結論から書きます。犬の秋の手作りごはんは、総カロリーの10〜20%までを手作りに置き換える「トッピング運用」から始めてください。完全手作りは栄養が不足します。2013年の研究では、市販レシピ200件のうち95%が必須栄養素のどれかで基準未達でした。

さつまいも、かぼちゃ、鮭、りんご、きのこ。秋は犬に使える旬の食材が一気に増える季節です。
一方で、秋は1年でもっとも体重が増えやすい時期でもあります。夏に落ちた食欲が戻り、それなのに雨が多くて散歩量は増えにくいからです。
この記事では、レシピの前に「量の出し方」を置きます。体重別のグラム数まで落とし込んだ早見表と、秋の旬食材5品のレシピ、そして「秋に絶対使ってはいけない旬の食材」までまとめました。
結論:手作りは「総カロリーの10〜20%」まで。それ以上は設計が必要
手作りごはんの話は、栄養設計の話から始めないと意味がありません。
完全手作りレシピの95%は栄養基準を満たしていない
Stockmanらが2013年にJAVMA(米国獣医師会雑誌)で報告した調査があります。書籍やウェブで公開されていた犬の完全手作り食レシピ200件を、NRC(米国学術研究会議)とAAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準に照らして分析したものです。
- 200件のうち95%が、必須栄養素の少なくとも1つで基準を下回った
- NRCの推奨をすべて満たしたのは5件(2.5%)だけで、その5件はすべて獣医師が作成したもの
- AAFCO基準を満たしたのは9件
- 不足が目立ったのは亜鉛、コリン、銅、EPA・DHA、カルシウム、ビタミンD、ビタミンE
これは「手作りが悪い」という話ではありません。犬に必要な栄養素は約40種類あり、それを家庭の目分量で毎日そろえるのは現実的でないという話です。
環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」でも、総合栄養食は「それと水だけで健康を維持できるように栄養バランスが調整されたフード」と定義されています。逆に言えば、総合栄養食を主食から外した瞬間に、その40種類を自分で保証する責任が飼い主に移ります。
だから「トッピング20%ルール」から始める
現実的な答えは、主食を総合栄養食のまま残し、その一部を手作りに置き換える方法です。
| 手作りの比率 (1日の総カロリー比) | 栄養面の評価 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 10%以内 | 誤差の範囲。栄養設計を崩さない | すべての飼い主の初期設定 |
| 10〜20% | 実務上の上限。必須栄養素は8割以上確保される | 食いつきを上げたい・水分を足したい |
| 20〜50% | 栄養素の希釈が無視できない。サプリ設計が必要 | 獣医師・ペット栄養管理士の指導下のみ |
| 50%超〜完全手作り | 95%が基準未達になる領域 | 獣医栄養学の専門家がレシピを組んだ場合のみ |
なぜ20%が上限なのか。総合栄養食を80%残せば、必須栄養素も約80%は供給されます。AAFCOの最小値はNRCの必要量より余裕をもって設定されているため、20%程度の希釈なら多くの栄養素で必要量を割りません。
ただしこれは「多くの栄養素で」です。もともとギリギリの設計のフードや、成長期・妊娠授乳期の犬では成り立ちません。子犬・妊娠授乳中・療法食中の犬は、トッピング自体を獣医師に確認してからにしてください。
なぜ「体重の2〜3%」で量を決めてはいけないのか
手作りごはんの解説記事では「1日の量は体重の2〜3%」という目安がよく使われます。10kgの犬なら200〜300gという計算です。
この目安だけでトッピングの量を決めるのは危険です。理由は食材によってカロリー密度が最大6倍違うからです。
| 食材(調理法) | 100gあたりのカロリー | 同じ30gのカロリー |
|---|---|---|
| さつまいも(皮なし・蒸し) | 約131kcal | 約39kcal |
| しろさけ(焼き) | 約160kcal | 約48kcal |
| 西洋かぼちゃ(ゆで) | 約80kcal | 約24kcal |
| りんご(皮なし・生) | 約53kcal | 約16kcal |
| まいたけ(生) | 約22kcal | 約6.6kcal |
数値は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より。
同じ30gでも、まいたけなら6.6kcal、焼き鮭なら48kcalです。約7倍の差があります。「グラムで決める」方式では、さつまいも中心の秋メニューは簡単にカロリーオーバーします。
もうひとつ。手作りごはんは水分が70〜80%を占めます。ドライフードの水分は約10%です。同じ重さでも中身の量がまったく違うため、フードの給与量の感覚をそのまま持ち込めません。
結論:トッピングの量はグラムではなくカロリーで決め、最後にグラムへ変換する。この順番だけ守れば計算ミスは起きません。
体重別・トッピングに使えるカロリーとグラム数(早見表)
ステップ1:1日の必要カロリーを出す
計算式は2段階です。
- 安静時エネルギー要求量(RER)= 70 ×(体重kg)の0.75乗
- 1日必要カロリー(DER)= RER × 係数(避妊去勢済みの成犬で1.6、未避妊の活動的な成犬で1.8、減量中は1.0)
体重5kgの避妊済み成犬なら、RERは70×3.34=約234kcal、DERは234×1.6=約375kcalです。より詳しい計算や年齢別の係数は犬の1日の食事量と回数|体重・年齢・運動量別の目安と計算方法で解説しています。
ステップ2:トッピングに使えるカロリーを出す
| 体重 | 1日必要カロリー (DER・避妊去勢済み成犬) | トッピング上限 10%(基本) | トッピング上限 20%(最大) |
|---|---|---|---|
| 3kg | 約255kcal | 約26kcal | 約51kcal |
| 5kg | 約375kcal | 約37kcal | 約75kcal |
| 8kg | 約533kcal | 約53kcal | 約107kcal |
| 10kg | 約630kcal | 約63kcal | 約126kcal |
| 15kg | 約854kcal | 約85kcal | 約171kcal |
| 20kg | 約1,059kcal | 約106kcal | 約212kcal |
| 30kg | 約1,436kcal | 約144kcal | 約287kcal |
ここで一度立ち止まってください。体重3kgの犬がトッピングに使えるのは、1日たった26kcalです。
これは蒸したさつまいも20g、つまり1cm厚の輪切り1枚程度です。SNSで見るような「器の半分が手作り」は、小型犬では成立しません。
ステップ3:カロリーをグラムに変換する(秋の食材別)
下の表は10%(基本ライン)の場合に、その食材だけをトッピングするときの上限グラム数です。
| 体重 | さつまいも (蒸し) | かぼちゃ (ゆで) | 焼き鮭 (皮・骨なし) | りんご (皮なし) |
|---|---|---|---|---|
| 3kg | 約20g | 約33g | 約16g | 約30g※ |
| 5kg | 約28g | 約46g | 約23g | 約50g※ |
| 8kg | 約40g | 約66g | 約33g | 約80g※ |
| 10kg | 約48g | 約79g | 約39g | 約100g※ |
| 15kg | 約65g | 約106g | 約53g | 約130g※ |
| 20kg | 約81g | 約133g | 約66g | 約160g※ |
| 30kg | 約110g | 約180g | 約90g | 約200g※ |
※りんごはカロリー換算だともっと多く食べられる計算になりますが、糖質と水分の多さから実務上はこの数値を上限としています(理由は次章)。
複数の食材を組み合わせる場合は、各食材のカロリーを足して上限内に収めます。体重5kgで「かぼちゃ20g(16kcal)+焼き鮭12g(19kcal)=35kcal」なら10%枠にちょうど収まります。
忘れてはいけない:トッピングを足したらフードを減らす
トッピング分は「追加」ではなく「置き換え」です。
フードのカロリーは袋に「〇〇kcal/100g」と書かれています。360kcal/100gのフードなら、37kcal分は約10gです。体重5kgの犬にトッピング37kcalを足すなら、フードを10g減らします。
ここを省略した「足すだけ運用」が、秋に体重が増える最大の原因です。おやつも同じ枠から引きます(犬のおやつおすすめの選び方|無添加・低カロリーの3基準と体重別の上限早見表)。
秋の旬食材レシピ5品(体重別分量つき)
ここからが本題です。すべて味付けなし・加熱ありが原則です。犬の味覚は人間の約5分の1で、塩や砂糖は必要ありません。
分量はすべて体重5kgの犬・10%枠(37kcal)を基準に書いています。体重が違う場合は前章の表の比率で増減させてください。
1. さつまいものマッシュ(便通・食いつき)
材料(5kg犬・1日分):さつまいも28g(皮をむいて蒸したもの)、ぬるま湯 小さじ2
- 皮を厚めにむき、1cm角に切って10分ほど水にさらす(アクを抜く)
- 蒸し器で15分、または耐熱容器にラップをして電子レンジ600Wで3〜4分
- 竹串がすっと通ったら、フォークでつぶす
- ぬるま湯を加えてなめらかに伸ばし、人肌まで冷ましてフードにのせる
ポイント:焼き芋ではなく蒸す・ゆでるを選びます。焼くと水分が飛んで同じ重さでもカロリーが上がり、甘みが濃くなって「フードを食べなくなる」原因にもなります。皮は食物繊維が硬く消化しにくいので必ずむきます。詳しくは犬にさつまいもを与えていい?体重別の適量とNGな与え方・注意点で解説しています。
2. かぼちゃと鶏ささみの水煮(低脂質・水分補給)
材料(5kg犬・1日分):西洋かぼちゃ25g(種とワタを取る)、鶏ささみ20g、水150ml
- かぼちゃは種とワタを完全に取り除き、1cm角に切る(皮は初回はむく)
- ささみは筋を取り、5mm角に切る
- 小鍋に水と両方を入れ、弱火で8分。ささみの中心まで白くなればOK
- 煮汁ごと器に取り、人肌まで冷ます
カロリー:かぼちゃ25g=20kcal、ささみ20g=約20kcal(生98kcal/100g)。合計40kcalで、5kg犬の10%枠をわずかに超えるため、フードを11g減らします。
ポイント:煮汁を捨てないのがコツです。水分摂取量が増え、秋以降に増える膀胱炎の予防にもつながります。かぼちゃの種は消化できないので必ず取り除きます(犬にかぼちゃは大丈夫?体重別の適量と皮・種・生食のリスク)。

3. 秋鮭のほぐし身(オメガ3脂肪酸・皮膚と関節)
材料(5kg犬・1日分):生鮭(銀毛・切り身)23g
- 塩をしていない生の切り身を用意する(塩鮭・スモークサーモンは不可)
- 皮を外し、フライパンで油を使わずに両面を焼く、または5分蒸す
- 指でほぐしながら骨を1本残らず取り除く。小骨も同様
- 人肌まで冷ましてフードに混ぜる
ポイント3つ
- 生食は禁止:サケ・マスには寄生虫(アニサキス、日本海裂頭条虫)のリスクがあります。中心まで加熱してください
- 皮は外す:皮つきは脂質が大きく上がります。高脂肪食の急な追加は膵炎の引き金になります
- 塩鮭は不可:塩分量が犬の許容量を大きく超えます
鮭のEPA・DHAは、Stockman 2013でも手作り食に不足しやすい栄養素として挙げられています。トッピングとして週2〜3回入れる価値のある食材です。
4. きのこのだし煮(低カロリー・かさ増し)
材料(5kg犬・1日分):まいたけまたはぶなしめじ10g、水100ml
- 石づき(軸の根元の硬い部分)を切り落とす
- 5mm以下のみじん切りにする(丸飲みすると消化できません)
- 水で10分煮て、完全に柔らかくする
- 煮汁ごと少量ずつフードに混ぜる
重要な注意:きのこはカロリーが低いため、カロリー換算だと5kg犬で168gまで食べられる計算になります。しかしこれは現実的な量ではありません。食物繊維が多すぎて下痢を起こします。
きのこは体重3kgで5g、10kgで15g、30kgで35g程度が実務上の上限です。そしてスーパーで売られている栽培きのこだけを使い、野生のきのこは絶対に使わないでください(犬が野生のきのこを食べた|中毒症状3タイプと受診の目安)。
5. りんごのすりおろし(おやつ枠・食欲が落ちた日)
材料(5kg犬・1日分):りんご30〜50g(皮と芯・種を除く)
- 皮をむき、芯と種を完全に取り除く
- すりおろす、または5mm角に切る
- そのまま、または冷凍せずに常温でフードに混ぜる
ポイント:りんごの種にはアミグダリンというシアン化合物が含まれるため、芯ごと与えるのは避けます。皮は消化しにくいのでむきます。食欲が落ちている日の「最初の一口」として有効ですが、糖質が多いので毎日の定番にはしません(犬にりんごを与えていい?体重別の適量と種・芯のリスク・与え方)。
カロリー以外の「第二のキャップ」がかかる食材
ここが多くのレシピ記事で抜けている部分です。カロリー上限は上限のひとつにすぎません。
| 食材 | 第二のキャップ | 実務上の上限(5kg犬・1日) | 超えると起きること |
|---|---|---|---|
| きのこ類 | 食物繊維 | 約8〜10g | 軟便・下痢・未消化便 |
| さつまいも | 食物繊維・糖質 | 約28g | ガス・便量増加・血糖上昇 |
| りんご・梨・柿 | 糖質・水分 | 約50g | 軟便・カロリー過多 |
| 鮭・青魚 | 脂質 | 約23g(皮なし) | 膵炎リスク・軟便 |
| 栗 | 糖質・渋皮の繊維 | 約10g(実のみ) | 便詰まり・カロリー過多 |
| かぼちゃ | 比較的ゆるい | 約46g | カリウム過多(腎疾患の犬) |
ルールは単純です。カロリー上限と第二のキャップの、低いほうを採用する。
腎疾患や心疾患でカリウム・リン制限がある犬、糖尿病の犬では、この表の数値はそのまま使えません。かかりつけの獣医師に食材名とグラム数を伝えて確認してください。
食材別の詳しい適量は、栗・柿・梨・バナナ・ヨーグルトの各記事で個別に解説しています。全体像は犬が食べていいもの一覧|野菜・果物・肉・魚を○△×で解説をご覧ください。
秋に犬へ使ってはいけない旬の食材6つ
秋の食卓に並ぶもののなかには、犬に中毒や物理的損傷を起こすものがあります。レシピを探している段階で知っておくべき内容です。
| 食材 | 何が危険か | 判定 |
|---|---|---|
| ぶどう・レーズン | 急性腎障害。原因物質は酒石酸と考えられ、危険量に個体差が大きく「少量なら安全」と言える量が存在しない | 絶対禁止 |
| 銀杏 | 4′-O-メチルピリドキシンがビタミンB6の作用を阻害し、中枢神経が異常興奮してけいれんを起こす。加熱しても消失しない | 絶対禁止 |
| 野生のきのこ | 肝腎型(アマニチン型)は6〜24時間無症状のあと肝不全へ進む。種類の同定は家庭では不可能 | 絶対禁止 |
| 柿の種・ヘタ | 種による腸炎・消化管閉塞。柿胃石(ディオスピロベゾアール)の報告もある | 実だけ可・種とヘタは禁止 |
| 栗のイガ・渋皮 | イガは口腔内損傷、渋皮は消化できず便詰まりの原因 | 実だけ可 |
| さんま・さばの骨 | 加熱後も硬く尖ったままで、食道・胃を傷つける | 身だけ可・骨は禁止 |
加えて、秋の散歩で拾い食いされやすいのが落ちた銀杏とどんぐり、野生のきのこです。手作りごはんを用意する家庭ほど「食べられるもの」への意識が高いぶん、屋外での線引きがあいまいになりがちです。
詳細は犬がぶどう・レーズンを食べた・犬が銀杏を食べた・犬が食べてはいけないもの完全一覧で確認してください。
作り置き・冷凍の期限と安全な解凍
犬の手作りごはんは塩も砂糖も保存料も入っていません。つまり人間の惣菜より傷みが早いという前提で扱います。
| 保存方法 | 期限の目安 | 条件 |
|---|---|---|
| 常温 | 不可 | 調理後2時間以内に食べ切るか冷却 |
| 冷蔵(4℃以下) | 翌日まで(24時間) | 粗熱を取ってから密閉。加熱してから与える |
| 冷凍(-18℃以下) | 2〜3週間 | 1回分ずつ小分け・平らにして急冷 |
| 食器に出したあと | 30分 | 食べ残しは廃棄。翌日に回さない |
やってはいけない4つ
- 室温での自然解凍:菌が増える温度帯(10〜60℃)に長く置かれます。冷蔵庫で解凍するか、密閉袋のまま湯せんにします
- 再冷凍:一度解凍したものを凍らせ直すのは禁止です。小分けを徹底します
- 熱いまま冷凍庫へ:庫内温度が上がり、ほかの食品にも影響します。粗熱を取ってから入れます
- 熱いまま与える:口腔内のやけどの原因になります。人肌(38℃前後)まで冷まします
気温が下がる秋は「もう傷まないだろう」と油断が出やすい時期です。実際には10月でも日中の室温は20℃を超えます。犬の食中毒に注意|症状・受診目安とフード保存ルールもあわせてご確認ください。

手作りトッピングに切り替える4ステップと便の見方
いきなり10%を入れると、多くの犬が軟便になります。1週間かけて上げていきます。
ステップ1(1〜2日目):1食材・小さじ1から
最初は1種類だけを小さじ1(約5g)。かぼちゃかさつまいもが無難です。複数食材を同時に入れると、不調が出たときに原因が特定できません。
ステップ2(3〜4日目):目標量の半分まで
便が普通なら、10%枠の半分(5kg犬なら約18kcal)まで増やします。ここでフードを同じカロリー分減らし始めます。
ステップ3(5〜7日目):目標量(10%)へ
10%枠まで上げます。フードの減量も同じだけ行います。
ステップ4(2週目以降):食材を1つずつ増やす
新しい食材は3日おきに1種類ずつ。増やすのは「3日連続で便が普通だったら」、戻すのは「異変が出たその日に即座」です。この非対称なルールが失敗を防ぎます。
便で判断する:3段階の見方
| 便の状態 | 判断 | 行動 |
|---|---|---|
| つかめる硬さ・拾ったあと跡が残らない | 適正 | 3日続いたら次のステップへ |
| つかめるが跡が残る・やや柔らかい | 境界 | 量を据え置きにして2日観察 |
| つかめない・水様・未消化物が見える | 過剰 | その日にトッピングを中止し前段階へ戻す |
| 血が混じる・黒いタール状・1日3回以上の下痢 | 異常 | 当日中に受診 |
フードそのものを切り替える場合の手順は犬のドッグフードの切り替え方|移行手順と下痢を防ぐコツ、便の異常については犬の下痢の原因と対処法|血便・水様便の見分け方と受診の目安で詳しく解説しています。
受診の目安:手作りごはんで注意すべきサイン
時間外でもすぐに受診すべき症状
- 繰り返す嘔吐に加えて、前足を伸ばして腰を上げる姿勢(祈りのポーズ)をとる → 膵炎の疑い
- お腹を触ると痛がる・ぐったりして動かない
- けいれん・ふらつき・意識がはっきりしない
- 歯ぐきが白い、または黄色い
- 何度も吐こうとするが何も出ない(お腹が張っている)
脂肪の多い食材を急に足した直後の嘔吐は、膵炎を疑うべきサインです。秋は鮭・さんまなど脂の多い魚が出回るため、この時期特有のリスクがあります(犬の膵炎の症状|嘔吐と「祈りのポーズ」の見分け方・受診の目安)。
当日中に受診すべき症状
- 下痢が1日3回以上、または血が混じる
- 骨や種、芯を飲み込んだ可能性がある
- 嘔吐が半日で3回以上続く
- 顔や体に急な腫れ・強いかゆみ(食物アレルギーの急性反応)
数日以内に相談すべき症状
- 軟便が3日以上続く(トッピングを中止しても改善しない)
- 1か月で体重が5%以上増えた、または減った
- 毛づやが落ちた・フケが増えた(栄養の偏りのサイン)
- フードを食べなくなり、トッピングだけ選んで食べる
最後の項目は見落とされがちですが重要です。トッピングだけ食べてフードを残すようになったら、栄養設計が崩れ始めています。いったんトッピングを中止し、量を半分に戻してやり直してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 完全手作りごはんに切り替えたいのですが、可能ですか?
可能ですが、獣医師またはペット栄養管理士にレシピを組んでもらうことが前提です。Stockman 2013では公開レシピ200件のうち95%が必須栄養素のどれかで基準未達で、完全に適正だった5件はすべて獣医師が作成したものでした。市販レシピをそのまま長期の主食にするのは避けてください。サプリメント(カルシウム、亜鉛、ビタミンD・E、オメガ3など)の併用がほぼ必須になります。
Q2. 「1週間単位で栄養が整っていれば大丈夫」という説明を見ました
ビタミンB群など体内に蓄積しにくい栄養素もあり、日ごとの多少のばらつきは許容されます。ただしこれは「1週間の合計が基準を満たしている」ことが条件です。毎日同じレシピを1週間続けても、そのレシピに亜鉛やビタミンDが足りていなければ1週間分の不足になります。ばらつきを許すルールと、基準未達を許すルールは別物です。
Q3. 焼き芋をそのまま与えてもいいですか?
市販の焼き芋は、皮が付いていて塩やバターを使っていなければ少量なら与えられます。ただし焼くと水分が飛ぶため、蒸したものより同じ重さでカロリーが高くなります。皮は消化しにくいので外してください。屋台の焼き芋は塩を振っている場合があるため確認が必要です。日常の定番にするなら、家で蒸したものをおすすめします。
Q4. 人間の食事から取り分けてもいいですか?
味付けの前に取り分けるなら可能で、これが手作りを続けるいちばん現実的な方法です。条件は3つ。(1)玉ねぎ・長ねぎ・にんにく・にらが煮汁に入っていないこと、(2)塩・しょうゆ・だしの素を入れる前であること、(3)油を使っていないこと。だし汁も要注意です。市販のだしパックや顆粒だしには塩分が含まれます。同じ鍋で玉ねぎを煮た煮汁は、玉ねぎを取り除いても使えません。
Q5. 秋は食欲が戻って食べすぎます。どう抑えればいいですか?
カロリーを増やさずに「かさ」を増やすのが基本です。有効なのはきのこのみじん切りとかぼちゃです。まいたけは100gで約22kcalなので、10g足しても2.2kcalしか増えません。ただし食物繊維の上限(5kg犬で8〜10g程度)は守ってください。加えて、体重を週1回・同じ時間に測る習慣をつけると、増加に早く気づけます。夏の疲れが残っている場合は犬の秋バテ|症状と受診ライン・夏の疲れを戻す5つの手もあわせてご覧ください。
Q6. シニア犬の手作りトッピングで気をつけることは?
3点あります。(1)腎機能が落ちている場合、かぼちゃ・さつまいものカリウムやリンが負担になるため、血液検査の結果を獣医師に確認する。(2)咀嚼力・嚥下力が落ちるので、通常よりさらに細かく刻み、とろみをつける。(3)必要カロリーが下がるため、トッピング枠も小さくなる(DERの係数が1.4程度に下がる犬もいます)。詳しくは老犬のごはん完全ガイド|シニア犬に必要な栄養と切り替え時期の目安で解説しています。
まとめ:レシピより先に「量」を決める
- 手作りは総カロリーの10%から始め、20%を上限にする。それ以上は獣医師・ペット栄養管理士の設計が必要
- 完全手作りレシピの95%は必須栄養素のどれかで基準未達(Stockman 2013, JAVMA)
- 量はグラムではなくカロリーで決める。食材によってカロリー密度は最大7倍違う
- 体重3kgの犬のトッピング上限は1日26kcal=蒸したさつまいも20g。想像よりずっと少ない
- トッピングを足したら同じカロリー分フードを減らす。足すだけ運用が秋の体重増加の原因
- カロリー上限と「第二のキャップ」(食物繊維・糖質・脂質)の低いほうを採用する
- ぶどう・銀杏・野生のきのこ・柿の種は絶対禁止。栗のイガ・渋皮、魚の骨も除く
- 冷蔵は翌日まで、冷凍は2〜3週間。室温での自然解凍と再冷凍は禁止
- 増やすのは「3日連続で便が普通なら」、戻すのは「異変が出たその日に即座」
- 脂の多い魚を急に足した直後の嘔吐+祈りのポーズは、膵炎を疑って時間外でも受診
手作りごはんの目的は、栄養を完璧にすることではありません。水分を足し、食いつきを上げ、旬の楽しみを共有することです。それなら10%で十分に達成できます。
基本のレシピと調理のコツは犬の手作りごはん簡単レシピ|食いつきが変わる基本と注意点、主食のフード選びはドッグフードの選び方|原材料・無添加・グレインフリーの正しい見方もあわせてご覧ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

