マルチーズの性格は「知的・快活・大胆」の3語に集約されます。ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準に明記された公式の気質です。甘えん坊で人懐っこい一方、留守番が苦手で吠えやすい面もあります。白い被毛ゆえに涙やけも目立ちます。この記事では性格・飼い方・涙やけ対策を数値つきで解説します。
マルチーズの性格|JKCが定める3つの気質
JKCの犬種標準では、マルチーズの習性・性格を「知的、快活、大胆である」と定義しています。愛玩犬(9グループ)でありながら、おとなしいだけの犬種ではありません。
1. 知的|しつけの覚えが早い
マルチーズは飼い主の指示を理解する力が高い犬種です。ほめられることを喜ぶため、報酬を使ったしつけがよく通ります。逆に叱責や強制を嫌います。厳しく叱ると萎縮するか、反発して唸るようになります。
子犬期の3〜4か月から「おすわり」「まて」を1日5分ずつ練習しましょう。1回のトレーニングは5分以内が適切です。集中力が続く時間が短いためです。
2. 快活|見た目より運動好き
「小型の室内犬だから運動は不要」は誤解です。マルチーズは好奇心が強く、動き回るのを好みます。散歩は1回20分を1日2回が目安です。運動不足は無駄吠えや破壊行動の引き金になります。
3. 大胆|体は小さいが気は強い
体重3kg前後にもかかわらず、大型犬にも物おじせず吠えることがあります。これが「マルチーズは性格が悪い」と言われる原因の一つです。実際には気が強いのではなく、警戒心の表れです。
生後3〜16週の社会化期に、さまざまな人・犬・音に慣らすことで大幅に軽減できます。この時期を逃すと成犬後の修正に時間がかかります。
「マルチーズは性格が悪い」と言われる本当の理由
ネット上で「性格が悪い」と検索されるのは、次の3つの行動が原因です。
- 来客に吠える:警戒心。社会化不足が主因
- 触られると唸る:甘やかしによる主従関係のあいまいさ
- 留守番中に吠え続ける:分離不安
いずれも犬種本来の欠点ではなく、育て方で防げる行動です。とくに「抱っこしっぱなし」は分離不安の温床になります。1日のうち意識的に1〜2時間は床で単独で過ごさせましょう。

マルチーズの特徴|犬種標準で見るサイズ・被毛・寿命
サイズは「3.2kg以下」が公式基準
JKCの犬種標準では、マルチーズの体重を牡牝ともに3.2kg以下、2.5kgを理想と定めています。体高は20〜25cm程度です。小型犬のなかでもとくに小さく、超小型犬に分類されることもあります。
ただしペットとして飼われる個体は3.5〜4kgになることも珍しくありません。問題は体重そのものより増え方です。1か月で体重の10%以上増えた場合は給餌量を見直してください。3kgの犬にとって300gの増加は、人間で言えば5kg以上の増加に相当します。
被毛はシルキーコート・抜け毛は少ない
被毛は「純白が望ましい。淡いタン、あるいはレモン色は許されるが望ましくない」と規定されています。まっすぐで絹糸のような一層構造(シングルコート)です。
シングルコートのため換毛期がなく、抜け毛は柴犬やポメラニアンと比べて格段に少なめです。ただし毛が伸び続けるため、トリミングは月1回程度必要になります。抜け毛が少ない犬種の被毛管理については犬の抜け毛と換毛期の解説も参考にしてください。
寿命は12〜15歳
マルチーズの平均寿命は12〜15歳です。小型犬のなかでは平均的で、適切な体重管理と歯のケアがあれば16歳以上生きる個体もいます。
人気は今も上位|JKC登録頭数6位
JKCが公表した2025年の犬種別犬籍登録頭数で、マルチーズは9,960頭・第6位でした。日本では1968年から1984年まで登録数トップだった犬種で、半世紀にわたり人気を保っています。
マルチーズの涙やけ|原因の最多は「鼻涙管閉塞」
マルチーズの飼い主が最も悩むのが涙やけです。結論から言うと、涙やけは病名ではなく「流涙症」という状態の結果であり、原因の特定が対策の第一歩になります。

涙やけが起こる仕組み
涙は涙腺から分泌され、目頭の「涙点」から「鼻涙管」を通って鼻腔へ排出されます。この排出がうまくいかないと涙が目からあふれ、被毛が長時間濡れます。濡れた被毛が時間とともに酸化し、赤茶色に変色したものが涙やけです。
マルチーズに多い4つの原因
| 原因 | 内容 | 対処 |
|---|---|---|
| 鼻涙管閉塞 | 生まれつき鼻涙管が狭い・涙点がない。マルチーズとトイプードルに最多 | 動物病院で鼻涙管洗浄。完全閉塞なら手術 |
| 目周りの被毛の刺激 | 伸びた毛が角膜に触れて涙が増える | 目頭の毛を2〜3週ごとにカット |
| アレルギー | 食物・花粉などで結膜炎を起こす | フード変更・アレルゲン特定 |
| 眼瞼内反症・睫毛異常 | まぶたが内側に反る、まつ毛が目に当たる | 睫毛の定期抜去または手術 |
自宅でできる涙やけケア3ステップ
- 1日2回、涙を拭き取る。朝と夜が基本。濡れている時間を短くすることが唯一の予防策です
- コットンかガーゼを使う。ティッシュペーパーは繊維が硬く、目の表面を傷つける恐れがあります
- 固まった毛はふやかしてからほぐす。濡らしたコットンで数十秒当ててから、目の細かいコームでとかします
食器の材質を変えるのも有効です。プラスチック製は細かい傷に細菌が繁殖しやすいため、ステンレスや陶器に替えると改善する例があります。
やってはいけないケア
「これをすれば涙やけが消える」という方法は存在しません。ホウ酸水や自己判断のサプリメントは、原因が眼疾患だった場合に発見を遅らせます。一度変色した被毛は元に戻らないため、伸びて生え替わるのを待つしかありません。
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は動物病院を受診してください。
- 涙やけが起きている(=異常に涙があふれている状態であり、それ自体が受診理由)
- 目をしょぼしょぼさせる、前足でこする
- 目の周りの皮膚が赤い、脱毛している
- 白目が充血している、目やにが黄色〜緑色
とくに黄色や緑色の目やには細菌感染のサインです。色別の判断基準は犬の目やに 色別の原因と受診目安で詳しく解説しています。
マルチーズの飼い方|散歩・被毛・食事・室内環境

散歩は1日2回・各20分
運動量は多くありませんが、散歩は欠かせません。理由は運動ではなく社会性の維持です。外の音や人に触れる機会が少ないと、警戒吠えが強まります。
ただし夏場は注意が必要です。体高20〜25cmのマルチーズは地面に近く、アスファルトの照り返しを強く受けます。真夏の日中は避け、朝6時前か日没後に切り替えてください。
ブラッシングは毎日・トリミングは月1回
シングルコートの被毛は細く絡まりやすいため、毎日のブラッシングが必要です。1回5分でも構いません。絡まった毛を放置すると毛玉になり、皮膚が引っ張られて皮膚炎の原因になります。
フルコート(自然に伸ばすスタイル)を維持する場合はより頻繁なケアが必要です。飼育のしやすさを優先するなら、体の毛を3〜5cmに揃える「サマーカット」や「テディベアカット」が現実的です。
シャンプーは月1〜2回が目安です。洗いすぎると皮脂が失われ、かえって皮膚トラブルを招きます。
食事は小粒・高タンパクを選ぶ
マルチーズは口が小さく、食べムラが出やすい犬種です。総合栄養食のなかから、粒の直径7〜8mm以下の小型犬用を選びましょう。
1日の給餌量は体重によって決まります。体重3kgの成犬であれば、1日の必要エネルギーはおよそ200〜250kcalが目安です。フードのパッケージ表記を基準に、体型を見ながら調整してください。具体的な計算方法は犬の1日の食事量と回数にまとめています。
室内は「滑らない床」が必須
マルチーズの飼育環境で最も重要なのが床材です。フローリングは膝蓋骨脱臼と骨折の主要因になります。
- 生活スペースにカーペットやコルクマットを敷く
- ソファやベッドからの飛び降りを防ぐ(ステップの設置)
- 抱っこ中の落下に注意する(前足の橈尺骨骨折の典型パターン)
体重3kg前後の犬にとって、高さ40cmのソファからの着地は人間が2m以上から飛び降りるのに近い衝撃です。
マルチーズがかかりやすい病気5つ
1. 膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿の骨が溝から外れる疾患です。小型犬に非常に多く、マルチーズも好発犬種です。後ろ足を一瞬上げてケンケンする、歩行中に急にスキップするのが初期サインです。グレード1〜4に分類され、グレード2以上では手術を検討します。
2. 皮膚炎・膿皮症
細菌・真菌・ダニによる皮膚の炎症です。白い被毛は皮膚が薄く、涙やよだれで濡れた部位が炎症を起こしやすくなります。とくに梅雨から夏は発症が増えます。詳しくは犬の梅雨の皮膚トラブルを参照してください。
3. 僧帽弁閉鎖不全症
心臓の僧帽弁が閉じきらず血液が逆流する疾患です。高齢の小型犬に多く、乾いた咳が続く、散歩を嫌がる、呼吸が速いのが主なサインです。8歳を過ぎたら年1回は聴診を受けましょう。
4. 骨折
マルチーズは骨が細く、抱っこからの落下や段差からのジャンプで前足を折ることがあります。骨折後に足を着かない、腫れている場合は当日中に受診してください。
5. 歯周病
小型犬は歯が密集しており歯垢が溜まりやすい犬種です。3歳以上の犬の約8割が何らかの歯周疾患を持つとされます。歯磨きは週3回以上を目標にしてください。
受診の目安まとめ
| 症状 | 緊急度 |
|---|---|
| 呼吸が荒い・舌が紫色 | 直ちに救急受診 |
| 足を着かない・激しく痛がる | 当日中に受診 |
| 乾いた咳が3日以上続く | 数日以内に受診 |
| 目の充血・目をこする | 数日以内に受診 |
| 涙やけが続いている | 次回の健診時までに相談 |
マルチーズのしつけ|分離不安と無駄吠えを防ぐ

分離不安を防ぐ3つのルール
マルチーズは飼い主への依存度が高く、留守番中の吠え・破壊・粗相といった分離不安の症状が出やすい犬種です。次の3点を子犬期から徹底してください。
- 出かける前と帰宅後に構わない。別れと再会を大げさにしないことで、留守番を特別な出来事にしません
- 在宅中も1〜2時間は別室・ケージで過ごさせる。「見えない時間」に慣らします
- 留守番の時間を段階的に伸ばす。5分→15分→30分→1時間と、成功体験を積ませます
すでに症状が出ている場合の改善手順は犬の分離不安の原因と改善方法で解説しています。
無駄吠えは「原因別」に対処する
マルチーズの吠えは主に警戒吠えと要求吠えの2種類です。対処法が正反対なので見極めが重要です。
- 警戒吠え(インターホン・来客):吠える前に名前を呼んでおやつを与え、刺激とごほうびを結びつける
- 要求吠え(おやつ・抱っこ):完全に無視する。吠えたら要求が通る学習を断つ
要求吠えに一度でも応じると、吠える行動が強化されます。詳細な手順は犬の無駄吠えをやめさせる5つの方法にまとめています。
マルチーズに向いている飼い主のタイプ
向いている人
- 在宅時間が長い人:留守番が苦手な犬種のため、日中家にいる環境が理想です
- 毎日のブラッシングを負担に感じない人:1日5分のケアが必須です
- トリミング代を予算に組める人:月4,000〜8,000円が継続的にかかります
- 集合住宅で抜け毛を抑えたい人:シングルコートで抜け毛が少ない利点があります
慎重に検討したほうがよい人
- 日中12時間以上留守にする人:分離不安のリスクが高くなります
- 小さな子どもがいる家庭:体重3kg前後と華奢で、落下や踏みつけによる骨折の危険があります
- 被毛の手入れに時間を割けない人:毛玉と皮膚炎につながります
飼育費の目安(月額)
| 項目 | 月額目安 |
|---|---|
| フード代 | 3,000〜5,000円 |
| トリミング | 4,000〜8,000円 |
| 日用品(シーツ等) | 2,000〜3,000円 |
| 医療費(予防薬含む・年3〜5万円を按分) | 2,500〜4,200円 |
合計で月11,500〜20,200円程度です。トリミング費用がかかる分、短毛種より高めになります。
ほかの小型犬と比較検討している方は、トイプードルの性格・特徴・飼い方、ポメラニアンの性格・特徴・飼い方、チワワの性格・特徴・飼い方もあわせてご覧ください。
よくある質問
マルチーズは本当に性格が悪いのですか?
いいえ。JKCの犬種標準では「知的、快活、大胆」と定義されており、気質的な問題はありません。「性格が悪い」と言われるのは、来客への警戒吠えや要求吠えといった行動が目立つためです。いずれも社会化期のトレーニングと一貫したしつけで防げます。
マルチーズの涙やけは治りますか?
変色した被毛そのものは元に戻りません。伸びて生え替わるのを待つ必要があります。ただし新たな涙やけは防げます。1日2回コットンで涙を拭き取り、原因となる鼻涙管閉塞やアレルギーを動物病院で治療することが根本的な対策です。
マルチーズは抜け毛が少ないと聞きましたが本当ですか?
本当です。マルチーズはアンダーコートを持たないシングルコートのため、換毛期がなく抜け毛は少なめです。ただし毛が伸び続けるため、月1回程度のトリミングと毎日のブラッシングが必要です。抜け毛が少ない=手入れが楽、ではない点に注意してください。
マルチーズの散歩はどのくらい必要ですか?
1回20分を1日2回が目安です。運動量自体は多くありませんが、社会性を保つために外出は欠かせません。夏場は地面に近い体高(20〜25cm)ゆえに照り返しの影響を強く受けるため、朝6時前または日没後に行ってください。
マルチーズの適正体重は何kgですか?
JKCの犬種標準では牡牝ともに3.2kg以下、2.5kgを理想としています。ペットとして飼われる個体は3.5〜4kgになることもありますが、1か月で体重の10%以上増えた場合は給餌量の見直しが必要です。肋骨が指で軽く触れる状態が適正な体型の目安になります。
マルチーズは留守番できますか?
できますが、練習が必要です。5分→15分→30分→1時間と段階的に伸ばし、出かける前と帰宅直後に構わないことが重要です。日中12時間以上の留守番が常態化すると分離不安のリスクが高まるため、ペットシッターや預かりサービスの利用を検討してください。
マルチーズの寿命はどのくらいですか?
12〜15歳が平均です。長生きさせるうえで重要なのは、適正体重の維持、週3回以上の歯磨き、滑らない床材の使用の3点です。8歳以降は僧帽弁閉鎖不全症の早期発見のため、年1回の心臓の聴診を受けましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。
【参考】一般社団法人ジャパンケネルクラブ「世界の犬 マルチーズ(犬種標準)」/JKC 2025年犬種別犬籍登録頭数/獣医師監修「犬の涙やけの原因とは?」(PS保険・監修 三宅亜希獣医師)/獣医師監修「マルチーズの性格や飼い方のコツ」(第一アイペット・監修 鷺島祥子獣医師)
