…」「いつもより少し体が熱い気がする…」
愛犬の様子が普段と違うと、「風邪をひいたのかな?」と心配になりますよね。
今回は、犬の風邪の症状や治療法、また風邪を予防する方法について、大切なポイントをお伝えします。

(2026年9月更新)朝晩の冷え込みと日中の残暑で寒暖差が大きくなるこの時期は、体調をくずす子が増えやすいタイミングです。今回の更新では、犬の風邪の正体である「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」についての解説を追加し、あわせて混合ワクチンの接種間隔に関する記述を、WSAVA(世界小動物獣医師会)が2024年に改訂した最新のワクチネーションガイドラインの内容に沿って見直しました。よくある質問(FAQ)も新たに追加しています。

目次

そもそも犬も風邪をひくの?

人間と同じように、犬も風邪をひくことがあります。しかし、厳密には犬に「風邪」という病気はありません。多くの場合、細菌やウィルスの感染が原因で、咳や鼻水、発熱といった症状が出ているのです。

もし犬に咳や鼻水、発熱といった症状が出ても人間にはうつりません。同じように、人間の風邪も犬にはうつりません。ただし、犬同士では咳や鼻水、排泄物を介して感染が広がる可能性があります。多頭飼育をしている家庭で、体調の優れない愛犬がいる場合は、愛犬同士を近づけないように配慮するなど、注意が必要です。

犬の風邪の正体は「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」

いわゆる「犬の風邪」は、動物病院ではケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)と呼ばれることが多い症状です。近年は複数の病原体が単独または重複して関わることから、「犬伝染性呼吸器疾患群(CIRDC)」という呼び方もされます。「ケンネル(kennel=犬舎)」の名のとおり、ペットショップやブリーダー、ペットホテル、保護施設など犬が多く集まる場所で広がりやすいのが特徴です。

WSAVA(世界小動物獣医師会)の2024年ワクチネーションガイドラインでは、犬の呼吸器感染に関わる代表的な病原体として、犬パラインフルエンザウイルス(CPiV)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(細菌)、犬アデノウイルス2型(CAV-2)が挙げられています。ひとつの病原体だけでなく、これらが混ざって発症するケースもあるため、症状の重さや経過には個体差があります。

特に子犬・シニア犬・持病のある子は重症化しやすいとされ、悪化すると肺炎につながることもあります。ペットホテルやトリミングサロン、ドッグランなど多くの犬が集まる場所を利用する予定がある場合は、事前にかかりつけの動物病院で予防について相談しておくと安心です。施設選びのポイントはペットホテルの選び方|お盆前に確認すべき条件と料金相場もあわせてご覧ください。

犬の風邪の主な症状

犬の風邪の主な症状は咳、目やに、発熱です。咳は人間のように「コン、コン」というものではなく、「ガハッ」と喉の奥から物を吐き出すような音がするのが特徴です。

人間と違って体温計で簡単に計れるわけではないため、熱があるかどうかはわかりづらいかもしれません。体に触ったときにいつもより明らかに熱いと感じるときは、発熱している可能性が高いです。

犬の平熱は人よりも高く、一般に38.0〜39.0℃程度が目安とされています。ただし体格・年齢・測定したタイミング(運動直後、興奮時など)で変動しますし、大型犬はやや低め、子犬はやや高めになる傾向があります。数値だけで自己判断せず、元気なときの体温や普段の様子を知っておき、「いつもと比べてどうか」で見ることが大切です。

また、普段と比べて元気がなくぐったりしている、普段は好きな食事も食べない、といった点も大事な観察ポイントです。さらに、悪化すると、嘔吐、下痢、膿を伴った鼻水といった症状を併発する場合もあります。

受診するべき症状は?

下記の症状に当てはまる場合は、受診を検討しましょう。

  • 咳が長引いている
  • 発熱が続いている
  • 黄色い膿を伴った、臭いのある鼻水が見られる
  • 嘔吐、下痢が続いている
  • 呼吸が荒く、体が震えている

これらの症状が一つ、もしくは複数見られる場合、何らかの細菌、ウィルス感染が疑われます。早めにかかりつけの動物病院を受診しましょう。

なお、咳・くしゃみ・呼吸の変化は風邪以外の病気でも起こります。症状別のくわしい見分け方は、それぞれの記事もあわせて参考にしてください。

犬の風邪の治療法

犬の風邪では、原因となる病原体や感染に対し抗生物質を使用した治療を行います。症状を和らげる対症療法も同時に行うことが一般的です。咳に対しては鎮咳薬や去痰薬といった飲み薬を使用する他、ネブライザー(吸入器)を使用することもあります。

ネブライザーとは、液体の薬を霧状にして鼻や口から吸入する機械です。直接呼吸器の粘膜へと薬を当てることができるので、飲み薬を嫌がる犬や症状が重篤な場合にも使用できます。

くしゃみや鼻水、目やになどの症状が出ている場合には、飲み薬に加えて点鼻薬や点眼薬を使用します。発熱があり、ぐったりとして元気がない場合には解熱剤を使用し、つらさを緩和します。また、下痢や嘔吐で脱水に陥っている場合は、点滴を行って水分や栄養補給をすることがあります。

ご自宅で様子を見る場合

「受診するほどではなさそうだけど、いつもより元気がないな…」

こんなときは、愛犬がリラックスできる環境で安静にさせてあげることが大切です。安心して休めるベッドやクッションで、暖かくしてゆっくり休ませてあげてください。お散歩は控えるのがベターです。

様子を見る中で、上記の受診すべき症状が見られたら、早めにかかりつけの動物病院を受診しましょう。

犬の風邪を予防するためには

犬の風邪を予防するためにできる対策はあるのでしょうか?

混合ワクチンは、犬の風邪の原因となる病原体の一部をカバーするワクチンです。ここで正しく知っておきたいのは、呼吸器の病原体に対するワクチンは「感染そのものを防ぐ」ものではないという点です。WSAVA(世界小動物獣医師会)の2024年ワクチネーションガイドラインでは、パラインフルエンザウイルスやボルデテラ・ブロンキセプチカなど呼吸器病原体に対するワクチンについて、感染を予防することはできないが、症状の重症度を軽減しうると明記されています。「打っていれば絶対にかからない」わけではないため、接種後も体調の観察は欠かせません。

ワクチンは「毎年1回」とは限らない(2026年9月更新)

以前は「混合ワクチンは年に1回」と説明されることが一般的でしたが、現在の国際的なガイドラインではワクチンの種類によって推奨される間隔が異なります。WSAVAの2024年ガイドラインでは、おおよそ次のように整理されています。

  • コアワクチン(犬ジステンパーウイルス/犬アデノウイルス/犬パルボウイルス)…子犬期の接種シリーズと1歳時の追加接種のあとは、3年より高い頻度で接種する必要はないとされています(免疫が長く持続することが科学的に確認されているため)。
  • ノンコアワクチン(パラインフルエンザウイルス、ボルデテラ、レプトスピラなど)…免疫の持続期間はおおむね1年程度で、必要と判断される場合は年1回の追加接種が推奨されます。
  • 保護施設など多数の犬が集団で暮らす環境では、呼吸器系のワクチンも「コア扱い」として重視されます。

つまり「毎年病院に行く」こと自体は大切ですが、そのとき打つ内容は年によって変わり得るということです。どのワクチンをどの間隔で接種するかは、住んでいる地域の感染状況、外出や宿泊施設の利用頻度、他の犬との接触の多さ、持病の有無などをふまえて決める必要があります。自己判断で間隔を空けたり中止したりせず、必ずかかりつけの獣医師と相談して決めてください。日本国内では動物病院ごとに方針が異なることもあります。

また、鼻に垂らすタイプ(経鼻)や口から入れるタイプ(経口)のワクチンでは、接種後に一部の犬で一過性の咳・くしゃみ・目や鼻の分泌物がみられることがあると報告されています。接種後に気になる様子があれば、接種した動物病院に連絡しましょう。

ワクチン以外の予防としては、フィラリアやノミ・マダニの予防とあわせて年間スケジュールを組んでおくと管理がしやすくなります(犬のフィラリア・ノミ・マダニ予防2026|時期・費用・薬の選び方)。

また、日頃から生活環境を整えてあげることも重要です。人間と同じように、犬も免疫力が落ちると風邪をひきやすくなります。栄養バランスのとれた食事、十分な運動と質の良い睡眠、そしてストレスを溜めないよう配慮することが、犬の風邪の予防にも大切です。

犬の風邪についてよくある質問

Q. 犬の風邪は何日くらいで治りますか?

A. 症状の重さや原因となった病原体、その子の体力によって大きく変わるため、一律の日数はお伝えできません。軽症なら数日で落ち着くこともあれば、肺炎を起こして入院が必要になるケースもあります。咳や発熱が数日たっても改善しない、あるいは悪化している場合は、日数の目安を待たずに動物病院を受診してください。

Q. 犬の風邪は人にうつりますか?

A. 犬の風邪の原因となる病原体は犬に特有のものが中心で、一般的な家庭での生活で人にうつることは想定されていません。反対に、人の風邪が犬にうつることもありません。ただし犬同士では、咳やくしゃみ、鼻水、排泄物などを介して感染が広がります。多頭飼育の場合は、体調をくずしている子の食器やベッドを分ける、しばらく接触を控えるなどの配慮をしましょう。

Q. 人間用の風邪薬を飲ませてもいいですか?

A. 絶対にやめてください。人用の市販薬には犬にとって有害な成分が含まれていることがあり、自己判断での投薬は命に関わる事故につながります。薬は必ず動物病院で診察を受けたうえで処方されたものを、指示された用法・用量で使用してください。

Q. 自然に治るのを待ってもいいですか?

A. 軽い症状で食欲も元気もあるなら、暖かく静かな環境で休ませて様子をみることもあります。ただし犬は不調を隠す動物ですし、咳や発熱の裏に心臓や気管の病気が隠れていることもあります。「元気がない」「ごはんを食べない」「呼吸が苦しそう」といった様子があるときは、様子見をせず受診してください。

Q. 風邪気味のときに散歩やドッグランに行っても大丈夫?

A. 体調をくずしている間は、散歩は控えめにし、ドッグランやペットホテルなど他の犬と接する場所の利用は見合わせましょう。本人の体力を消耗させるだけでなく、ほかの犬に感染を広げてしまうおそれがあります。

まとめ

今回は犬の風邪についてお伝えしました。人間と同じように、犬も風邪をひき、咳や発熱、鼻水、下痢、嘔吐といった症状を呈することがあります。

大切なのは、愛犬の「いつもと様子がちょっと違うな」に気付けることです。早めに異常を察知することができれば、重症化する前に動物病院へ相談することができます。

そのためにも、普段から愛犬とコミュニケーションを取り、しっかりと観察すること、混合ワクチンの接種をしておくこと、生活環境を整えストレスを溜めないようにしてあげることが大切です。大切な愛犬の体調の変化を見逃さないよう、日頃からたくさん関わりを持ってあげてくださいね。

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療方針を示すものではありません。愛犬の症状が続く場合や気になる変化があるときは、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。最終更新日:2026年9月4日

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