今回は、オスワリ・フセの教え方の手順とポイントをお伝えしていきます。「しつけ・教え方の基本」から解説するので、すでに教えている方も読んでから改めて教えてみてくださいね。
過去記事の「ワンちゃんの学習の仕組み」「ごほうび」「合図の基礎」「しつけの難易度」を読んでからのほうがより理解しやすいと思うので、まだの方は読んでみてください。
しつけの基本「オスワリ・フセ」
オスワリ・フセがなぜ「しつけの基本」なのか2つの理由をお話します。
✅ コミュニケーションの基礎
「しつけ=コミュニケーション」であり、オスワリ・フセは、必要最低限の愛犬とのコミュニケーション術があれば教えられるというのが、オスワリ・フセが「しつけの基本」といわれる一番の理由です。
何事も基本は大事で、オスワリ・フセをちゃんと教えられるくらいコミュニケーションが取れれば普段の生活にはさほど困りませんし、応用すれば、少し複雑な行動を教えたり生活ルールを教えたりすること(しつけ)もできるようになります。
✅ 実用性の高さ
おそらく愛犬に言う合図で多いのは「オスワリ・フセ」ではないでしょうか。動物病院・トリミングの待合室や会計時、お散歩中、ブラッシング中などなど大人しくしていてほしい時にはオスワリ・フセしてもらうことが多いですよね。「オスワリ・フセ」は、使用頻度が高く、ちゃんとできるようになれば実用性もあります。
以上が、「オスワリ・フセ」がしつけの基本といわれる理由です。
「オスワリ・フセ」の教え方
しつけの基本の「オスワリ・フセ」ですが、実は、適当に教えている飼い主さんが多い合図でもあります。下記で、「オスワリ・フセ」の教え方について解説していきますね。
完成形は「1回言ったらすぐに必ずやってくれること」であり、「オスワリ・フセ」をしっかり教えていれば、それ以外のことも同様に1回ですぐにやってくれるようになりますので、ぜひマスターしてみてください。
では、「オスワリ・フセ」を完成形に近づけるための手順やポイントを解説していきます。
事前準備
【合図の定義を考える】
最初にその合図は「どこで・何を・いつまで」やるのかを決めます。オスワリでしたら、
🔸どこで ⏩ その場で
🔸何を ⏩ お尻を地面につける(オスワリの姿勢)
🔸いつまで ⏩ 終わりの合図を言うまで
ここで決めたことがルールであり、愛犬にちゃんと理解してやってもらうように伝えていきます。
上記のルールは簡略化したものであり、より細かいルールまで決めることもあります。たとえば「飼い主さんに正対する」「前足は2本とも地面についている」などなど。もちろん条件が多くなるほど難易度は高くなるので、最初は必要最低限のことだけにしておいたほうがいいでしょう。
【オヤツ】
ごほうびとして認識できるくらいでよく、大きいとカロリーなど気にしないといけないので、できる限り小さいものを選びましょう。小型犬なら5mm四方くらいでも喜ぶワンちゃんは多いので、必要であれば事前にカットしておいてください。
【正しい手順を理解する】
姿勢を教えてから合図をつけるのが正しい手順です。
例えばヨガのポーズを教わる時に、教える人がポーズ(姿勢)を取って見せてから「●▲■X(ポーズ名・合図)」を言えば「あぁ、このポーズは●▲■Xて言うのね」と言語がわからなくても理解しやすいですよね。姿勢を教えるのが先で合図があとのほうがいいのです。
※「オスワリ」と合図を言いながらリードや手で無理にオスワリの姿勢をさせるようなやり方は好ましくありません。無理にさせることはオスワリに嫌なイメージがついたり、飼い主さんとじゃれる遊びになったりしてしまいます。
教え方
実際に教える時も「姿勢を教える」「合図をつける」の2段階に分けます。手順とポイントをまとめて解説していきます。
姿勢を教える
オスワリ・フセだけではなくタッテも合わせて教えていきます。単純に「立っている姿勢」なので実用性はあまりありませんが、オスワリ・フセの2種類に対して、タッテは関連づけて覚えやすく、オスワリとフセを連続でやってしまうなどの失敗を防ぐためにタッテも加えます。
この時点では合図をつけないので、何も言わずにオヤツを使った誘導だけで「オスワリ・フセ・タッテ」の姿勢ができるようにします。これはワンちゃんよりも飼い主さんのテクニックが必要なので動画や画像でポイントを解説します。
場所は一番安心できる自宅リビングなどでやります。特にオスワリ・フセはすぐに動きずらい姿勢なので、慣れていない場所や嫌なイメージのある場所だと危機管理の意識が強くなりやってくれません。
オヤツをワンちゃんの口の前に持っていき、それぞれの姿勢を取るように動かしながら誘導します。目的の姿勢になった瞬間にオヤツを食べさせてあげることで、イメージに残ってその姿勢が出やすくなります。
もし愛犬のかじる力が強く指が痛いようなら「優しく食べる」ことから教えてあげないといけません。それはプロに相談かご自身で調べて大丈夫になってから挑戦してください。
🔸オスワリ
オスワリした時の口の位置よりちょっと上くらいに持っていくと「アゴが上がる=おしりが下がり」オスワリしやすくなります。それでオスワリしない場合はちょっと手を前に出しながら下げていくといいですが、バックしてしまいオスワリしない子もたまにいるので、バックできないように壁際でやるといいかもしれません。
🔸フセ
口元から手を下におろすと頭が下がっていき、フセをするはずです。どうしてもお尻が下がらない子もいますが、飼い主さんもフセの姿勢になるまでオヤツを食べられないように耐えてください。手を前後左右に動かしてフセやすい手の位置を探ってみるといいでしょう。
🔸タッテ
写真のように、立たせる時は手のひらが上になるように持つのがコツです。左のように誘導するとオスワリの状態でなんとか食べようとがんばったり、手に飛びついたりして失敗します。立った時の口の位置に手のひらを上にして持っていくと立ちやすいので、手の位置とオヤツの持ち方を工夫して調整してみてください。
【ポイント1】愛犬に合った誘導を見つける!
ワンちゃんの大きさや性格などで最適な手の位置や動かし方が違ってきます。あまり早く動かしすぎると興奮したり動きが止まったりするので、ワンちゃんの口から指が離れない程度にゆっくりに動かすほうが成功しやすいです。手の位置、動かし方、スピードを調整して成功したらその動きを瞬時にできるように練習しましょう
【ポイント2】声を出さないこと!
ほめたり名前を呼んだりしがちですが、言葉やリアクションで気が散って学習効率が下がります。その時言った言葉が合図になってしまう場合もあるので、黙々としゃべらずにやるのがポイントです。ほめたり戯れるのは教えている時以外にしてあげましょう。
【ポイント3】規則性を持たせないように!
オスワリ・フセ・タッテの順番はランダムにして規則性がないようにしてください。オスワリの次にフセが多いなど、ある程度の規則性があるとオスワリのあと誘導しなくても先読みしてフセをするようになります。そのために動作を3つにしているのでできるかぎりランダムですることをおすすめします。
合図をつける
誘導で確実に目的の姿勢を作れるようになったら合図をつけていきましょう。
合図はランダムではなくそれぞれ個別にひとつづつ付けていきます。以下、オスワリの合図について解説しますが、すでに教えている方は「Sit(シット)」や適当な言葉にしてやってみてください。
1️⃣ 「オスワリ」と言ってから誘導してオスワリの姿勢をさせる
2️⃣ オスワリした瞬間にオヤツを食べさせる
3️⃣ すぐに終わりの合図を言う
※ 終わりの合図の言葉は、「自由にしていいよ」という言った合図とし、飼い主さんが自由に決めてかまいません。よく使われるのは「OK」「よし」などです。
4️⃣ オスワリ以外の姿勢になるのを待つか、誘導で他の姿勢をさせる。この時はオヤツをあげません。
1️⃣~4️⃣を繰り返し「オスワリ」と言っただけで誘導する前にオスワリし始めたらオスワリを合図として認識し始めています。合図を言ってからの間をちょっと長めに取るなどして、合図だけでオスワリするようになったら「オスワリの合図⏭オスワリした⏭すぐに終了の合図⏭オヤツを投げる」の手順に変えていきましょう。オヤツを投げるのは動かして「終了の合図=動いていい」と理解してもらうためなので、動かないと食べられないくらいのところで遠くに投げる必要はありません。
合図がつくのは関連付けの学習を利用しています。オスワリと言ったあとに必ず誘導でオスワリの姿勢をすることで「オスワリ=この姿勢」と関連づけて覚えるので合図だけでオスワリをするようになります。
【ポイント1】
1️⃣の時に、オスワリと言う前や同時に手を動かしてしまうとワンちゃんは合図の声よりも手に意識を持っていかれます。そうすると合図が付きづらくなるので、オスワリと言ってから一拍置くくらいの気持ちで手を動かして誘導するようにしましょう。
【ポイント2】
3⃣の終わりの合図はオヤツを食べさせた瞬間くらいに言ってもかまいません。とにかく姿勢が崩れる前に言うことが大事です。終了を言う前にワンちゃんが動くと、終了のタイミングをワンちゃんが決めていいということになり姿勢を継続しにくくなってしまいます。
合図というのは記号のようなものなので、オスワリに複数の合図をつけることが可能です。私は普段は「オスワリ」を使っていましたが、別で「Sit(シット)」を極力失敗を減らして練習し、言えば必ずやってくれるとっておきの合図にしていました。
他の行動でもオヤツで誘導できるようなものなら同じように教えることができます。
例)スピン・ターン(左右回転)、寝っ転がる、ジャンプ、ゴロン(寝て一回転)、首をかしげる、股をくぐる
応用としてレトリーブなど比較的難しいことでも「マテ・投げた物を取りに行く・物をくわえる・手に渡す」など分割して教えた後、まとめるなど工夫すればできるようにもなります。
飼い主さんがいろいろなことを教え、ワンちゃんが覚えることで、飼い主さんとワンちゃんのコミュニケーションが取れるようになり、普段の生活もストレスなく楽しくなっていきますよ。ぜひたくさんのことを教えてあげてください♪
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