ラブラドールレトリバーの性格・特徴・飼い方|太りやすい遺伝と股関節の守り方

ラブラドールレトリバーの成犬

ラブラドールレトリバーの性格は「陽気・人好き・学習意欲が高い」の三拍子がそろい、大型犬のなかでも扱いやすい部類です。ただし飼い方の核心は性格ではなく体重管理にあります。この犬種の約4分の1は食欲を抑えにくい遺伝子変異を持つと報告されており、太らせると股関節への負担が跳ね上がるからです。

実際、生涯にわたり給餌量を25%制限したラブラドール48頭の追跡研究では、制限群の寿命中央値が13.0年、自由給餌群が11.2年と、1.8年もの差がつきました(Kealy et al., JAVMA 2002)。「食い意地」はしつけで直すものではなく、管理で防ぐものです。

この記事では、ラブラドールレトリバーの性格・特徴から、遺伝的に太りやすい理由、体重別の具体的なカロリー数値、成長期に避けるべき運動、秋の換毛期のケアまでを、一次情報の数値つきで解説します。

ラブラドールレトリバーの成犬
ラブラドールは「穏やかで飼いやすい」の一言では語りきれない犬種です
目次

結論:ラブラドールは「太りやすい遺伝的背景を持つ大型犬」として飼う

ラブラドールレトリバーを迎えるうえで、押さえるべき優先順位は次のとおりです。

ラブラドール飼育の優先順位トップ3

  1. 体重管理:月1回の体重測定とBCS評価を習慣にする。理想体重の+15%を超えさせない
  2. 関節の保護:骨端線が閉じる生後12〜18か月まで、反復ジャンプと硬い路面での長距離走を避ける
  3. 頭を使う運動:散歩だけでは満たされない。1日60分以上+作業性のある遊びを組み合わせる

性格の良さは、この3つを実行するための追い風になります。指示が通りやすく、フードへの執着が強いためトレーニングの報酬設計がしやすいからです。逆に言えば、報酬に使うおやつのカロリーまで計算に入れないと、しつけが肥満の原因になります。

ラブラドールレトリバーの基本情報

項目 内容
原産国 イギリス(起源はカナダ・ニューファンドランド島の水猟犬)
体高 オス 約56〜57cm/メス 約54〜56cm
体重 オス 約29〜36kg/メス 約25〜32kg
被毛 短毛のダブルコート(撥水性あり)
毛色 ブラック・イエロー・チョコレート
平均寿命 約10〜12年
抜け毛 非常に多い(春・秋の換毛期は特に)
運動量 1日合計60分以上(成犬)
要注意の疾患 肥満、股関節・肘関節形成不全、外耳炎、進行性網膜萎縮症、運動誘発性虚脱

分類上は「中型犬」とされることもありますが、成犬時の体重は30kg前後です。飼育設備・フード代・医療費はすべて大型犬の基準で考えてください。

ラブラドールレトリバーの性格|5つの特徴

1. 人が好きすぎて番犬にはならない

ラブラドールは見知らぬ人にも友好的に接します。攻撃性の低さは大きな長所ですが、裏を返せば警戒吠えをしません。防犯目的での飼育には向いていません。

また「人が好き」は飛びつきという形で表れます。体重30kgの犬が飛びつけば、高齢者や子どもは簡単に転倒します。子犬のうちから抑えるべき筆頭の行動です。犬の飛びつきをやめさせる方法を、体が小さいうちに実践してください。

2. 食への執着が非常に強い

ラブラドールは「出されたものは全部食べる」犬種として知られます。満腹のサインが出にくく、食器を空にしてもまだ探し回る個体が珍しくありません。

この行動は性格ではなく遺伝が関与している可能性が高く、後述のPOMC遺伝子の項で詳しく説明します。

3. 物を口にくわえる習性がある

水鳥を傷つけずに回収する「レトリーブ(retrieve=回収)」が本来の仕事です。そのため、口に物をくわえて運ぶ行動が本能に組み込まれています。

スリッパ、靴下、タオル、リモコンなど、家庭内の物をくわえて歩きます。これ自体は正常な行動ですが、飲み込めば誤飲事故になります。犬の誤飲・誤食の対処法を事前に確認し、床置きの物を減らす環境整備が必須です。

4. 成熟が遅く、2歳過ぎまで「子ども」

大型犬は精神的な成熟が遅く、ラブラドールは体が成犬サイズになったあとも1年近く子犬のような落ち着きのなさが続きます。生後10か月で35kgの「大きな子犬」が家にいる状態です。

「落ち着かない」と焦る必要はありません。ただし、体が大きくなってからの制御は困難なので、しつけは体重が10kg前後の時期に済ませておくのが鉄則です。

5. 学習能力が高く、ポジティブな方法がよく効く

盲導犬・介助犬・災害救助犬に採用され続けている理由は、この学習能力にあります。叱責よりも報酬で伸びるタイプです。

特に呼び戻し「おいで」は、30kgの犬をコントロールする生命線になります。散歩中に興奮して走り出したとき、止められるかどうかが安全を分けます。

POMC遺伝子変異|なぜラブラドールは太りやすいのか

フードボウルから食事をする犬
「全部食べる」は性格ではなく遺伝的背景が関与しています

ケンブリッジ大学のRaffanらが2016年に学術誌 Cell Metabolism に発表した研究で、ラブラドールの肥満に関わる具体的な遺伝子変異が特定されました。

Raffan et al., Cell Metabolism (2016) の主な報告

  • POMC遺伝子に14塩基対の欠失が見つかった
  • 米英のペットのラブラドール411頭を調べたところ、23%(約4頭に1頭)がこの欠失を保有
  • この欠失はβ-MSH・β-エンドルフィンという満腹感や食欲の調節に関わる物質のコード配列を壊す
  • 欠失を1本持つごとに体重が0.33標準偏差ぶん重くなり、体脂肪率と「食べ物への執着の強さ」が増していた
  • 盲導犬・介助犬として訓練されているラブラドールでは、この欠失の保有率がさらに高い傾向があった

この研究から飼い主が読み取るべきこと

ポイントは3つあります。

第一に、食い意地はしつけで消せません。満腹シグナルの伝達そのものに変異が関与している以上、「我慢を覚えさせる」というアプローチは的外れです。食べ物を見せない・置かない・量を測るという環境管理が唯一の対策になります。

第二に、「かわいそう」という感覚は当てになりません。適正量を与えても、ラブラドールは物足りなそうな顔をします。その表情に反応して追加すると、確実に太ります。判断材料は犬の表情ではなく、体重計とBCSの数字です。

第三に、盲導犬・介助犬として優秀な資質と表裏一体です。食べ物への強いモチベーションは、訓練の報酬が効きやすいという長所でもあります。欠点ではなく「特性」として、管理の対象にしてください。

なお、この欠失を持たない個体も当然います。「うちの子は変異があるから」と決めつける必要はなく、どちらであっても管理方法は同じです。

体重管理の実務|BCSと月1回の測定

ラブラドールの健康管理は、ほぼすべてが体重管理に集約されます。具体的な手順を示します。

ステップ1:BCS(ボディコンディションスコア)で今の体型を判定する

WSAVA(世界小動物獣医師会)が採用する9段階のBCSでは、4〜5が理想とされます。BCSが1段階上がるごとに、理想体重より約10〜15%ずつ重くなっている計算です。

BCS 状態 理想体重比 理想30kgの犬の実体重
4〜5 理想。肋骨が薄い脂肪の下に触れ、上から見て腰にくびれがある ±0% 30.0kg
6 やや肥満。肋骨は触れるが脂肪に覆われ、くびれが浅い +10〜15% 33.0〜34.5kg
7 肥満。肋骨を触るのに力が要る。腰のくびれがほぼ消える +20〜30% 36.0〜39.0kg
8 重度肥満。肋骨が触れない。腰・尾の付け根に脂肪の沈着 +30〜45% 39.0〜43.5kg
9 極度の肥満。胸部・背部・四肢にも脂肪が広がる +40〜60% 42.0〜48.0kg

判定の手順は簡単です。(1) 両手を犬の胸の両側に当て、手のひら全体で軽く押して肋骨が数えられるか。(2) 真上から見て、肋骨の後ろに腰のくびれがあるか。(3) 横から見て、腹部が後ろに向かって持ち上がっているか。この3点で判定します。

肋骨を探すのに指で押し込む必要があればBCS7以上、つまり理想体重より20%以上重い状態です。

ステップ2:月1回、同じ日に体重を測る

30kgの犬にとって1kgは体重の3.3%です。人間で言えば60kgの人が2kg増えたのと同じで、見た目ではまず気づけません。だからこそ数字が必要です。

家庭での測り方は「飼い主が抱いて体重計に乗り、飼い主だけの体重を引く」方法が確実です。動物病院の待合室にある大型の体重計を借りるのもよいでしょう。記録はスマートフォンのメモで十分です。

行動を起こすライン:理想体重の+5%(30kgなら31.5kg)を超えたら、その月のうちにフード量を見直します。+15%(34.5kg)を超えてから戻すのは、犬にとってはるかにつらい作業になります。

ステップ3:カロリーを計算して与える

「袋に書いてある量」はあくまで幅のある目安です。実際には、次の式で必要量を計算するほうが精度が上がります。

RER(安静時エネルギー要求量)= 70 ×(理想体重kg)0.75
1日の必要カロリー = RER × 係数(避妊去勢済みの成犬で1.6、減量中は1.0)

理想体重 RER 維持期の目安(×1.6) 減量期の目安(×1.0)
25kg 約783kcal 約1,250kcal 約780kcal
28kg 約852kcal 約1,360kcal 約850kcal
30kg 約897kcal 約1,435kcal 約900kcal
33kg 約964kcal 約1,540kcal 約960kcal
36kg 約1,029kcal 約1,645kcal 約1,030kcal

※係数は活動量で変わります。運動量の多い個体は1.8前後、室内中心なら1.4前後です。実際の体重変化を見ながら調整してください。詳しい考え方は犬の1日の食事量と回数で解説しています。

おやつは1日の総カロリーの10%以内に収め、その分フードを減らします。これを守らないと、どれだけフードを計量しても意味がありません。低カロリーのおやつの選び方は犬のおやつおすすめの選び方を参照してください。

減量のペースは週0.5〜1%

急激な減量は筋肉量を落とします。安全なペースは体重の週0.5〜1%(30kgなら週150〜300g)です。34.5kgから30kgへ4.5kg落とすなら、15〜30週かかる計算になります。焦らず進めてください。

減量用フードへの切り替えは、消化器の負担を避けるため1週間以上かけて行います。手順は犬のドッグフードの切り替え方を参考にしてください。急な変更は下痢の原因になります。

体重管理が寿命を変える|25%制限で1.8年の差

体重管理の重要性を示す、犬の栄養学で最も有名な研究があります。Kealyらが2002年にJAVMA(米国獣医師会誌)で報告した、ラブラドール48頭の生涯追跡試験です。

Kealy et al., JAVMA (2002) の主な報告

  • ラブラドール48頭を性別・体重でペアにし、生後8週から生涯にわたって追跡
  • 一方は自由に食べさせ、もう一方にはその75%(25%制限)を与えた
  • 寿命の中央値は制限群13.0年/自由給餌群11.2年。差は1.8年
  • 加齢に伴う疾患、とりわけ変形性関節症の発症が遅れた

さらに同グループの追跡では、5歳時点で自由給餌群のほうが股関節の変形性関節症の頻度が高く、程度も重いことが確認されています。8歳時点では、複数関節に及ぶ関節症が自由給餌群に有意に多く見られました。

この試験の「25%制限」は自由給餌との比較であり、適正量からさらに25%減らすという意味ではありません。読み取るべき本質は、ラブラドールを食べたいだけ食べさせることが、関節寿命と生命の寿命の両方を削るという事実です。

ラブラドールがかかりやすい病気

股関節形成不全・肘関節形成不全

股関節形成不全は、股関節のはまり方がゆるく、成長とともに関節が変形していく疾患です。遺伝的素因に加え、成長期の過剰な体重・過剰な栄養・過度な運動が発症と進行に関わります。

米国のOFA(Orthopedic Foundation for Animals)に提出されたラブラドールのレントゲン評価では、2013年までの集計で約88.3%が正常と判定され、評価のうち excellent が19.4%、good が59.8%を占めていました。裏を返せば、提出された個体の1割強に異常所見があったことになります。

ただしこの数値はブリーダーが自主的に提出した個体のデータであり、集団全体の発生率とは異なります。良好な結果ほど提出されやすい偏りがあるため、実際の発生率はこれより高いと考えるのが妥当です。

家庭で気づけるサイン

  • お座りのとき、後ろ足を横に投げ出す(お姉さん座り)
  • 走るときに両後ろ足を揃えて跳ぶ(バニーホッピング)
  • 立ち上がるのを嫌がる、階段を避ける
  • 散歩の途中で座り込む、後ろ足の筋肉が落ちてくる

これらが続く場合は整形外科の診察を受けてください。犬が足を引きずる原因で、前足・後ろ足別の見分け方を解説しています。なお後肢のふらつきは椎間板ヘルニアでも起こるため、自己判断は避けてください。

運動誘発性虚脱(EIC)

ラブラドールに特徴的な遺伝性疾患です。DNM1遺伝子の変異によるもので、5〜15分程度の激しい興奮を伴う運動のあとに、後肢から脱力して立てなくなる発作が起こります。多くは20分ほどで自然に回復しますが、重症例では死亡例も報告されています。

米国の調査では、ラブラドールにおける変異の保因率(1本だけ持つ個体)は系統により17.9〜38.0%、発症リスクの高いホモ接合体(2本持つ個体)は1.8〜13.6%でした。ホモ接合体のうち83.6%が4歳までに虚脱を経験していたと報告されています。

遺伝子検査で判定できます。若齢のうちにボール遊びやドッグランで繰り返し倒れるようなら、獣医師にEICの可能性を相談してください。熱中症と見分けがつきにくい点にも注意が必要です(犬の熱中症について)。

外耳炎

垂れ耳で耳道内が蒸れやすく、さらに水遊びを好む犬種のため、外耳炎は最も遭遇しやすいトラブルです。

予防の要は「水遊び・シャンプーのあとに耳を乾かす」の一点に尽きます。具体的な手順は犬の耳に水が入ったらを参照してください。耳をかく、頭を振る、においが強くなるといった変化が出たら犬の外耳炎の初期症状を確認し、早めに受診します。

進行性網膜萎縮症(PRA)

網膜が徐々に変性し、失明に至る遺伝性の眼疾患です。ラブラドールではprcd型が知られ、遺伝子検査で保因の有無を判定できます。

最初のサインは暗い場所での見えにくさ(夜盲)です。夜の散歩で物にぶつかる、暗い部屋に入りたがらないといった変化が入口になります。白内障と混同されやすいため、眼科診療に対応した動物病院での検査が確実です。

胃捻転(GDV)

胸の深い大型犬に起こりやすく、発症すると数時間で命に関わります。食後すぐの激しい運動、早食い、一度の大量給餌がリスク要因です。1日の量を2回以上に分ける、食後1時間は安静にする、といった対策で確率を下げられます。

肥満が引き金になる疾患群

肥満は単独の病気ではなく、他の疾患の増幅装置です。関節への荷重増加のほか、糖尿病、心臓への負担、麻酔リスクの上昇、前十字靭帯断裂の誘因になります。ラブラドールでは前十字靭帯断裂も少なくない疾患です。

必要な運動量と、成長期にやってはいけない運動

草地を走るラブラドールレトリバー
運動は「量」だけでなく「路面」と「動きの種類」が関節を左右します

成犬の運動量:1日60分以上+頭を使う時間

成犬のラブラドールには、1日2回・合計60分以上の運動が目安とされます。ただし、同じ道をだらだら歩く60分では満たされません。

おすすめは、散歩のうち10分をトレーニングに充てる方法です。「おいで」「待て」「持ってこい」を織り交ぜるだけで、消費される精神的エネルギーが大きく変わります。レトリーブ本能を使う持ってこい遊びは、この犬種にとって最も満足度の高い運動です。

成長期(生後12〜18か月まで)の運動制限

ラブラドールレトリバーの子犬
骨端線が閉じるまで、関節に衝撃を与える運動は避けます

子犬の骨の端には「骨端線(成長板)」という軟骨の層があり、ここで骨が伸びます。大型犬ではおおむね生後12〜18か月で閉鎖します。閉じる前の骨端線は衝撃に弱く、ここを傷めると成長の左右差や関節の変形につながります。

ラブラドールは体力があるように見えるため、この時期に運動をさせすぎる飼い主が多くいます。飼い方記事でほとんど触れられない一方、関節疾患の多い犬種では決定的に重要なポイントです。

避けるべき運動 理由 代わりにやること
フリスビーの空中キャッチ 着地時にねじれと衝撃が集中する 地面を転がしたボールを追わせる
反復するジャンプ(アジリティ等) 骨端線への繰り返し衝撃 平地での「持ってこい」
アスファルトでの長距離ジョギング 硬い路面からの反発が関節に蓄積 土・芝の上での自由運動
階段の上り下りの反復 後肢・肘への荷重が増える スロープの利用、抱いて移動
自転車に並走させる 速度と距離を犬が自分で調整できない 犬のペースに合わせた散歩

この時期に最も適しているのは水泳です。浮力で関節への荷重がほぼゼロになり、水好きな犬種の本能にも合います。

室内の床は必ず滑り止めを

フローリングで足を滑らせる動作は、関節にとって毎日の小さな事故です。体重30kgの犬では負荷がそのぶん大きくなります。よく通る動線と、着地点になるソファ前・玄関には、滑り止めマットやカーペットを敷いてください。ソファやベッドへの飛び乗り・飛び降りも、スロープを置いて減らします。

秋の換毛期|ダブルコートの抜け毛対策

ラブラドールは短毛ですが、下毛(アンダーコート)が密に生えたダブルコートです。「短毛=手入れが楽」ではありません。春と秋の換毛期には、驚くほどの量が抜けます。

ブラッシングの頻度と道具

時期 頻度 主に使う道具
通常期 週2〜3回・各5分 ラバーブラシ(マッサージ効果も兼ねる)
換毛期(春・秋) 毎日・5〜10分 ラバーブラシ+アンダーコート用の抜け毛取り

短毛種は毛が絡まないため、スリッカーブラシよりラバーブラシのほうが下毛をかき出しやすい傾向があります。道具の使い分けは犬用ブラシの種類で詳しく解説しています。基本の手順は犬のブラッシングの方法、換毛期の時期そのものについては犬の抜け毛と換毛期を参照してください。

抜け毛を放置すると、下毛が皮膚に張りついて通気性が落ち、湿疹やフケの原因になります。換毛期のブラッシングは美容ではなく皮膚の衛生管理です。

大型犬の「乾かす」は想像以上に大変

30kgのダブルコートを乾かす作業は、小型犬とは別次元の重労働です。生乾きのまま放置すると皮膚トラブルと体温低下を招くため、拭き取りの段階でどれだけ水分を減らせるかが勝負になります。

大判で吸水性の高いタオルを2〜3枚用意し、押し当てて吸わせる方式で水分を取ってからドライヤーに移ります。タオルの選び方は犬用タオルの選び方、乾かし方のコツは犬のドライヤーの乾かし方にまとめています。

水遊びやシャンプーのあとは、耳の中を乾かす工程を必ずセットにしてください。これを省くと外耳炎を繰り返します。

ゴールデンレトリバーとの違い|どちらが向いているか

「レトリーバー2種」はよく比較されますが、日常の手間のかかり方が異なります。

比較項目 ラブラドールレトリバー ゴールデンレトリバー
被毛 短毛ダブルコート 長毛ダブルコート(飾り毛あり)
ブラッシングの手間 短時間で済むが抜け毛の量は多い 毛玉予防が必要でトリミング前提
乾かす手間 比較的早い かなり時間がかかる
性格の傾向 活発・陽気・やや興奮しやすい 穏やか・繊細・人の感情に敏感
成熟の速さ やや遅い(2歳前後) やや遅い(2〜3歳)
主な注意点 肥満と関節、食への執着 被毛ケア、暑さ、腫瘍性疾患

ラブラドールが向いている人:被毛の手入れに時間をかけたくないが、掃除の手間は許容できる人。アウトドアや水遊びを一緒に楽しみたい人。フード量の計量を習慣化できる人。

ゴールデンレトリバーが向いている人:落ち着いた雰囲気を重視する人。ブラッシングやトリミングの時間と費用を確保できる人。詳しくはゴールデンレトリバーの飼い方で、運動量・スペース・暑さ対策の観点から解説しています。

なお、どちらも大型犬である点、関節に配慮が必要な点、留守番が苦手な点は共通です。犬の留守番のしつけは、どちらを迎える場合も子犬期から始めてください。

迎える前に確認する5項目

  1. 親犬の股関節・肘関節・眼の検査結果:ブリーダーから迎えるなら、両親の股関節評価(OFAまたは日本国内の同等の評価)、PRA・EICの遺伝子検査結果を見せてもらえるか確認します。見せられない場合は理由を尋ねてください。
  2. 室内の床環境:フローリングのままなら、滑り止めの敷設費用を初期費用に含めます。
  3. 生涯費用:フード代は体重に比例します。大型犬では年間のフード・ケア用品・医療費を合わせて20万円台後半になるケースが一般的です。シニア期の医療費はさらに増えます。
  4. 毎日60分の運動時間を確保できるか:雨の日も、真夏も、繁忙期も必要です。家族で分担できるかを事前に決めます。
  5. 抜け毛を許容できるか:黒・チョコレート系は明るい床で、イエロー系は暗い服で目立ちます。換毛期のロボット掃除機は必須と考えてよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. ラブラドールは初心者でも飼えますか?

性格面では飼いやすい犬種です。攻撃性が低く、指示も通りやすいため、しつけで苦労するケースは多くありません。ただし「体重管理を数字で行う」「成長期の運動を制限する」という2点は、初心者ほど省略しがちです。この2つを実行できるなら、初心者でも十分に飼えます。逆に、犬の表情を見てフードを追加してしまう人には向きません。

Q2. 毛色によって性格は違いますか?

ブラック・イエロー・チョコレートで性格に本質的な差があるという確立した根拠はありません。「チョコレートは落ち着きがない」といった説は聞かれますが、飼い方や血統による個体差のほうがはるかに大きいと考えるのが妥当です。毛色は好みで選んで構いません。

Q3. フードを与えてもすぐに食器を舐め続けます。量が足りないのでは?

足りているかどうかは、犬の様子ではなく体重の推移で判断します。月1回の測定で体重が横ばい、BCSが4〜5を維持できているなら足りています。物足りなそうにするのはこの犬種の特性です。どうしても気になる場合は、同じカロリーのままフードをふやかして量を増やす、1日2回を3回に分ける、知育玩具に入れて食べる時間を延ばす、といった「満足感」側の工夫で対応してください。

Q4. 子犬のうちはどのくらい散歩させればいいですか?

「月齢×5分を1日2回」という慣用的な目安が広く使われていますが、これは経験則であり、明確な研究の裏づけがある数値ではありません。実務的には、時間の長さよりも路面(土や芝を選ぶ)と動きの種類(ジャンプや急旋回を避ける)を優先してください。散歩から帰ったあとに息が長く上がったまま、あるいは翌日に足をかばう様子があれば、その量は多すぎます。

Q5. 何歳から関節のケアを始めるべきですか?

股関節形成不全は成長期に進行が始まる疾患です。したがって「ケア」は子犬を迎えた日から始まります。具体的には、適正体重の維持、滑らない床、成長期の運動制限の3点です。サプリメントの投与よりも、この3点のほうが優先度は高くなります。関節痛の兆候が出てからの対応は後追いになるため、症状が出る前から環境を整えておいてください。

Q6. 受診の目安を教えてください

次のいずれかに当てはまる場合は、早めに動物病院を受診してください。

  • 歩き方の異常(お姉さん座り、バニーホッピング、跛行)が3日以上続く
  • 立ち上がるのを嫌がる、階段や車の乗り降りを避けるようになった
  • 運動後に後肢から崩れて立てなくなる発作が1回でもあった(EICや熱中症の可能性)
  • 耳をかく・頭を振る・耳のにおいが強い状態が数日続く
  • 暗い場所で物にぶつかる、夜の散歩を嫌がるようになった
  • お腹が張って苦しそう、吐こうとして何も出ない(胃捻転の疑い。即時受診)
  • 月1回の測定で、理想体重の+15%を超えた

まとめ

ラブラドールレトリバーの性格は、陽気で人好き、学習意欲が高く、家庭犬として非常に優れています。しかし「飼いやすい」という評判に乗って管理を緩めると、肥満から関節疾患へという連鎖に入ります。

  • ラブラドールの約23%はPOMC遺伝子の欠失を持ち、食欲を抑えにくい(Raffan et al., 2016)
  • 食い意地はしつけでは直らない。計量と環境管理で防ぐ
  • 月1回の体重測定とBCS判定を習慣化し、理想体重+5%で手を打つ
  • 生涯25%の給餌制限で寿命中央値が1.8年延び、関節症の発症が遅れた(Kealy et al., 2002)
  • 骨端線が閉じる生後12〜18か月まで、ジャンプ・硬い路面での長距離走を避ける
  • 垂れ耳+水好きの組み合わせで外耳炎が起きやすい。水遊び後は耳を乾かす

体重計とメジャーな道具だけで、この犬種の健康リスクの大半は管理できます。今日から月1回の測定を始めてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に異変を感じた場合は、速やかにかかりつけの獣医師にご相談ください。

参考・一次情報

  • Raffan E, et al. A Deletion in the Canine POMC Gene Is Associated with Weight and Appetite in Obesity-Prone Labrador Retriever Dogs. Cell Metabolism. 2016;23(5):893-900.
  • Kealy RD, et al. Effects of diet restriction on life span and age-related changes in dogs. JAVMA. 2002;220(9):1315-1320.
  • Kealy RD, et al. Five-year longitudinal study on limited food consumption and development of osteoarthritis in coxofemoral joints of dogs. JAVMA. 1997./Evaluation of the effect of limited food consumption on radiographic evidence of osteoarthritis in dogs. JAVMA. 2000;217(11):1678-1680.
  • Minor KM, et al. Presence and impact of the exercise-induced collapse associated DNM1 mutation in Labrador retrievers and other breeds. The Veterinary Journal. 2011.
  • Orthopedic Foundation for Animals (OFA) 犬種別股関節評価統計
  • WSAVA 栄養評価ガイドライン(ボディコンディションスコア9段階)
  • Merck Veterinary Manual: Hip Dysplasia in Dogs / Progressive Retinal Atrophy

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